サーバ負荷分散 (サーバフカブンサン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
サーバ負荷分散 (サーバフカブンサン) の読み方
日本語表記
サーバ負荷分散 (サーバフカブンサン)
英語表記
Server Load Balancing (サーバーロードバランシング)
サーバ負荷分散 (サーバフカブンサン) の意味や用語解説
サーバ負荷分散とは、複数のサーバを使って、クライアントからの大量のリクエストや処理要求を均等に、あるいは最適な方法で振り分ける技術のことである。これは、Webサイトやアプリケーションなどのシステムにおいて、一つのサーバに処理が集中しすぎて性能が低下したり、最悪の場合サービスが停止してしまったりするのを防ぐために不可欠な仕組みである。サーバ負荷分散を導入することで、システムの安定稼働、処理性能の向上、そして将来的なアクセス増加への柔軟な対応が可能となる。 この技術の主な目的は大きく三つある。一つは「パフォーマンスの向上」であり、多数の要求を複数のサーバで並行して処理することで、個々の処理速度を維持し、全体としての応答性を高める。次に「高可用性の確保」であり、もしもサーバ群の中のどれか一つが故障した場合でも、残りの健全なサーバが処理を引き継ぐことで、サービスが停止することなく継続できる状態を保つ。そして最後に「スケーラビリティの確保」であり、アクセスが増加しても、サーバを追加するだけで容易に対応できるようになる。 サーバ負荷分散を具体的に実現するためには、「ロードバランサ」と呼ばれる装置やソフトウェアが中心的な役割を果たす。ロードバランサは、クライアントからシステムへの最初のリクエストを受け取り、その後ろに配置された複数のサーバの中から、処理能力や現在の負荷状況などを考慮して最適なサーバを選択し、そのサーバにリクエストを転送する。選択されたサーバはリクエストを処理し、その結果をロードバランサを経由してクライアントに返す。これにより、クライアントは複数のサーバが存在することを意識することなく、あたかも一つの高性能なサーバにアクセスしているかのようにサービスを利用できる。 ロードバランサがサーバを選択する際の「分散方式(アルゴリズム)」にはいくつかの種類がある。最も基本的なものとして「ラウンドロビン」がある。これは、サーバ群に対してリクエストを順番に割り当てていく方式で、シンプルだが各サーバの処理能力に大きな差がない場合に有効である。また、「最小コネクション数」方式は、現在アクティブな接続数が最も少ないサーバにリクエストを割り当てることで、より均等な負荷分散を目指す。さらに、各サーバの性能が異なる場合に、その性能差を考慮して重み付けを行い、高性能なサーバにはより多くのリクエストを割り当てる「重み付けラウンドロビン」や「重み付け最小コネクション数」といった方式も存在する。クライアントのIPアドレスに基づいて常に同じサーバにリクエストを転送する「IPハッシュ」方式は、後述するセッション維持の課題を解決する手段としても利用される。 ここで重要なのが「セッション維持(スティッキーセッションまたはセッションパーシステンス)」という概念である。Webアプリケーション、特にECサイトのショッピングカートやログイン状態など、特定のクライアントが複数のリクエストにわたって同じサーバで処理を継続する必要がある場合がある。もし途中で別のサーバに振り分けられてしまうと、それまでの状態情報が失われ、例えばカートの中身が空になってしまったり、再度ログインを求められたりする不都合が生じる。ロードバランサは、クライアントのIPアドレス、Cookie情報、またはSSLセッションIDなどを基に、一度特定のサーバに振り分けたクライアントからの後続のリクエストも、できる限り同じサーバに転送するように制御できる機能を持つ。 また、ロードバランサは「ヘルスチェック」と呼ばれる機能も備えている。これは、ロードバランサがバックエンドの各サーバに対して定期的に死活監視やアプリケーションレベルの応答状況を確認する機能である。もし、あるサーバが応答しない、あるいはエラーを返すなどの異常を検知した場合、ロードバランサはそのサーバを一時的に振り分け対象から外し、健全なサーバのみにリクエストを転送する。これにより、故障したサーバにリクエストが送られて処理が滞ることを防ぎ、システム全体の安定稼働に大きく貢献する。障害から復旧したサーバは、ヘルスチェックによって正常と判断されれば、自動的に振り分け対象に戻される。 サーバ負荷分散の導入は、システムに多くのメリットをもたらす。まず、前述した通り高い可用性が確保され、一部のサーバ障害がサービス停止に直結する単一障害点のリスクを軽減できる。次に、アクセス増加時にサーバを水平に拡張(スケールアウト)するだけで対応できるため、高いスケーラビリティを実現する。これにより、急なアクセス増にも柔軟に対応し、システムの性能低下を防ぐことが可能となる。また、複数のサーバで処理を分担することで、個々のサーバの負荷を低減し、全体の応答速度や処理能力を向上させる。さらに、運用面でもメリットがあり、稼働中のサービスを停止させることなく、特定のサーバのメンテナンスやバージョンアップ作業を行うことも可能になる。 一方で、考慮すべき点も存在する。ロードバランサ自体が単一障害点にならないよう、ロードバランサ自体も冗長構成にする必要がある。また、どの分散方式を選択するかは、アプリケーションの特性やサーバの構成によって慎重に検討しなければならない。セッション維持の課題も、アプリケーション設計とロードバランサの機能の両面から適切に解決する必要がある。さらに、ロードバランサの導入や複数のサーバを運用することによるコスト増加も考慮に入れるべき重要な要素である。しかし、これらの課題を適切に管理することで、サーバ負荷分散は現代のWebサービスやクラウドインフラストラクチャを支える基盤技術として、その価値を最大限に発揮する。