シーケンシャルアクセス (シーケンシャルアクセス) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
シーケンシャルアクセス (シーケンシャルアクセス) の読み方
日本語表記
シーケンシャルアクセス (シーケンシャルアクセス)
英語表記
Sequential access (シーケンシャル アクセス)
シーケンシャルアクセス (シーケンシャルアクセス) の意味や用語解説
シーケンシャルアクセスとは、コンピュータの記憶装置に保存されたデータにアクセスする方式の一つで、データを先頭から順に読み書きする方式を指す。この方式では、目的のデータがどこにあっても、そのデータの手前にあるすべてのデータを読み飛ばすか、または読み込む必要がある。つまり、データが物理的に、あるいは論理的に連続した順序で並んでいることを前提とし、その順番に従ってのみアクセスが可能となる。これは、特定のデータに直接飛び込んでアクセスするランダムアクセス(ダイレクトアクセス)とは対照的な概念である。 このアクセス方式の基本的な原理は、データの記録媒体が持つ物理的な特性に由来する部分が大きい。最も典型的なシーケンシャルアクセス装置は磁気テープである。磁気テープは、長いテープ状の媒体にデータを連続して記録するため、例えばテープの途中に記録されたデータにアクセスするには、テープを先頭から巻き進めて目的のデータが記録された位置まで到達させる必要がある。これは、まるでビデオテープやカセットテープを早送りして目的のシーンや曲を探す作業に似ている。テープが巻き戻しや早送りで指定の位置に移動するまでには時間がかかり、目的のデータが先頭から遠ければ遠いほど、アクセスにかかる時間は長くなる。 シーケンシャルアクセス方式のメリットとしては、まずその構造のシンプルさが挙げられる。複雑なメカニズムを必要としないため、比較的安価に大容量のデータを記録できる。特に、データの追加(追記)や、保存されている全てのデータを最初から最後まで読み出すような一括処理(バッチ処理)においては、その性能を発揮しやすい。例えば、企業の大量の取引データを月末にまとめて処理するような場合や、システムのバックアップデータを取得する際には、磁気テープによるシーケンシャルアクセスが効率的であった。 一方で、デメリットも明確である。最大のデメリットは、特定のデータへのアクセス速度が遅い点である。目的のデータがどこにあるかに関わらず、必ず先頭から順に探す必要があるため、データ量が増えれば増えるほど、特定のデータに到達するまでの時間は長くなる。そのため、データベースのように頻繁に特定のデータを検索したり、任意の位置のデータを更新したりする用途には全く向かない。データの参照や更新がランダムに行われるような処理では、著しく性能が低下する。 現代のコンピュータシステムにおいては、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のようなランダムアクセスが可能な記憶装置が主流であり、シーケンシャルアクセスが直接的に利用される場面は少なくなった。しかし、シーケンシャルアクセスの概念自体は、依然として様々な場面で重要である。例えば、オペレーティングシステムがファイルをディスクに書き込む際、ファイルのデータブロックを連続した領域に配置しようとすることで、後続の読み込み時にシーケンシャルアクセスに近い形で高速なデータ転送を実現しようとする。これは、物理的なディスクヘッドの移動を最小限に抑え、ディスクの回転を待つ時間を減らすことで、読み込み効率を高めるためである。SSDにおいても、連続した領域に書き込むシーケンシャル書き込みは、フラッシュメモリの特性上、ランダム書き込みよりも高速であることが多い。 また、動画や音声のストリーミング再生、ログファイルの記録と参照なども、シーケンシャルアクセス的な処理が中心となる。ストリーミングでは、先頭から順にデータを読み込みながら再生が進む。ログファイルも、通常は時系列順にデータが追記され、参照する際も特定の期間のログを先頭から順に読み出すことが多い。これらの処理は、必ずしも物理的なシーケンシャルデバイスを使っているわけではないが、データの処理方法としてはシーケンシャルアクセスに近い考え方が適用される。 結論として、シーケンシャルアクセスはデータを先頭から順に処理するシンプルなアクセス方式であり、大容量データのバッチ処理やバックアップ、アーカイブといった用途でかつては主に使用されてきた。現代のシステムではランダムアクセスが主流となっているものの、データの効率的な読み書きを考える上で、シーケンシャルアクセスという概念は依然としてコンピュータの動作原理や性能評価において重要な基礎知識の一つである。