シリアルポート (シリアルポート) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シリアルポート (シリアルポート) の読み方

日本語表記

シリアルポート (シリアルポート)

英語表記

serial port (シリアルポート)

シリアルポート (シリアルポート) の意味や用語解説

シリアルポートは、コンピュータや各種電子機器間でデータを送受信するためのインターフェースの一種である。データの伝送方式として、情報を構成するビット(0または1)を、一度に1ビットずつ、つまり「シリアル(直列)に」順番に送る特徴を持つ。かつてはパーソナルコンピュータ(PC)において、マウス、モデム、一部のプリンタなど多様な周辺機器を接続するための標準的なインターフェースとして広く普及していたが、USB(Universal Serial Bus)の登場と普及に伴い、その役割は大きく変化した。しかし、現在でも特定の分野や用途において、その堅牢性やシンプルな構造から不可欠な存在であり続けている。 その詳細な仕組みについて解説する。シリアルポートによるデータ伝送は、一般的に「非同期シリアル通信」と呼ばれる方式が用いられる。これは、データの送受信を行う機器間でクロック信号を共有せずに通信を行う方式である。データは、通常、以下のような構造(フレーム)で送信される。まず、データの開始を示す「スタートビット」が送られ、次に実際のデータ本体である「データビット」(通常7ビットまたは8ビット)が続く。データビットの後には、通信エラーの検出を目的とした「パリティビット」(オプション)が挿入されることがあり、最後にデータの終了を示す「ストップビット」(通常1ビットまたは2ビット)が送られる。このように、各データフレームの開始と終了が明示されることで、送受信側は独立したクロックを持ちながらも、正確にデータを同期させてやり取りすることが可能となる。 通信速度は「ボーレート」(bps: bits per second)で表され、送信側と受信側でこのボーレートを一致させる必要がある。シリアルポートには、データ伝送のための主要な信号線として、TxD(Transmit Data:データ送信)、RxD(Receive Data:データ受信)、GND(Ground:共通グランド)が存在する。これらに加えて、データフロー制御や機器の状態を知らせるための制御線が複数用意されていることが多い。例えば、RTS(Request To Send:送信要求)、CTS(Clear To Send:送信許可)、DTR(Data Terminal Ready:データ端末準備完了)、DSR(Data Set Ready:データセット準備完了)などがあり、これらを用いて送受信のタイミングを調整し、データのオーバーフローを防ぐ役割を果たす。 物理的なコネクタ形状としては、PCではDB-9(D-sub 9ピン)が最も一般的であり、古いシステムではDB-25(D-sub 25ピン)も使用された。現代のPCではこれらのシリアルポートが標準で搭載されていることは稀だが、USB-シリアル変換アダプタを用いることで、USBポートを介してシリアル通信を行うことが可能となっている。オペレーティングシステムからは、Windowsでは「COMポート」(例:COM1、COM2)、Linuxでは「デバイスファイル」(例:/dev/ttyS0、/dev/ttyUSB0)といった形で抽象化され、アプリケーションから容易にアクセスできる。 シリアルポートの現代における主要な用途は多岐にわたる。最も代表的なものの一つは、ネットワーク機器(ルータ、スイッチ、ファイアウォールなど)やサーバの「コンソール接続」である。これらの機器の初期設定やトラブルシューティングを行う際に、専用のコンソールケーブル(多くはRJ45-シリアル変換)を介してPCと接続し、ターミナルエミュレータソフトウェア(Tera TermやPuTTYなど)を用いてコマンドラインインターフェースにアクセスする。また、産業用制御システムにおいても広く利用されている。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やFA(ファクトリーオートメーション)機器、各種センサー、組み込みシステムなどとのデータ通信に用いられ、その堅牢性やシンプルさから過酷な環境下でも安定した通信を実現する。POS(販売時点情報管理)システムにおけるバーコードリーダーやレシートプリンタ、GPSデバイスからの測位データ出力、さらには組み込みシステムのデバッグやファームウェアアップデートなど、その利用シーンは非常に幅広い。 シリアルポートは、高速データ転送が求められる用途ではUSBやEthernetに劣るものの、比較的少ない配線で長距離伝送が可能であり、データレートがそれほど高速でなくても問題ないシステムにおいては、コスト効率と信頼性に優れた通信手段として今後も重要な役割を担い続ける。その歴史的背景と現代における特定のニーズへの適合性から、システムエンジニアを目指す者にとって、シリアルポートの基本的な理解は不可欠である。

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