セキュリティトークン (セキュリティトークン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セキュリティトークン (セキュリティトークン) の読み方

日本語表記

セキュリティトークン (セキュリティトークン)

英語表記

Security Token (セキュリティトークン)

セキュリティトークン (セキュリティトークン) の意味や用語解説

セキュリティトークンとは、ユーザーの本人確認、つまり認証を強化するために用いられる、特別な認証情報を生成または格納する物理的デバイスやソフトウェアのことである。これは、一般的に利用されるユーザー名とパスワードだけでは不十分となる、現代のサイバーセキュリティ環境において、認証の堅牢性を高める非常に重要な要素として機能する。パスワードが漏洩した場合や、パスワードの推測による不正アクセスを防ぐことを目的とし、ユーザーが「知っている情報(パスワード)」に加えて「持っている情報(セキュリティトークン)」や「生体情報(指紋など)」を組み合わせる多要素認証を実現する基盤となる。これにより、万が一パスワードが第三者に知られても、トークンがなければ認証を突破できないため、セキュリティレベルが格段に向上する。 詳細に述べると、セキュリティトークンには大きく分けて「ハードウェアトークン」と「ソフトウェアトークン」の二種類がある。 ハードウェアトークンは、物理的な形状を持つデバイスであり、その特徴からいくつかの種類に分類される。一つは、一定時間ごとに変化する使い捨てパスワード、つまりワンタイムパスワードを生成する専用デバイスである。これは、ユーザーがログイン時にデバイスの画面に表示される数字を入力することで認証を行う。ワンタイムパスワードは、サーバー側とデバイス側で共有された秘密鍵と、時間情報(TOTP:Time-based One-Time Password)やカウンタ情報(HOTP:HMAC-based One-Time Password)に基づいて生成されるため、毎回異なるパスワードが生成され、一度利用されると無効となる特性を持つ。そのため、もし生成されたパスワードが第三者に盗聴されても、再利用される心配がない。 次に、FIDO(Fast IDentity Online)セキュリティキーと呼ばれる種類のハードウェアトークンがある。これはUSBポートに差し込んだり、NFC(Near Field Communication)でかざしたり、Bluetoothで接続したりして利用するもので、ユーザーはPINの入力や指紋認証などの生体認証を行うことで、認証処理が完了する。FIDOセキュリティキーは公開鍵暗号方式をベースにしており、ユーザーの秘密鍵を安全にデバイス内に保持し、公開鍵をサービスプロバイダに登録する。認証時には、サービスプロバイダから送られてきたチャレンジ(乱数)を秘密鍵で署名し、その署名と公開鍵をサービスプロバイダに送り返すことで、本人であることを証明する。パスワードを入力する必要がなく、フィッシング詐欺にも強いという利点を持つ。 また、スマートカード(ICカード)もセキュリティトークンの一種である。これは、カード内にICチップが埋め込まれており、電子証明書などの認証情報を安全に格納できる。住民基本台帳カードやマイナンバーカード、企業の入退室管理カード、社員証などがこれに該当する。これらのカードは、カードリーダーに挿入し、PINを入力することで、カード内に格納された電子証明書を利用して本人認証や電子署名を行うことができる。USBトークンも同様に、USBメモリのような形状に電子証明書を格納し、PCに接続して利用する。これらは、持ち運びが容易でありながら、内部の情報を物理的に保護する役割を果たす。 一方、ソフトウェアトークンは、特定のデバイスに依存しない、プログラムやアプリケーションとして機能するセキュリティトークンである。最も一般的なのは、スマートフォンアプリを利用したワンタイムパスワード生成アプリである。Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどが代表的であり、ハードウェアトークンと同様に時間同期型のワンタイムパスワードをスマートフォン画面に表示する。ユーザーはアプリで表示されたパスワードを入力することで認証を行う。また、スマートフォンアプリを使ったプッシュ通知認証もソフトウェアトークンの一種である。これは、ログイン試行時にスマートフォンに通知が送られ、「承認」ボタンをタップするだけで認証が完了する手軽さが特徴である。サーバー側とアプリ側で暗号化された通信を行い、ユーザーの承認を受け取ることで本人確認を行う仕組みである。 その他にも、SMS(ショートメッセージサービス)や電子メールで送られてくるワンタイムパスワードもソフトウェアトークンとして広く利用されている。これは、登録された電話番号やメールアドレスに、一時的に有効なパスワードが送付される方式で、特別なアプリやデバイスが不要なため、導入が容易であるというメリットがある。しかし、SMSやメールが傍受されるリスクや、SIMスワップ詐欺などに対する脆弱性が指摘されることもあるため、他の認証要素と組み合わせることが望ましい。 システムエンジニアを目指す上で、セキュリティトークンが果たす役割は極めて重要である。それは、従来のパスワード認証が持つ脆弱性、例えばパスワードの使い回し、簡単なパスワードの設定、ブルートフォース攻撃、辞書攻撃、フィッシング詐欺などからシステムとユーザーを保護するための、堅牢な防御策の一つとなるからである。セキュリティトークンを導入することで、ユーザーの認証プロセスがより複雑かつ安全になり、不正アクセスのリスクを大幅に低減できる。特に、多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)を実装する際には、この「持っている要素」としてセキュリティトークンが不可欠な要素となる。これにより、企業システムへのアクセス、オンラインバンキングでの取引、クラウドサービスへのログイン、あるいは重要な電子署名など、様々な場面でユーザーの本人性を確実に保証し、情報資産の安全性を高めることができるのである。セキュリティトークンは、単なる認証手段の一つではなく、現代のセキュリティアーキテクチャにおいて基盤となる重要なコンポーネントであり、その種類や動作原理を理解することは、安全なシステムを設計・構築・運用する上で不可欠な知識となる。