散布図 (サンプズ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
散布図 (サンプズ) の読み方
日本語表記
散布図 (サンフト)
英語表記
Scatter plot (プロット)
散布図 (サンプズ) の意味や用語解説
散布図は、二つの異なる数値データの間にどのような関係があるかを視覚的に表現する統計グラフの一種である。横軸と縦軸にそれぞれ一つの変数を割り当て、各データ点をそれらの変数の値に基づいてプロットすることで作成される。このグラフ形式は、データ間の相関関係やパターン、あるいは特異な値(外れ値)を直感的に把握するために非常に有用であり、システムエンジニアがシステムの性能分析、品質管理、エラー解析などを行う上で基礎的ながら強力なツールとなる。 散布図の基本的な構造は、直交座標系上にデータ点を配置することにある。例えば、システムの応答時間と同時にアクティブなユーザー数との関係を調べたい場合、横軸にアクティブユーザー数を、縦軸に応答時間を設定し、各測定値を点でプロットする。これにより、アクティブユーザー数が増加するにつれて応答時間がどのように変化するかを一目で確認できる。データ点がおおよそ右肩上がりの直線上に分布していれば「正の相関」があると言い、片方の変数が増加するともう片方も増加する傾向を示す。逆に、右肩下がりの直線上に分布していれば「負の相関」があり、片方の変数が増加するともう片方が減少する傾向を示す。特定のパターンが見られない場合は「無相関」であり、二つの変数間には明確な線形の関係がないことを示唆する。しかし、直線的な関係だけでなく、曲線的なパターン(非線形相関)を示す場合もあり、その形状からより複雑な関係性を読み取ることが可能である。 さらに、散布図はデータ群の中から外れた位置にある点、いわゆる外れ値の特定にも役立つ。これら外れ値は、測定ミス、データ入力エラー、あるいは通常では起こり得ない特異なイベントやシステムの異常を示している可能性があるため、その原因を深掘りするきっかけとなる。システムエンジニアがパフォーマンス上の問題やセキュリティ上の異常を検知する際、正常な挙動のデータ群から逸脱した点を散布図上で見つけることは、迅速な問題特定に繋がる。たとえば、通常の稼働状況では特定の範囲に集中するCPU使用率とネットワークトラフィックのデータが、ある時点から大きく外れた場所にプロットされた場合、これはシステム負荷の急増やDDoS攻撃の兆候である可能性も考えられる。 IT分野において散布図は多岐にわたる応用が可能である。システム性能監視の文脈では、ウェブサーバーのリクエスト数とCPU使用率の関係を可視化し、サーバーリソースのボトルネックを特定するのに用いられる。データベースの性能分析では、クエリの複雑度と実行時間の散布図を作成し、特定のクエリが非効率であることや、インデックス設計に問題があることを見つけ出す手がかりとなる。ソフトウェア開発の品質管理においては、開発期間と検出されたバグ数の関係、あるいはコード行数とバグ発生率の関係を分析することで、開発プロセスやコーディング規約の改善点を見つけるのに役立つ。また、機械学習の分野では、特徴量選択の初期段階で、複数の特徴量ペア間の相関を視覚的に確認し、モデルの精度向上に寄与する特徴量や、多重共線性の原因となる相関の強い特徴量を発見するために利用される。 散布図を解釈する際にはいくつかの注意点がある。最も重要なのは、「相関関係は因果関係を意味しない」という原則である。二つの変数の間に強い相関が見られたとしても、一方の変数がもう一方の原因となっているとは限らず、第三の隠れた変数が両方に影響を与えている可能性もある。例えば、あるITシステムの利用者数とエラー報告数に正の相関が見られたとしても、利用者数が多いからエラーが発生しやすいのではなく、システム全体の負荷増加が利用者数とエラー報告数の両方を引き上げている可能性も考慮する必要がある。また、基本的な散布図は二つの変数間の関係を表現するに留まるため、三つ以上の変数の複雑な相互作用を直接的に表現することは難しい。そのような場合は、色や点のサイズ、形状などを使って第三の変数を表現したり、他の多変量解析手法と組み合わせたりする必要がある。データ点が非常に多く密集している場合(オーバープロット)、全体のパターンが見えにくくなることがあるため、点の透明度を調整したり、データの一部をサンプリングしたりするなどの工夫が求められる場合もある。軸のスケールや表示範囲の設定も、散布図から得られる印象を大きく左右するため、適切なスケール設定が不可欠である。これらの注意点を踏まえ、散布図はデータの奥に潜む洞察を引き出す強力な手段として、システムエンジニアのデータ分析スキルを向上させる上で欠かせないツールであると言える。