シリアル (シリアル) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シリアル (シリアル) の読み方

日本語表記

シリアル (シリアル)

英語表記

serial (シリアル)

シリアル (シリアル) の意味や用語解説

シリアルとは、データや処理が順序立てて一つずつ実行・転送される方式を指す。特にデータ通信においては、データを構成するビットを時間的に一つずつ、一本の信号線、または少数の信号線で順番に送信する方式を意味する。これに対し、複数のビットを同時に複数の信号線で送信する方式をパラレル(並列)と呼ぶ。シリアル方式は、シンプルさ、長距離転送への適性、必要な配線数の少なさなどの利点を持つ。 データ転送におけるシリアルの基本原理は、情報を構成する最小単位であるビットを一つずつ順番に送り出すことにある。例えば、「A」という文字をバイナリで表現すると「01000001」となるが、シリアル転送ではこの「0」を送り、次に「1」を送り、その次に「0」を送るといった具合に、各ビットを時間の経過とともに順次送信する。受信側では、送られてきたビットを順番に受け取り、元のデータに組み立て直す。この方式の最大の利点は、必要な信号線が少ないためケーブルが細く、コネクタも単純になることだ。これにより、配線のコストが下がり、ノイズの影響を受けにくく、長距離のデータ転送に適している。また、複数の信号線間におけるタイミングずれ(スキュー)の問題が発生しにくいという特徴もある。一方で、同じクロック速度であれば、複数のビットを同時に送れるパラレル方式に比べて、一度に送れるデータ量が少なく、理論上の転送速度は劣る。しかし、近年の技術革新により、シリアル転送のクロック速度が飛躍的に向上し、多くの高速インターフェースではパラレル方式を凌駕する速度を実現している。 IT分野では、多様なシリアル通信プロトコルが利用されている。最も古典的なものの一つにRS-232Cがある。これは、モデムや古いプリンタ、ネットワーク機器のコンソール接続などに用いられた規格で、比較的低速だが安定した長距離通信が可能であった。現代において広く普及しているのはUSB(Universal Serial Bus)だ。これはパソコンと様々な周辺機器(キーボード、マウス、プリンタ、外付けストレージなど)を接続するための規格で、電源供給も可能であり、高速なデータ転送を実現する。USBは登場当初からシリアル転送方式を採用しており、その進化版であるUSB 3.0やUSB4なども同様である。また、ネットワーク通信の根幹をなすEthernet(イーサネット)も、物理層では多くの場合、差動信号を用いたシリアル転送を採用している。ストレージデバイスの接続では、SATA(Serial AT Attachment)がHDDやSSDの内部接続に用いられ、従来のパラレルATAを置き換えた。グラフィックボードなどの拡張カードを接続するPCI Express(PCIe)も、高速なシリアル転送レーンを束ねることで、極めて高い転送速度を実現している。これらのプロトコルは、それぞれ異なる目的と要求速度に応じて設計されているが、すべてビットのシリアル転送を基盤としている。 データ転送だけでなく、ソフトウェアの領域でも「シリアル」の概念は重要だ。一つは「シリアル処理(逐次処理)」と呼ばれるもので、プログラムが複数のタスクを一つずつ順番に実行していく処理方式を指す。これは並列処理や非同期処理と対比される概念であり、タスク間の依存関係が強く、特定の順序でなければ正しく実行できない場合や、リソースの競合を避けるために用いられる。もう一つ重要な概念は「シリアル化(Serialization)」だ。これは、メモリ上のオブジェクトやデータ構造を、ファイルに保存したりネットワークを介して転送したりできる形式、通常はバイト列に変換することを意味する。例えば、Javaのオブジェクトシリアル化、JSON(JavaScript Object Notation)やXML(Extensible Markup Language)形式でのデータ保存・転送などがこれにあたる。シリアル化されたデータは、必要に応じて元のオブジェクトの形に「デシリアル化(Deserialization)」される。これにより、異なる環境や時間でデータを共有・再利用することが可能となる。 シリアルポートは、上記のようなシリアル通信を行うための物理的なインターフェースの総称である。かつてのPCでは、RS-232Cに準拠したD-sub 9ピンや25ピンのコネクタが標準的に搭載されており、「COMポート」として知られていた。これらは主にマウス、モデム、測定機器などとの接続に用いられたが、転送速度の限界やコネクタの大きさ、設定の複雑さなどから、現在ではほとんど姿を消した。しかし、その役割はUSBポートに引き継がれている。USBは、内部的には高度なシリアル通信プロトコルだが、多くのOSではUSB-シリアル変換チップや仮想COMポートドライバを用いることで、従来のシリアルポートとして振る舞わせることが可能だ。これにより、現代のPCでもレガシーなシリアルデバイスとの互換性を保ちつつ、より高速で汎用的な接続手段が提供されている。このように、シリアルという概念は、物理的な信号伝送からソフトウェアのデータ管理、さらには通信プロトコルに至るまで、ITシステムの様々な層で重要な役割を担い、その形を変えながら進化し続けているのである。

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