スケールアウト (スケールアウト) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
スケールアウト (スケールアウト) の読み方
日本語表記
スケールアウト (スケールアウト)
英語表記
scale-out (スケールアウト)
スケールアウト (スケールアウト) の意味や用語解説
スケールアウトとは、システムの処理能力や可用性を向上させるため、サーバやデータベースといったシステム構成要素を複数台追加し、並列に処理を行うことで全体の性能を向上させる方式である。これは、Webサービスやアプリケーションへのアクセスが急増したり、データ量が増大したりして、既存のシステムでは要求される処理速度や応答性能を維持できなくなった際に用いられる、主要な拡張手法の一つである。特にクラウドコンピューティング環境においては、リソースを柔軟に増減できる特性と相まって、システム拡張の主流となっている。 詳細を述べると、スケールアウトはシステム全体を水平方向に拡張するアプローチを取る。具体的には、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバなど、特定の役割を持つサーバを複数台用意し、それらに対して均等に処理を分散させる仕組みを構築する。この処理分散の中心的な役割を担うのがロードバランサである。ロードバランサは、外部から送られてくるリクエストを、配下に接続された複数のサーバへ適切に振り分けることで、一台のサーバに負荷が集中するのを防ぎ、システム全体の応答性能を維持する。例えば、1秒間に1000件のリクエストを処理できるサーバが1台では処理しきれない場合、同じ性能のサーバを2台に増やし、ロードバランサでリクエストを均等に振り分ければ、理論上は1秒間に2000件のリクエストを処理できるようになる。 データベースにおいてもスケールアウトは適用される。例えば、大量のデータを扱う際に、データを複数のデータベースサーバに分散して格納する「シャーディング」(水平パーティショニング)や、リード(読み込み)処理を複数のレプリカ(複製)データベースに分散させる「リードレプリカ」といった手法が用いられる。これにより、単一のデータベースサーバがボトルネックとなることを防ぎ、データアクセス性能を向上させることが可能となる。 スケールアウトの主な利点は多岐にわたる。第一に、高い可用性が挙げられる。複数のサーバで処理を分担しているため、万が一そのうちのどれか一台が故障しても、残りのサーバで処理を継続できるため、システム全体が停止するリスクを低減できる。これを耐障害性と呼ぶ。第二に、優れた拡張性を持つ。システムの負荷がさらに増大した場合でも、必要に応じて新たなサーバを追加するだけで、比較的容易かつ迅速に処理能力を増強できる。これは、将来的な需要の変動に柔軟に対応できることを意味する。第三に、コスト効率の良さも特筆すべき点である。高性能で高価な単一のサーバを導入するよりも、汎用的な性能を持つ安価なサーバを複数台組み合わせる方が、多くの場合でトータルコストを抑えることができる。 一方で、スケールアウトにはいくつかの課題も存在する。最も顕著なのは、システムの設計と運用の複雑さが増す点である。複数のサーバが協調して動作する分散システムでは、データの一貫性や整合性を保つのが難しくなる。例えば、ユーザーのセッション情報や一時的な状態を管理する際には、どのサーバにリクエストが送られても同じ情報にアクセスできるようにする工夫が必要となる。また、分散トランザクションの管理や、障害発生時の切り分け、システムの監視なども、単一サーバ構成に比べて複雑化する傾向がある。各サーバ間の通信オーバーヘッドやデータ同期の遅延も、性能に影響を与える可能性があるため、慎重な設計が求められる。 スケールアウトと対比される拡張手法に「スケールアップ」がある。スケールアップは、単一のサーバにおいてCPUのコア数を増やしたり、メモリ容量を増強したり、より高速なストレージを導入したりするなど、個々のハードウェアリソースを強化することで性能を向上させる手法である。スケールアップは比較的導入が容易で、既存のアプリケーションを変更せずに性能を改善できる場合が多いという利点がある。しかし、ハードウェアの物理的な限界やコスト的な上限があるため、無限に性能を向上させられるわけではない。また、単一のサーバに依存するため、そのサーバが故障した場合、システム全体が停止するリスクが高まる。現代の大規模なWebサービスやクラウドネイティブなアプリケーションでは、こうした可用性や拡張性の観点から、スケールアウトがより推奨される傾向にある。スケールアウトは、システムの特定の部分がボトルネックになっている場合に、その部分だけを水平に拡張できるため、非常に効率的なスケーリング戦略と言える。