セクタ (セクタ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セクタ (セクタ) の読み方

日本語表記

セクタ (セクタ)

英語表記

sector (セクター)

セクタ (セクタ) の意味や用語解説

セクタは、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)といったストレージデバイスにおいて、データを記録・管理するための最小単位である。コンピュータがストレージからデータを読み書きする際、このセクタという単位を基準にして処理が行われる。 セクタは、物理的なストレージメディア上でデータを格納する特定の領域を指す。HDDの場合、同心円状に形成されたトラックと呼ばれる記録面が、さらに扇形に分割された一つ一つの区画がセクタである。このセクタには、実際にデータが記録されるデータ領域の他に、セクタの開始を示すID情報や、データの誤りを検出・訂正するためのエラー訂正コード(ECC)などが含まれる。伝統的に一つのセクタの物理的なサイズは512バイトが主流であったが、近年では記録密度の向上やエラー訂正能力の強化を目的として、4096バイト(4KB)のセクタ、通称Advanced Format(AF)セクタが普及している。 ストレージデバイスは、OS(オペレーティングシステム)やファイルシステムからの要求に応じてデータを読み書きするが、その際に扱われる単位は必ずしも物理的なセクタと一致しない場合がある。OSやファイルシステムが論理的に管理するデータブロックの単位を「論理セクタ」と呼ぶことがある。従来の512バイト物理セクタのドライブでは、物理セクタと論理セクタは通常1対1で対応していた。しかし、4KB物理セクタのAFドライブが登場した際、従来の512バイト単位でデータを扱うOSやアプリケーションとの互換性を保つために、「512バイトエミュレーション(512e)」という方式が採用された。これは、ドライブ内部では4KB単位で物理的にデータを扱いつつも、外部のOSからは512バイトセクタとして認識させる仕組みである。この方式では、OSが512バイト単位で書き込みを要求した場合、ドライブは内部で該当する4KB物理セクタを読み込み、書き換えが必要な512バイト部分だけを更新し、残りの部分と合わせて再度4KB物理セクタとして書き込む、という「Read-Modify-Write(RMW)」処理が発生する。このRMW処理は、性能の低下を引き起こす可能性があるため、4KB物理セクタに最適化されたOSやファイルシステムでは、物理セクタと論理セクタを1対1で対応させる「Native 4K」と呼ばれる方式が推奨される。 セクタはデータ管理の基本単位であるため、特定のセクタが物理的に損傷すると、そのセクタに記録されていたデータは読み出せなくなる。このような損傷したセクタを「不良セクタ」と呼ぶ。HDDでは、ディスク表面の傷や磁気的な劣化、SSDではNANDフラッシュメモリの書き換え回数限界などにより不良セクタが発生することがある。ストレージデバイスは、不良セクタが発生した場合に、そのセクタへのアクセスを禁止し、別の予備セクタに置き換える「リマップ」機能を持つのが一般的である。S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)と呼ばれる自己診断機能を通じて、不良セクタの発生状況やリマップ処理の回数などを監視し、ドライブの故障を事前に予測する手助けとなる。 また、セクタはディスクのフォーマットにも深く関わる。ストレージデバイスを初めて利用する際や、データを完全に消去したい場合に実行される「フォーマット」には、物理フォーマットと論理フォーマットがある。物理フォーマットは、セクタやトラックを物理的に区画する工程であり、通常は製造段階で実施される。ユーザーがOSから行うフォーマットは「論理フォーマット」であり、これはセクタのID情報やエラー訂正コードを書き込み、ファイルシステムを構築して、OSがデータを管理できるようにするための準備作業である。 SSDにおいてもセクタの概念は存在するが、HDDとはその物理的な構造が大きく異なるため、内部的なデータ管理方法は異なる。SSDは、NANDフラッシュメモリの「ページ」(通常数KB)と呼ばれる単位でデータを書き込み、複数のページから構成される「ブロック」(通常数百KB〜数MB)と呼ばれる単位でデータを消去する。SSDコントローラは、これらのページやブロックを効率的に管理し、OSからのセクタ単位の読み書き要求を処理している。SSDの性能と寿命を維持するためには、ウェアレベリング(磨耗平準化)や不良ブロック管理といった高度な技術が内部で動作している。これらは、特定の物理セクタ(またはページやブロック)に書き込みが集中するのを防ぎ、すべてのメモリセルを均等に利用することで、ドライブ全体の寿命を延ばす役割を担う。 このように、セクタはストレージデバイスにおける最も基本的なデータ記録単位であり、その種類、サイズ、管理方法は、デバイスの性能や信頼性、互換性に直接影響を与える重要な要素である。