シリアルペリフェラルインターフェース (シリアルペリフェラルインターフェース) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
シリアルペリフェラルインターフェース (シリアルペリフェラルインターフェース) の読み方
日本語表記
シリアルペリフェラルインターフェース (シリアルペリフェラルインターフェース)
英語表記
Serial Peripheral Interface (シリアルペリフェラルインターフェース)
シリアルペリフェラルインターフェース (シリアルペリフェラルインターフェース) の意味や用語解説
シリアルペリフェラルインターフェース、一般にSPI(エスピーアイ)と略されるこの通信方式は、マイクロコントローラと各種周辺機器との間でデータをやり取りするための、非常に一般的な方法の一つである。システムエンジニアを目指す上で、組み込みシステムやIoTデバイスの設計に携わる際には、このSPIが頻繁に登場するため、その仕組みを理解しておくことは不可欠である。 SPIは、名前が示す通り「シリアル(直列)に」「ペリフェラル(周辺機器)と」「インターフェース(接続する)」ための規格である。具体的には、集積回路(IC)同士が少ない配線で高速にデータを送受信する際に用いられる。例えば、温度センサーや加速度センサーといった各種センサー、SDカードなどの記憶装置、液晶ディスプレイやLEDドライバー、アナログ-デジタル変換器(ADC)やデジタル-アナログ変換器(DAC)といった様々なデバイスが、マイクロコントローラとSPIを通じて接続され、制御されたり、データが読み書きされたりする。これは、複雑な情報を送受信するのではなく、比較的小量のデータを高速かつ確実にやり取りする場面で特に強みを発揮する。 SPI通信は、常に「マスター」と「スレーブ」という役割に分かれたデバイス間で行われる。マスターは通常、マイクロコントローラのような中央処理装置であり、通信の開始やデータの送受信を完全に制御する。一方、スレーブはセンサーやメモリチップなどの周辺機器であり、マスターからの指示に従ってデータを送受信する役割を担う。一つのマスターに対して複数のスレーブを接続することも可能である。 次に、SPIの詳細な仕組みについて解説する。SPIは「シリアル通信」の一種であり、データを1ビットずつ、直列に送る方式を取る。これに対し、多くの配線を使って複数のビットを同時に送る「パラレル通信」という方式も存在するが、SPIは配線数を減らせるメリットがある。さらに、SPIは「全二重通信」という特徴を持つ。これは、マスターからスレーブへデータを送ると同時に、スレーブからマスターへデータを受け取ることができることを意味する。同時に異なる方向にデータが流れることができるため、効率的な通信が可能となる。 SPIの最も重要な特徴の一つは、「同期通信」であることだ。同期通信とは、データだけでなく「クロック信号」と呼ばれるタイミング信号も一緒に送る方式を指す。このクロック信号は、マスターデバイスが生成し、データがいつ、どのようなタイミングで有効になるかを示す役割を果たす。これにより、送受信するデバイス間で正確なタイミングが共有され、データの取りこぼしや誤読を防ぐことができる。 SPI通信に必要な基本的な信号線は以下の4本である。 1. **SCLK (Serial Clock)**:シリアルクロック。マスターからスレーブへ送信されるタイミング信号で、データの送受信の同期を取るために使用される。この信号の立ち上がり(LowからHighへ変化)または立ち下がり(HighからLowへ変化)のタイミングで、データが読み取られる。 2. **MOSI (Master Out Slave In)**:マスターアウト・スレーブイン。マスターがスレーブへデータを送信するための信号線である。マスター側からは出力、スレーブ側からは入力となる。 3. **MISO (Master In Slave Out)**:マスターイン・スレーブアウト。スレーブがマスターへデータを送信するための信号線である。マスター側からは入力、スレーブ側からは出力となる。 4. **CS (Chip Select) または SS (Slave Select)**:チップセレクトまたはスレーブセレクト。マスターが特定のスレーブデバイスを選択し、通信を開始・終了するための信号線である。通常、この信号がLow(アクティブロー)になると、選択されたスレーブデバイスが通信可能状態となり、Highになると通信が終了または一時停止する。複数のスレーブが接続されている場合、マスターはそれぞれ異なるCS信号線を用いて、通信したいスレーブを一つだけ選択する。 データ転送の具体的な流れは以下のようになる。まず、マスターは通信したいスレーブに対応するCS信号をアクティブにする(通常はLowにする)。次に、マスターはSCLK信号を生成し始め、それに同期させてMOSI線にデータを1ビットずつ出力する。同時に、スレーブはSCLKに同期してMISO線にデータを1ビットずつ出力する。このようにして、マスターとスレーブの間で同時にデータの交換が行われる。すべてのデータの送受信が完了すると、マスターはCS信号を非アクティブにする(通常はHighに戻す)ことで、そのスレーブとの通信を終了する。 SPIのメリットとしては、まず高速なデータ転送が可能であることが挙げられる。クロック同期方式のため、複雑なデータ変換プロトコルが不要で、単純なシフトレジスタでデータの送受信が行えるため、データ転送速度を比較的容易に向上させることができる。また、全二重通信が可能であるため、効率的なデータのやり取りができる。さらに、ハードウェア的な実装が比較的シンプルであり、多くのマイクロコントローラがSPIインターフェースを内蔵しているため、容易に利用できる点も利点である。配線数が少ないため、基板上のスペースを節約し、コストを抑えることにも繋がる。 一方で、SPIにはいくつかのデメリットも存在する。まず、スレーブデバイスごとに専用のCS信号線が必要となるため、接続するスレーブの数が増えるほど、マスター側のGPIO(汎用入出力)ピンの消費が増える。極端に多くのスレーブを接続すると、マスターのピンが不足する可能性がある。また、SPIはマスターが通信を完全に制御するため、スレーブ側から自発的にマスターにデータを送信したり、マスターからのデータ要求を待ったりする以外の複雑な割り込み要求を行ったりする仕組みは標準では存在しない。通信エラー検出の機能も限定的であるため、必要に応じてソフトウェア側で追加の実装が求められる場合もある。 しかし、これらのデメリットを考慮しても、その高速性、シンプルさ、そして幅広いデバイスへの対応能力から、SPIは組み込みシステムにおいて非常に重要な役割を担うインターフェースである。多くのセンサーやメモリ、ディスプレイといった周辺機器がSPIをサポートしており、これらをマイクロコントローラと効率的に連携させる上で、SPIの理解はシステムエンジニアにとって必須の知識となるだろう。