サーバブレード (サーバブレード) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
サーバブレード (サーバブレード) の読み方
日本語表記
サーバブレード (サーバブレード)
英語表記
server blade (サーバーブレード)
サーバブレード (サーバブレード) の意味や用語解説
サーバブレードは、データセンターにおけるサーバの物理的な形態の一つであり、特に省スペース、高密度、効率的な管理を実現するために設計されたモジュラー型のサーバである。一般的なラックマウントサーバが単体で全ての構成要素(電源、冷却、ネットワークなど)を持つ独立したコンピュータであるのに対し、サーバブレードは最小限のコンピューティングリソース(CPU、メモリ、ディスク)のみを搭載し、電源、冷却、ネットワーク、ストレージといった共通のインフラは「エンクロージャ」と呼ばれる専用の筐体で複数のブレードと共有する構造が特徴である。この設計により、限られたスペースに多数のサーバを集積することが可能となり、データセンターの床面積を有効活用し、物理的なケーブル配線を大幅に削減できる。また、共有インフラによる集中管理は、運用コストの削減と効率的なリソース利用を促進する。仮想化技術との相性が非常に良く、仮想化基盤を構築する際の物理サーバとして広く採用されている。これは、個々のブレードが仮想マシンを稼働させるための計算リソースを提供し、エンクロージャがそれら全体を統合的に管理・供給する構造が、大規模な仮想化環境の運用に適しているためである。 サーバブレードシステムは、薄型のボード状コンピュータである「ブレードサーバ」と、そのブレードを複数収容する「エンクロージャ」、そしてエンクロージャ内部でブレードに供給される共有インフラストラクチャで構成される。ブレードサーバ自体は、CPU、メモリ、および必要に応じて少量の内蔵ストレージ(SSDなど)を搭載した最小限のサーバモジュールであり、通常はホットプラグに対応しているため、システム全体の稼働を停止させることなく交換や増設が可能である。 エンクロージャは、ブレードサーバを物理的に収納するだけでなく、システム全体の安定稼働に不可欠な共有コンポーネントを提供する。まず、電源ユニット(PSU)は複数のブレードサーバに対して電力を供給し、通常は冗長構成(例えば2+1やN+1など)となっており、いずれかのPSUが故障してもシステム全体の電力供給が途絶えないように設計されている。これにより、高い可用性を確保する。冷却ファンもエンクロージャに集約されており、全てのブレードサーバを効率的に冷却する。これにより、個々のブレードが独自の冷却システムを持つ必要がなくなり、省スペース化と冷却効率の向上が図られる。 ネットワーク接続に関しても、エンクロージャは内部にイーサネットスイッチやファイバーチャネルスイッチなどのネットワークモジュールを内蔵し、各ブレードサーバからのネットワークケーブルを集約して外部ネットワークへ接続する。これにより、ブレードサーバごとに個別のネットワークケーブルを配線する必要がなくなり、背面配線が大幅に簡素化され、ケーブルの絡まりや管理の複雑さを解消する。外部ストレージ(SANやNASなど)への接続も、エンクロージャ内のストレージコントローラやネットワークスイッチを介して行われることが一般的であり、ブレードごとにストレージI/Oカードを用意する必要性を低減する。 システム管理の面では、エンクロージャに搭載された管理モジュールが非常に重要な役割を果たす。この管理モジュールは、各ブレードサーバの稼働状況の監視、電源のオン/オフ、ファームウェアの更新、OSのインストール、さらにはKVM over IPによるリモートコンソールアクセスなど、システム全体のライフサイクル管理を一元的に行うためのインターフェースを提供する。これにより、多数の物理サーバを個別に管理する手間が省け、運用管理者の負担を大幅に軽減し、インフラ運用の自動化や効率化を促進する。 サーバブレードシステムの最大の利点は、その高密度実装能力にある。一般的なラックマウントサーバと比較して、同じラックユニット数により多くのサーバを収容できるため、データセンターの床面積を最大限に活用できる。これは、物理的なフットプリントの削減だけでなく、不動産コストや空調コストの削減にも繋がる。また、共有インフラストラクチャの採用は、消費電力の削減にも貢献する。個々のサーバが独立した電源や冷却システムを持つ場合に比べて、共有することで電力変換効率が向上し、アイドル時の消費電力も抑えられるため、全体としての電力効率が高まる。これにより、データセンターのPUE(Power Usage Effectiveness)値の改善にも寄与する。 ケーブル配線の簡素化も大きなメリットである。ブレードシステムでは、数多くのブレードサーバからのネットワーク、ストレージ、電源ケーブルがエンクロージャ内部で集約されるため、ラック背面の配線が劇的に少なくなる。これにより、配線ミスのリスクが減り、トラブルシューティングが容易になり、見た目もすっきりする。拡張性も高く、必要に応じて新しいブレードをエンクロージャに追加するだけで、計算リソースを増強できる。これは、ビジネス要件の変化に迅速に対応できるという柔軟性を提供する。 一方で、ブレードシステムにはいくつかの考慮点も存在する。初期導入コストは、エンクロージャや共有インフラの分だけ、同等スペックのラックマウントサーバを単体で導入する場合よりも高くなる傾向がある。また、特定のベンダーのエンクロージャとブレードサーバの組み合わせに依存するため、一度導入すると他のベンダーの製品に切り替えにくいというベンダーロックインのリスクも存在する。エンクロージャが単一障害点となる可能性もあるが、これは前述の通り、電源やネットワークモジュールなどの主要コンポーネントを冗長化することで対処される。さらに、個々のブレードサーバが持つ内蔵ストレージ容量は限られていることが多く、大規模な内部ストレージを必要とするアプリケーションには適さない場合がある。しかし、これは多くの場合、共有ストレージシステム(SAN/NAS)と連携することで解決される。 サーバブレードは、特に大規模な仮想化環境、クラウドインフラストラクチャ、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)など、高密度な計算リソースと効率的な管理が求められる環境でその真価を発揮する。これにより、企業はITインフラの運用コストを削減しつつ、高い可用性と拡張性を実現できるのである。