シリアルプリンタ (シリアルプリンタ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
シリアルプリンタ (シリアルプリンタ) の読み方
日本語表記
シリアルプリンタ (シリアルプリンタ)
英語表記
serial printer (シリアルプリンター)
シリアルプリンタ (シリアルプリンタ) の意味や用語解説
シリアルプリンタは、コンピュータから送られてくるデータを「シリアル転送」という方式で受け取り、印刷を行うプリンタの一種である。データの転送方式が名称の由来となっている。今日のビジネス環境で主流となっているレーザープリンタやインクジェットプリンタがページ単位の高速印刷や高精細な画像印刷を得意とするのに対し、シリアルプリンタは一般に、文字単位で情報を印字し、特に事務処理における伝票印刷や複写紙への印刷など、特定の用途で現在も利用されている。その多くは、ドットインパクト方式という印刷方式を採用しており、ヘッドのピンがインクリボンを叩いて紙にインクを転写することで文字や画像を形成する。古くから存在する技術だが、その堅牢性やコスト効率、複写能力から、特定の業務分野では代替が困難な重要な機器として位置づけられている。 シリアル転送方式とは、データを1ビットずつ、つまり「直列」に順番に送る方式を指す。これは、複数のビットを同時にまとめて送る「パラレル転送」方式と対比される。シリアル転送は、必要な信号線の数が少なく、比較的長い距離でもデータの伝送が安定しやすいという利点を持つ。かつてコンピュータと周辺機器を接続するインターフェースとしてRS-232C(シリアルポート)が広く使われており、シリアルプリンタもこのインターフェースを通じて接続されることが多かった。現代ではUSBやイーサネット(ネットワーク)による接続も増えているが、内部的なデータ処理方式や互換性の観点から「シリアル」の名を冠している。 シリアルプリンタの多くが採用するドットインパクト方式は、小さな針(ピン)が多数並んだプリントヘッドが、インクリボンを介して用紙を叩き、インクを転写することで文字や画像を形成する仕組みだ。この方式は、ピンの衝撃によってインクを紙に押し付けるため、通常の紙だけでなく、カーボン複写紙のような複数枚の伝票を一気に印刷する用途に非常に適している。プリントヘッドが左右に移動しながら1行ずつ印字していくため、印刷速度はページ単位ではなく、1秒あたりの文字数(CPS: Characters Per Second)で表されることが多い。印刷品質は、一般的なオフィス文書や画像印刷を目的としたレーザーやインクジェットプリンタに比べると粗く、特にグラフィック印刷には不向きである。しかし、文字の視認性には問題なく、重要な情報が記載された帳票や伝票の印刷には十分対応できる。 この方式のプリンタは、比較的騒音が大きいという欠点があるものの、インクリボンというシンプルな消耗品を使用するため、ランニングコストが非常に低いというメリットがある。また、構造が堅牢であり、粉塵の多い工場や物流倉庫など、厳しい環境下での使用にも耐えうる耐久性を持つ。用紙は通常、連続用紙(トラクタフィーダを用いて搬送される穴の開いた用紙)が使われることが多いが、単票(一枚ずつ給紙する通常の用紙)に対応した製品も存在する。特に複写伝票の印刷においては、多枚数複写(最大で8枚程度)に対応できる点が、他のプリンタでは実現困難な重要な機能となる。インクジェットやレーザープリンタは用紙の表面にインクやトナーを定着させる方式であるため、物理的な圧力をかけて複数枚に同時に印刷することは不可能だからだ。 現代において、シリアルプリンタの新規導入は減少傾向にあるものの、金融機関の窓口業務、物流業界における配送伝票の発行、製造業における製造指示書や管理伝票の印刷など、特定の業務領域ではその特性が不可欠であり、現在も多くの現場で利用され続けている。既存の基幹システムがシリアルプリンタの出力フォーマットを前提としているケースも多く、システムの移行コストや運用上の安定性を考慮すると、最新のプリンタに置き換えることが難しい場合がある。そのため、ITシステムを構築・運用するシステムエンジニアにとって、シリアルプリンタの特性や接続方式、運用上の注意点を理解しておくことは、レガシーシステムを含む幅広いITインフラを扱う上で依然として重要である。この種のプリンタは、その技術的な特徴と運用上の利点が結びつき、特定のニッチな市場で確固たる地位を維持していると言えるだろう。