セッションID (セッションアイディー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
セッションID (セッションアイディー) の読み方
日本語表記
セッション識別子 (セッションシキベツシ)
英語表記
Session ID (セッションアイディー)
セッションID (セッションアイディー) の意味や用語解説
セッションIDとは、Webサーバーが特定のWebブラウザからの連続したアクセスを識別するために発行する、一意の識別子である。これは、Webアプリケーションがユーザーごとの状態を維持するために不可欠な技術要素である。Webの基盤となるHTTPプロトコルは、本質的にステートレスな性質を持つ。ステートレスとは、サーバーがクライアントからのリクエストをそれぞれ独立したものとして扱い、過去のリクエスト内容を記憶しない特性を指す。このため、HTTPだけでは、あるリクエストと次のリクエストが同じユーザーからのものであるかをサーバー側で判断することができない。例えば、オンラインショッピングサイトで商品をカートに入れる操作と、その後に購入手続きに進む操作は、別々のリクエストとしてサーバーに送信される。ステートレスな環境では、サーバーはこれらが同一人物による一連の操作であることを認識できず、ユーザーは正常に買い物を続けることができない。この問題を解決するのがセッション管理であり、その中心的な役割を担うのがセッションIDである。サーバーは、ユーザーの最初のアクセス時にユニークなセッションIDを生成し、それをユーザーのブラウザに渡す。ブラウザは以降の通信でそのセッションIDをサーバーに提示し続ける。サーバーは受け取ったセッションIDを手がかりに、どのユーザーからのリクエストであるかを特定し、カートの中身やログイン状態といった情報を維持することが可能になる。 セッション管理の具体的な仕組みは次の通りである。まず、ユーザーがWebサイトに初めてアクセスすると、Webサーバー上で新しいセッションが開始される。このとき、サーバーは他のセッションIDと重複しない、推測困難なランダムな文字列としてセッションIDを生成する。そして、サーバーのメモリやデータベース上に、このセッションIDと紐付いたデータ保存領域(セッションストレージ)を確保する。ここに、ユーザーのログイン情報やカートの商品リストなどの情報が保存される。次に、生成されたセッションIDは、HTTPレスポンスを通じてユーザーのWebブラウザに送信される。ブラウザは受け取ったセッションIDを保管し、同じWebサイトに対して次にリクエストを送信する際に、保管しておいたセッションIDをHTTPリクエストに含めて送信する。リクエストを受け取ったサーバーは、含まれているセッションIDを読み取り、サーバー側のセッションストレージから該当するデータを探し出す。これにより、サーバーはユーザーを識別し、過去の操作の続きとして処理を行うことができる。 セッションIDの受け渡し方法として最も一般的に用いられるのは、HTTP Cookieである。サーバーはHTTPレスポンスの`Set-Cookie`ヘッダにセッションIDを含めて送信し、ブラウザはこれをCookieとして保存する。その後、ブラウザは同一ドメインへのリクエスト時に、自動的にHTTPリクエストの`Cookie`ヘッダにそのセッションIDを付与して送信するため、開発者が意識することなくセッションIDのやり取りが実現できる。Cookieが利用できない環境では、URLリライティングという手法が用いられることもある。これは、セッションIDをURLの末尾にクエリパラメータとして付加する方法である。しかし、この方法はURLがブックマークされたり、他人に共有されたりするとセッションIDが漏洩するリスクがあり、セキュリティ上の観点から現在ではあまり推奨されない。 セッションIDは、ユーザーの認証状態を維持するための重要な情報であるため、その取り扱いには細心の注意が必要である。セッションIDが第三者に漏洩すると、その第三者が正規のユーザーになりすます「セッションハイジャック」という攻撃が可能になる。これを防ぐため、セッションIDは十分に長く、かつ暗号論的に安全な乱数生成器を用いて、推測不可能な文字列として生成されなければならない。また、攻撃者が事前に用意したセッションIDをユーザーに強制的に使用させ、ユーザーがログインした後にそのセッションを乗っ取る「セッション固定化攻撃」も存在する。この攻撃への対策として、ユーザーがログインに成功したタイミングなど、権限レベルが変化する際には、必ず現在のセッションを破棄し、新しいセッションIDを再発行することが極めて重要である。 さらに、通信経路上での盗聴を防ぐため、Webサイト全体をHTTPSで暗号化することが必須である。Cookieに`Secure`属性を付与すれば、そのCookieはHTTPS通信でのみ送信されるようになり、安全性が高まる。加えて、クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃によって、ブラウザ上で実行された不正なスクリプトがセッションIDを盗み出す脅威も存在する。この対策として、Cookieに`HttpOnly`属性を付与し、JavaScriptからのCookieへのアクセスを禁止することが有効である。セッションには有効期限を設定することもセキュリティ対策の一つである。ユーザーが一定時間操作しなかった場合にセッションを自動的に無効にするタイムアウト処理や、ブラウザを閉じたタイミングでセッションを終了させる仕組みを導入することで、万が一セッションIDが漏洩した場合でも、不正利用されるリスクを時間的に限定することができる。これらのセキュリティ対策を適切に講じることで、セッションIDを用いた安全なWebアプリケーションを構築することが可能となる。