シリアル通信 (シリアルツウシン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シリアル通信 (シリアルツウシン) の読み方

日本語表記

シリアル通信 (シリアルツウシン)

英語表記

serial communication (シリアルコミュニケーション)

シリアル通信 (シリアルツウシン) の意味や用語解説

シリアル通信とは、データを1ビットずつ順番に、1本の信号線を用いて送信する通信方式である。日本語では「直列通信」とも呼ばれる。コンピュータや電子機器が内部で扱うデータは、通常8ビットや16ビットといった複数のビットがひとかたまりになった「バイト」単位で処理される。このまとまったデータを、あたかも一列に並べ替えて、先頭から1ビットずつ送り出すのがシリアル通信の基本的な考え方である。この方式と対比されるのがパラレル通信(並列通信)である。パラレル通信は、データのビット数と同じ本数(例えば8ビットなら8本)の信号線を使い、複数のビットを一度にまとめて送信する。一見すると、パラレル通信の方が同時に多くの情報を送れるため高速に思えるが、現代のコンピュータ技術においてはシリアル通信が主流となっている。その理由は、シリアル通信が持つ多くの利点にある。まず、使用する信号線の数が少ないため、配線が簡素化され、ケーブルを細く、安価に製造できる。また、信号線が少ないことは、コネクタの小型化にも繋がり、機器の設計自由度を高める。さらに、長距離伝送においてパラレル通信が抱える「クロックスキュー」という、各信号線での信号到達時間のズレの問題が発生しにくいため、高速化に適している。我々の身の回りで使われているUSB、SATA、イーサネットといった多くの通信規格は、このシリアル通信の技術を基盤としている。 シリアル通信をより深く理解するためには、その通信の仕組みを知る必要がある。シリアル通信には、送信側と受信側がどのようにタイミングを合わせるかによって、大きく分けて「調歩同期方式」と「同期方式」の二つが存在する。調歩同期方式は、非同期通信とも呼ばれ、データの送受信のタイミングを合わせるためのクロック信号を必要としない。その代わり、送信するデータ本体の前後に「スタートビット」と「ストップビット」という特別な信号を付加する。受信側は、スタートビットを検出することでデータの受信を開始し、データ本体を読み取った後、ストップビットを確認することで一連のデータの受信を完了する。この方式では、送信側と受信側であらかじめ「ボーレート」と呼ばれる通信速度(1秒間に何ビット送るか)を同じ値に設定しておく必要がある。構造が単純であるため、低速な通信やマイコン間の通信で広く利用されており、古くからあるRS-232C規格が代表例である。一方、同期方式は、送信側と受信側が共通のクロック信号に同期してデータの送受信を行う。クロック信号は、データ信号とは別の専用線で送られるか、あるいはデータ信号の中に埋め込まれる。受信側はこのクロック信号のタイミングに合わせてデータを取り込むため、スタートビットやストップビットが不要となり、その分だけ効率的にデータを伝送できる。これにより、調歩同期方式よりも高速な通信が可能となるが、回路構成は複雑になる。I2CやSPI、USBといった規格がこの同期方式を応用している。 また、シリアル通信はデータの流れる方向によって三種類に分類される。一つ目は「単方向通信(シンプレックス)」で、データが一方向にしか流れない方式である。ラジオ放送のように、送信側から受信側への一方的な情報伝達に用いられる。二つ目は「半二重通信(ハーフデュープレックス)」で、双方向の通信が可能だが、送信と受信を同時に行うことはできない。トランシーバーのように、一方が話している間はもう一方は聞くことに専念し、交互に通信路を切り替えて使用する。産業用の通信規格であるRS-485などがこの方式を採用している。三つ目は「全二重通信(フルデュープレックス)」であり、送信と受信を同時に行うことができる。これは、送信用の信号線と受信用の信号線を別々に持つことで実現される。電話のように、お互いが同時に話すことができる通信であり、イーサネットやRS-232Cなどがこの方式に対応している。現代の主要なシリアル通信規格の多くは、この全二重通信をサポートし、高い通信効率を実現している。例えば、USBやSATA、イーサネットでは、ノイズの影響を打ち消し合う「差動信号」という技術を用いて、高速かつ信頼性の高い全二重通信を行っている。このように、シリアル通信は単純に1ビットずつデータを送るだけでなく、同期の取り方や通信方向の仕組み、信号の物理的な伝送方法など、様々な技術的工夫が組み合わさることで、今日の高度な情報通信社会を支える基盤技術となっているのである。

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