シリアルケーブル (シリアルケーブル) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シリアルケーブル (シリアルケーブル) の読み方

日本語表記

シリアルケーブル (シリアルケーブル)

英語表記

serial cable (シリアルケーブル)

シリアルケーブル (シリアルケーブル) の意味や用語解説

シリアルケーブルは、データを直列(シリアル)に伝送するために使用されるケーブルである。このケーブルを用いた通信方式をシリアル通信と呼び、データを1ビットずつ順番に送る特徴を持つ。 概要として、シリアルケーブルはかつてパーソナルコンピュータ(PC)とモデム、プリンタ、マウスなどの様々な周辺機器を接続する主要な手段として広く利用されてきた。現代のPCではその直接的なポートを見かけることは少なくなったが、ネットワーク機器の管理や産業用制御システム、組み込み機器のデバッグなど、特定の用途においては今なお重要な役割を担っている。その基本的な原理は、データの送受信を行うための最小限の信号線で構成され、シンプルながらも信頼性の高い通信を可能にする点にある。 詳細として、シリアルケーブルの通信方式であるシリアル伝送は、データ信号を1本の線路(または一対の線路)を使って、ビット単位で時間的に順次送出する。これに対し、パラレル伝送は複数のデータ線を使い、複数のビットを同時に送る方式である。シリアル伝送の主な利点は、ケーブルの芯線数が少なくて済むため、ケーブル自体のコストが低く、配線が簡素である点にある。また、信号線が少ないことで、信号間の干渉(クロストーク)を低減しやすくなり、比較的長距離の伝送にも適している。一方で、同じクロック周波数であれば、パラレル伝送に比べてデータ転送速度が遅くなる傾向があった。しかし、現代の高速シリアル通信では、高いクロック周波数と高度な信号処理技術により、この速度の課題は克服されている。 シリアルケーブルの最も代表的な規格は「RS-232C」である。この規格は、通信を行うための電気的な特性、信号線の役割、コネクタの形状などを定義している。コネクタは「D-subminiature(D-sub)」と呼ばれる台形のもので、主に9ピン(DE-9)と25ピン(DB-25)が使われる。PC側では9ピンが一般的で、モデムや古い端末では25ピンも使用された。 RS-232Cにおける主要な信号線とその役割は以下の通りである。 - TXD (Transmit Data):データを送信するための信号線。 - RXD (Receive Data):データを受信するための信号線。 - GND (Ground):電気的な基準となる接地線。 - RTS (Request To Send):送信要求の信号線。 - CTS (Clear To Send):送信許可の信号線。RTSとCTSは、通信相手がデータを受信する準備ができているかを確認し、データの溢れを防ぐ「ハードウェアフロー制御」に使用される。 他にもDTR (Data Terminal Ready)、DSR (Data Set Ready)、DCD (Data Carrier Detect) といった信号線があるが、これらは主にモデムとの通信で機器の準備状態やキャリア信号の検出に用いられた。 RS-232C通信は、通常「非同期通信」で行われる。これは、データを送る際にクロック信号を別途送らず、データの始まりと終わりを示す特殊なビットを付加する方式である。具体的には、1文字(通常1バイト)のデータを送る際に、データの開始を示す「スタートビット」、実際のデータ内容を表す「データビット」(7ビットまたは8ビット)、任意でエラーチェックを行うための「パリティビット」(偶数、奇数、なし)、データの終了を示す「ストップビット」(1ビットまたは2ビット)が付加されて送信される。これらの設定(例:9600bps, 8データビット, パリティなし, 1ストップビット = 9600, 8N1)は、通信機器間で一致させる必要がある。通信速度はBaud Rate(ボーレート)で表され、一般的に9600bpsや19200bpsがよく用いられた。規格上、推奨される最大ケーブル長は15メートル程度とされており、速度が上がるほど伝送可能な距離は短くなる傾向がある。 シリアルケーブルの用途は時代と共に変化してきた。かつてはPCとモデムを接続してインターネットにダイヤルアップ接続したり、シリアルポートを持つプリンタやプロッタ、マウスなどの周辺機器と通信したりするのに不可欠な存在であった。現代では、多くのPCがRS-232Cポートを持たないため、直接的な周辺機器接続の主流からは外れたが、依然として重要な用途が存在する。 現代における主な用途は、ネットワーク機器のコンソール接続である。ルータやスイッチなどのネットワーク機器は、CLI(コマンドラインインターフェース)での設定やデバッグを行うために、専用のコンソールポート(シリアルポート)を備えていることが多い。PCからこれらの機器を操作する際、USB-シリアル変換ケーブルを介してシリアルケーブルで接続し、ターミナルエミュレータソフトウェア(Tera Term、PuTTYなど)を利用するのが一般的である。 また、産業用機器の分野では、PLC(Programmable Logic Controller)やCNC(Computer Numerical Control)といった制御機器、POSシステム、GPS受信機、バーコードリーダー、測定器など、信頼性の高いデータ伝送が求められる場面で今もRS-232Cが広く利用されている。組み込みシステムの開発においては、マイコンボードとPCを接続してデバッグ情報の出力やファームウェアの書き込みを行う際にも使われる。 シリアルケーブルには、配線の種類によって「ストレートケーブル」と「クロスケーブル(ヌルモデムケーブル)」がある。ストレートケーブルは、ケーブルの両端で同じ番号のピン同士が接続されており、DTE(データ端末装置:PC、ルータなど)とDCE(データ回線終端装置:モデムなど)といった異なる種類の機器を接続する際に使用する。一方、クロスケーブルは、送信ピンと受信ピンが互いに入れ替わるように接続されており、DTE同士やDCE同士のように、同じ種類の機器を直接接続する際に用いられる。例えば、PC同士を直接接続してデータを転送する(現在はあまり行われない)場合や、一部のネットワーク機器同士をコンソールポートで接続する場合に利用される。 現代のPCにRS-232Cポートがないことが多いため、USBポートからRS-232C通信を可能にする「USB-シリアル変換ケーブル」が広く普及している。この変換ケーブルは、USBデバイスとして認識され、内部にシリアル通信コントローラを搭載することで、仮想的なシリアルポートをPC上に生成し、従来のRS-232C機器との接続を可能にしている。これにより、レガシーな機器や産業用機器との接続互換性を確保しつつ、現代のPCでそれらを操作できる利便性を提供している。シリアルケーブルは、そのシンプルさと信頼性から、特定の分野で今後も利用され続ける重要な技術要素である。

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