セキュリティアソシエーション (セキュリティアソシエーション) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セキュリティアソシエーション (セキュリティアソシエーション) の読み方

日本語表記

セキュリティアソシエーション (セキュリティアソシエーション)

英語表記

Security Association (セキュリティアソシエーション)

セキュリティアソシエーション (セキュリティアソシエーション) の意味や用語解説

セキュリティアソシエーション(SA: Security Association)は、二つの通信拠点間で安全な通信を行うために必要となる、セキュリティに関する様々なパラメータやプロトコルの合意事項を定義した論理的な接続のことである。主にVPN(Virtual Private Network)を実現する技術であるIPsecにおいて、中核的な概念として利用される。コンピュータ同士が暗号化された通信を開始する前に、どのような方法でデータを保護するのかを互いに取り決め、その約束事をまとめたものがセキュリティアソシエーションに相当する。この合意が確立されて初めて、暗号化や認証といったセキュリティ機能が適用された安全なデータ交換が可能となる。物理的なケーブルで接続するのではなく、あくまで通信ルールに関する合意であるため、「論理的な接続」または「コネクション」と表現される。 セキュリティアソシエーションは、安全な通信を実現するための具体的な設定情報を含んだ集合体である。その主要な構成要素には、まずセキュリティプロトコルがある。IPsecでは主に、データの認証と完全性を保証するAH(Authentication Header)と、それに加えてデータの暗号化も行うESP(Encapsulating Security Payload)の二種類があり、どちらを使用するかがSA内で定義される。次に、使用する暗号化アルゴリズムと認証アルゴリズムが定められる。暗号化アルゴリズムにはAESや3DESなどが、認証アルゴリズムにはHMAC-SHA1やHMAC-MD5などが存在し、通信を行う両者が同じアルゴリズムを使用することに合意する必要がある。これらのアルゴリズムを実際に機能させるために不可欠なのが、暗号鍵と認証鍵である。この鍵は、部外者に知られてはならない秘密の情報であり、SAを確立する過程で安全に共有される。また、セキュリティを維持するため、SAには有効期間、すなわち鍵の寿命(ライフタイム)が設定される。この期間が過ぎるとSAは無効となり、新しい鍵を用いて新たなSAを再確立することで、鍵が漏洩するリスクを低減する。さらに、IPsecの動作モードとして、トランスポートモードとトンネルモードのどちらを使用するかもSAで定義される。トランスポートモードはIPパケットのデータ部分のみを保護するのに対し、トンネルモードは元のIPヘッダごと全体を保護するため、主にゲートウェイ間の通信で利用される。 これらの多岐にわたるパラメータを識別するために、セキュリティパラメータインデックス(SPI: Security Parameter Index)と呼ばれる一意の識別番号が各SAに割り当てられる。受信側の機器は、受信したパケットのヘッダに含まれるSPI値を見ることで、数あるSAの中からどのSAを用いてこのパケットを処理すべきかを即座に判断できる。この仕組みにより、複数の拠点と同時に安全な通信を行っている場合でも、それぞれの通信を正しく処理することが可能となる。 セキュリティアソシエーションの確立プロセスは、手動で行うことも可能だが、一般的にはIKE(Internet Key Exchange)というプロトコルを用いて自動的に行われる。IKEによるSAの確立は二つのフェーズに分かれている。フェーズ1では、まずIKE自体のための安全な通信路を確立する。ここでは通信相手の認証を行い、以降のネゴシエーションを安全に行うためのSA(IKE SA)を生成する。フェーズ2では、フェーズ1で確立された安全な通信路上で、実際にデータを送受信するためのSA(IPsec SA)を生成する。ここで、前述した暗号化アルゴリズムや鍵、寿命などの具体的なパラメータが交換され、合意に至る。 セキュリティアソシエーションの重要な特性として、単方向性であることが挙げられる。つまり、一つのSAは送信から受信への一方向の通信しか定義しない。そのため、二つの拠点で双方向の通信を行うには、拠点Aから拠点Bへの送信用SAと、拠点Bから拠点Aへの送信用SAの、合計二つのSAが必要となる。これらの確立されたSAの情報は、各拠点のセキュリティアソシエーションデータベース(SADB: Security Association Database)という領域で管理される。システムエンジニアがVPNの設定やトラブルシューティングを行う際には、このセキュリティアソシエーションが正しく確立されているか、意図したパラメータで設定されているかを確認することが極めて重要となる。SAの確立に失敗すれば通信は開始できず、パラメータの不一致は通信の不安定化やセキュリティ上の脆弱性を引き起こす原因となる。このように、セキュリティアソシエーションは、安全なネットワーク通信の基盤を支えるための詳細な設計図であり、その仕組みを理解することは、ネットワークセキュリティを学ぶ上で不可欠な知識である。