セッション鍵 (セッションキー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セッション鍵 (セッションキー) の読み方

日本語表記

セッション鍵 (セッションキー)

英語表記

session key (セッションキー)

セッション鍵 (セッションキー) の意味や用語解説

セッション鍵とは、コンピュータとコンピュータが通信を行う際、特定の「セッション」、つまり接続が確立されてから切断されるまでの一連の通信の間だけ使用される、一時的な暗号化鍵のこと。この鍵は、通信の内容が第三者に盗み見られないように暗号化したり、通信内容が途中で改ざんされていないことを確認したりするために用いられる。一度セッションが終わるとその鍵は破棄され、二度と使われることはないため、万が一鍵が漏洩したとしてもその影響範囲を限定し、セキュリティリスクを最小限に抑える役割を担っている。 セッション鍵の主要な役割は、通信の機密性と完全性を確保することにある。機密性とは、通信している当事者以外には通信内容が漏洩しないようにすることであり、セッション鍵を用いて通信データを暗号化することで、悪意のある第三者による盗聴を防ぐ。完全性とは、通信内容が途中で改ざんされていないことを保証することであり、セッション鍵はメッセージ認証コード(MAC)などの生成にも利用され、データが送信されてから受信されるまでの間に不正に変更されていないかを検知する役割も担う。なぜ一時的な鍵が必要なのかというと、もし長期間にわたって同じ鍵を使い続けた場合、その鍵が一度でも漏洩してしまうと、過去から未来にわたる全ての通信が危険にさらされることになるためである。セッションごとに異なる鍵を生成し、使用することで、特定のセッションの鍵が漏洩しても、他のセッションや将来のセッションの通信には影響が及ばず、被害の範囲を限定できる。これはセキュリティリスクを軽減するための極めて重要な戦略である。 セッション鍵は、通信を開始する前にクライアント(例えばウェブブラウザ)とサーバー(例えばウェブサイトのサーバー)の間で安全に確立される。このプロセスは「鍵交換」と呼ばれる。共通鍵暗号方式は、暗号化と復号化に同じ鍵を使用し、高速であるという利点がある一方で、事前に鍵を安全に共有しておく必要があるという「鍵配送問題」を抱えている。そこで、セッション鍵の安全な共有には、公開鍵暗号方式やDiffie-Hellman鍵交換アルゴリズムといった技術が利用される。例えば、ウェブのセキュリティプロトコルであるTLS(Transport Layer Security)/SSL(Secure Sockets Layer)のハンドシェイク過程では、クライアントとサーバーが互いに公開鍵を交換したり、Diffie-Hellmanパラメータを交換したりして、最終的に両者だけが知るセッション鍵を生成する。この際、公開鍵暗号方式はセッション鍵そのものを暗号化して相手に送るために使われることもあれば、セッション鍵を導出するための秘密情報を安全に交換するために使われることもある。重要なのは、通信路を盗聴している第三者がこの鍵交換プロセスを傍受しても、セッション鍵を特定できないようにすることである。 セッション鍵が安全に確立されると、その後の実際のデータ通信(例えば、ウェブサイトの閲覧情報やオンラインショッピングでの個人情報など)は、このセッション鍵を使って共通鍵暗号方式で暗号化される。共通鍵暗号方式は、公開鍵暗号方式に比べて処理速度が非常に速いため、大量のデータを高速にやり取りするのに適している。通信データは送信側でセッション鍵を使って暗号化され、受信側では同じセッション鍵を使って復号化される。これにより、通信途中でデータが傍受されても、その内容を読み取られることはない。また、セッション鍵はメッセージ認証コード(MAC)の生成にも使われ、データに付加されることで、受信側でデータが改ざんされていないことを確認できる。 セッション鍵は、文字通り「セッション」の間にのみ有効である。通常、クライアントとサーバー間の接続が切断されると、そのセッション鍵は破棄され、再利用されることはない。次に同じクライアントとサーバーが通信を開始する際には、改めて新しいセッション鍵が生成される。さらに高度なセキュリティ要件を持つシステムでは、一つのセッション内であっても、ある一定の時間やデータ量ごとにセッション鍵を更新することがある。これを「鍵の再ネゴシエーション」と呼ぶ。これにより、万が一、現在のセッション鍵が何らかの理由で漏洩したとしても、その鍵で暗号化されたデータは、鍵が更新されるまでのごく一部の通信に限られ、それ以前やそれ以降の通信は保護される。このような特性を「前方秘匿性(Forward Secrecy)」と呼ぶ。前方秘匿性とは、長期的に使用される秘密鍵が将来漏洩した場合でも、その鍵が過去に確立したセッション鍵を解読するのに使われることがないという性質であり、セッション鍵が一時的であることと、その生成方法によって保証される。 セッション鍵は、現代のインターネット通信における様々なセキュリティプロトコルで中心的な役割を果たす。最も代表的な例は、先述のTLS/SSLである。HTTPS(HTTP Secure)通信は、TLS/SSLの上で動作するため、ウェブブラウザとウェブサーバー間の全ての通信はセッション鍵によって暗号化されている。その他にも、リモートサーバーへの安全な接続を提供するSSH(Secure Shell)プロトコルや、企業ネットワークへの安全なリモートアクセスを可能にするVPN(Virtual Private Network)プロトコルなどでも、セッション鍵が利用され、安全な通信路が確立されている。これらのプロトコルは、セッション鍵を使用することで、通信データの盗聴、改ざん、なりすましを防ぎ、ユーザーに安全なデジタル環境を提供している。

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