スキャンコンバータ (スキャンコンバータ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スキャンコンバータ (スキャンコンバータ) の読み方

日本語表記

スキャンコンバータ (スキャンコンバータ)

英語表記

Scan converter (スキャンコンバーター)

スキャンコンバータ (スキャンコンバータ) の意味や用語解説

スキャンコンバータは、映像信号の走査方式を変換するための装置または機能のことである。現代のITシステム、特に映像を扱う分野において、異なる規格を持つ映像機器同士を接続するために不可欠な役割を担っている。これを理解するためには、まず映像信号の根幹をなす「走査方式」について知る必要がある。映像は静止画の連続として表示されるが、その1枚1枚の画像(フレーム)を画面に描画する方法が走査方式である。 走査方式には、主に「インターレース走査」と「プログレッシブ走査」の二種類が存在する。インターレース走査は「飛び越し走査」とも呼ばれ、1枚のフレームを走査線と呼ばれる横線で描画する際に、まず奇数番目の線(1, 3, 5...)だけを描き(これを奇数フィールドと呼ぶ)、次に偶数番目の線(2, 4, 6...)を描く(これを偶数フィールドと呼ぶ)という手順を踏む。この2つのフィールドを組み合わせて1枚のフレームを完成させる。この方式は、少ないデータ量で映像を滑らかに見せるために考案され、かつてのアナログテレビ放送やビデオテープで広く採用されていた。しかし、動きの速い映像では奇数フィールドと偶数フィールドの描画タイミングのずれが原因で、映像の輪郭が櫛のようにギザギザに見える「コーミングノイズ」や、画面全体のチラつき(フリッカー)が発生しやすいという欠点を持つ。一方、プログレッシブ走査は「順次走査」とも呼ばれ、1枚のフレームを上から下まで走査線を順番に(1, 2, 3...)一度に描画する方式である。現在のデジタル放送やコンピュータのモニタ、スマートフォンのディスプレイなどで標準的に採用されている。インターレース走査に比べてデータ量は多くなるが、描画のずれがないため、チラつきやノイズが少なく、精細で高品質な映像を表示できる。 スキャンコンバータの最も基本的な機能は、これらインターレース信号とプログレッシブ信号を相互に変換することである。例えば、古いビデオカメラで撮影したインターレース方式の映像を、最新のプログレッシブ方式のPCモニタで正しく表示したい場合、インターレース信号をプログレッシブ信号に変換する必要がある。この変換処理は「I/P変換」または「デインターレース」と呼ばれる。単純に奇数フィールドと偶数フィールドを合成するだけでは、前述のコーミングノイズが発生してしまう。そのため、高度なスキャンコンバータは、映像内の動きを検出し、静止している領域はフィールドを合成し、動きのある領域は片方のフィールドを基に不足している走査線を予測・補間して生成するといった、複雑な画像処理を行うことで、より自然で高品質なプログレッシブ映像を生成する。逆に、プログレッシブ方式の映像をインターレース方式の放送機器や記録装置で扱う場合には、「P/I変換」が行われる。 さらに、多くのスキャンコンバータは走査方式の変換だけでなく、付随する多様な映像信号変換機能も備えている。その一つが「解像度変換(スケーリング)」である。これは、入力された映像の解像度(例:SD画質の720×480ピクセル)を、出力先のディスプレイの解像度(例:フルHDの1920×1080ピクセル)に合わせて拡大(アップコンバート)したり、逆に縮小(ダウンコンバート)したりする機能である。これにより、解像度の異なる機器間でも映像を全画面で表示させることが可能になる。また、「フレームレート変換」も重要な機能の一つだ。映像の1秒間あたりのコマ数(フレームレート)を変換するもので、例えば映画で使われる24fpsの映像を、テレビ放送で標準的な30fps(実際には29.97fps)や60fpsに変換する際に用いられる。他にも、画面の縦横比を変換する「アスペクト比変換」機能を持つものもある。 スキャンコンバータは、専用の外部機器として存在するハードウェアタイプと、PCのグラフィックカードや動画再生・編集ソフトウェアに機能として組み込まれているソフトウェアタイプに大別される。ハードウェアタイプは、リアルタイムでの安定した高速処理が求められる放送局、映像制作スタジオ、大規模なイベントでの映像送出、医療用画像診断装置などで利用される。一方、ソフトウェアタイプは、PC上で動画ファイルを再生する際や、ビデオ編集を行う際に内部的に実行されるデインターレース処理などが該当し、より身近な存在と言える。 システムエンジニアとして映像関連のシステムを構築する際には、スキャンコンバータの知識が極めて重要となる。例えば、監視カメラシステムにおいて、アナログのインターレース方式のカメラと、最新のデジタル(プログレッシブ)の録画装置・モニタを混在させる場合、信号形式を統一するためにスキャンコンバータが必要になる。また、デジタルサイネージシステムで、様々なフォーマットの映像コンテンツを特定の解像度とフレームレートを持つディスプレイに安定して表示させるためにも、スケーリングやフレームレート変換の機能が活用される。システム設計者は、接続する機器の映像入出力仕様(走査方式、解像度、フレームレート、接続端子の種類など)を正確に把握し、要件に応じて最適な変換機能を持つスキャンコンバータを選定・設定する責務を負う。このように、スキャンコンバータは、多様化する映像規格の差異を吸収し、システム全体の互換性を確保するために重要な役割を果たすコンポーネントなのである。

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