自己割り当てIPアドレス (じこわりあてアイピーアドレス) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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自己割り当てIPアドレス (じこわりあてアイピーアドレス) の読み方

日本語表記

自己割当IPアドレス (ジコワリアトアイピーアドレス)

英語表記

self-assigned IP address (セルフアサインドアドレス)

自己割り当てIPアドレス (じこわりあてアイピーアドレス) の意味や用語解説

自己割り当てIPアドレスは、コンピューターやネットワークデバイスがDHCPサーバーからIPアドレスを取得できない場合に、自身で一時的に割り当てる特殊なIPアドレスである。これは主に、デバイスがネットワークに接続されたものの、IPアドレスを自動的に配布するDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーが見つからない、または利用できない状況で発生する。このような場合でも、最低限同じローカルネットワークセグメント内の他のデバイスと通信できる可能性を残すために、オペレーティングシステムが自動的にこのアドレスを生成し、使用する仕組みを持つ。自己割り当てIPアドレスは、IPv4の場合、特定の範囲である「169.254.0.0」から「169.254.255.255」まで、サブネットマスク「255.255.0.0」(または/16)の範囲内で割り当てられる。この機能は、Microsoft Windows環境ではAPIPA(Automatic Private IP Addressing)と呼ばれ、より一般的なネットワーク用語としてはLink-Local Addressとも称される。 デバイスがネットワークに接続されると、最初にDHCPサーバーを探し、IPアドレスの割り当てを要求する。この要求は、通常DHCP DISCOVERメッセージとしてネットワーク全体にブロードキャストされる。DHCPサーバーが正常に動作していれば、DHCP OFFERメッセージを返送し、デバイスはそれに応じてIPアドレスの割り当てを受ける。しかし、何らかの理由でDHCP DISCOVERメッセージに対するDHCPサーバーからの応答がない場合、デバイスは数回にわたる再試行期間を経て、DHCPサーバーが見つからないと判断する。このとき、デバイスはネットワーク接続を完全に失うことを避けるため、上記の169.254.0.0/16の範囲からランダムにIPアドレスを一つ選択し、自身に割り当てようとする。この段階で、選択したIPアドレスがそのローカルネットワークセグメント内で既に他のデバイスによって使用されていないかを確認する手順が実行される。具体的には、ARP(Address Resolution Protocol)を用いて、選択したIPアドレスを持つデバイスが存在するかをネットワークに問い合わせる。もし重複が検出されなければ、そのIPアドレスを自身に割り当てて使用を開始する。この重複アドレス検出のプロセスは、ネットワーク内のIPアドレスの競合を防ぐ上で非常に重要である。 自己割り当てIPアドレスが割り当てられた状態では、デバイスは同じローカルネットワークセグメント内の、同様に自己割り当てIPアドレスを持っている、または固定IPアドレスが設定されている他のデバイスとは通信できる可能性がある。しかし、通常DHCPサーバーが提供するデフォルトゲートウェイのアドレス情報がないため、ルーターを介した外部ネットワーク、例えばインターネットへの接続はできない。つまり、インターネット上のウェブサイト閲覧やメール送受信、クラウドサービスへのアクセスなどは不可能となる。自己割り当てIPアドレスは、ネットワーク接続に問題が発生していることを示す明確な兆候として認識すべきであり、ネットワークトラブルシューティングの重要な手がかりとなる。 デバイスは一度自己割り当てIPアドレスを取得した後も、定期的にDHCPサーバーの存在を確認し続ける。これは、DHCPサーバーが後から利用可能になった場合に、速やかに通常のIPアドレスを取得し直すためである。もしDHCPサーバーがネットワーク上で検出されると、デバイスは自己割り当てIPアドレスを破棄し、DHCPプロセスを再開してDHCPサーバーから正式なIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーなどの情報を取得し、正常なネットワーク通信を確立する。したがって、IPアドレスが「169.254.x.x」となっている場合、それはDHCPサーバーに問題がある(例えば、DHCPサーバーが停止している、設定が間違っている、デバイスがDHCPサーバーに到達できないなど)か、またはLANケーブルの断線や無線LANの接続不良といった物理的なネットワーク接続の問題が発生している可能性が高いと判断できる。この特性は、システムエンジニアがネットワーク障害を診断する際に、問題の切り分けを行う上で非常に役立つ情報となる。

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