セマンティックWeb (セマンティックウェブ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
セマンティックWeb (セマンティックウェブ) の読み方
日本語表記
セマンティックWeb (セマンティックウェブ)
英語表記
Semantic Web (セマンティックウェブ)
セマンティックWeb (セマンティックウェブ) の意味や用語解説
セマンティックWebとは、現在人間が主に閲覧するために利用しているWorld Wide Webを、コンピュータ自身が情報の内容や意味を理解し、自律的に処理できるようにすることを目指す構想、あるいはそのための技術群の総称である。ティム・バーナーズ=リーによって提唱されたこの概念は、Web上の情報を単なる文字列や画像の集まりとしてではなく、意味的な関連性を持つ巨大な知識ベース(ナレッジベース)として扱えるようにすることを目的としている。現在のWebが主にHTML(HyperText Markup Language)によって文書の構造や見た目を記述しているのに対し、セマンティックWebでは情報そのものが持つ「意味」を記述し、情報間の関係性を明確に定義することに主眼が置かれる。これにより、コンピュータは人間を介さずに、より高度な情報の検索、統合、再利用、推論を行うことが可能になると期待されている。 セマンティックWebの必要性を理解するためには、まず現在のWebが抱える課題を認識する必要がある。現在のWeb検索エンジンは、キーワードのマッチングに基づいて情報を提供している。しかし、コンピュータはページに書かれている単語の意味や文脈を理解しているわけではない。例えば、「橋本」というキーワードで検索した場合、人名なのか、地名なのか、あるいは会社名なのかを区別することは困難である。人間であれば前後の文脈から判断できるが、コンピュータにとっては単なる文字列の一致に過ぎない。このため、検索結果には利用者の意図しない情報が多数含まれることになる。また、異なるウェブサイトに存在する関連情報を自動的に統合することも難しい。例えば、あるサイトにある商品のスペック情報と、別のサイトにあるその商品のレビュー情報をコンピュータが自動的に結びつけ、要約して提示することは、現状の技術だけでは非常に困難なタスクとなる。 このような課題を解決するため、セマンティックWebではいくつかの標準技術が定められている。その中核となるのがRDF(Resource Description Framework)である。RDFは、Web上のあらゆる情報や概念を「主語(Subject)」「述語(Predicate)」「目的語(Object)」という3つの要素の組(トリプル)で表現するデータモデルである。例えば、「東京スカイツリーの高さは634メートルである」という情報は、「主語:東京スカイツリー」「述語:高さ」「目的語:634メートル」という形で記述される。このとき、主語や述語、目的語には、URI(Uniform Resource Identifier)が用いられる。URIはWeb上のリソースを一意に識別するためのものであり、これを用いることで、世界中の誰もが同じ「東京スカイツリー」という概念や「高さ」という属性を曖昧さなく参照できるようになる。このRDFによる記述方法により、情報が意味的なつながりを持つグラフ構造のデータとして表現され、コンピュータによる処理が容易になる。 さらに、単語や概念間の関係性を定義するためにオントロジーという仕組みが用いられる。オントロジーは、ある領域における概念や用語、そしてそれらの関係性を体系的に記述したものである。「犬は哺乳類の一種である」「哺乳類は動物の一種である」といった階層関係や、「CEOは最高経営責任者と同じ意味である」といった同義関係などを定義することができる。このオントロジーを記述するための言語として、RDFS(RDF Schema)や、より複雑な論理表現が可能なOWL(Web Ontology Language)がある。オントロジーを用いることで、コンピュータは記述された情報から新たな事実を推論することが可能になる。例えば、「ポチは犬である」という情報があれば、「ポチは動物である」という事実を自動的に導き出すことができる。 そして、RDFで記述された膨大なデータ群の中から必要な情報を探し出すための問い合わせ言語としてSPARQL(SPARQL Protocol and RDF Query Language)が標準化されている。これは、リレーショナルデータベースにおけるSQLに相当するもので、グラフ構造のデータに対して柔軟な検索条件を指定し、必要な情報を抽出することができる。 これらの技術が普及することで、Webの利用方法は大きく変化する。検索はより高度になり、「パリにある美術館のうち、印象派の作品を所蔵し、かつ月曜日に開館している場所」といった複雑で意図を汲んだ問いに対して、的確な答えを直接得られるようになるだろう。また、異なるデータソースからの情報の統合が容易になるため、例えば行政が公開するオープンデータや企業の製品データ、個人のスケジュール情報などを組み合わせ、個々のユーザーに最適化された新しいサービスが自動的に創出される可能性もある。AIアシスタントがユーザーの代理としてWeb上の情報を収集・解釈し、旅行の計画立案や複雑な調査を自律的に行うといった未来も、セマンティックWebの延長線上にある。このようにセマンティックWebは、Webを情報の海から知識の体系へと進化させるための重要な技術基盤なのである。