セッション層 (セッションソウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セッション層 (セッションソウ) の読み方

日本語表記

セッション層 (セッションソウ)

英語表記

Session Layer (セッションレイヤー)

セッション層 (セッションソウ) の意味や用語解説

セッション層は、OSI参照モデルにおいて第5層に位置する。この層の主要な役割は、ネットワーク上で通信を行う二つのアプリケーションやプロセス間の「対話」(セッション)を確立し、維持し、そして適切に終了させることである。例えるなら、電話での会話において、電話をかける人が「もしもし」と呼び出し、相手が「はい」と応答して会話が始まり、話が終わり次第「さようなら」と言って電話を切る一連の流れを管理するようなものと捉えることができる。セッション層は、単なるデータ転送以上の、論理的な会話の流れを制御することで、アプリケーションが効率的かつ信頼性高く情報を交換できる基盤を提供する。 具体的には、セッション層は、アプリケーションが特定の目的のために一連のデータ交換を行う際、その全体を一つのまとまりとして管理する。ユーザーがウェブサイトにログインして複数のページを閲覧したり、データベースに問い合わせを行って複数の結果を受け取ったりするような一連の操作は、セッション層が管理するセッションの概念に基づいている。この層が存在することで、通信を行う両者が互いの存在を認識し、対話の状況を共有しながらスムーズに通信を進めることが可能になる。 セッション層の機能は多岐にわたる。まず、セッションの確立時には、通信を開始したいアプリケーションが相手に接続を要求し、相手側がその要求を受け入れることでセッションが開始される。このプロセスには、通信相手の識別や、場合によってはユーザーの認証(例:ログイン情報の確認)やアクセス許可の検証が含まれることもある。セッションが一度確立されると、そのセッションが終了するまで、アプリケーションは相手との間で連続した情報交換を行うことができる。 セッションが確立された後、セッション層は通信の維持と管理を担当する。これは、通信が途中で途切れることなく継続されるように、またもし中断した場合でも適切な方法で再開できるようにするための重要な機能である。例えば、長時間のデータ転送中にネットワーク障害が発生した場合、セッション層は「チェックポイント」と呼ばれる地点を定期的に記録しておくことで、通信が中断しても最初からやり直すのではなく、最後に到達したチェックポイントから効率的に再開できるようにする。これにより、大規模なデータ処理やファイル転送の信頼性が高まる。また、セッション層は対話の制御も行う。これは、通信を行う両者のどちらがいつデータを送信するかの権利を管理することで、データの衝突を防ぎ、通信の秩序を保つ機能である。具体的には、全二重通信(同時に双方向のデータ送信が可能)や半二重通信(交互に片方向のデータ送信が可能)といった異なる対話モードの選択と、そのモードでのデータ送信権の管理をセッション層が行う。 セッションが終了する際には、セッション層は通信の両端にセッションの終了を通知し、関連するリソース(メモリや通信経路など)を解放する。これは、正常なセッション終了時だけでなく、エラーが発生した場合や、通信が一定時間行われない場合に自動的に終了するタイムアウト時にも適用される。これにより、ネットワークリソースの無駄な占有を防ぎ、システム全体の効率性を保つことができる。 セッション層は、OSI参照モデルの下位層であるトランスポート層が提供する信頼性のあるデータ転送サービスの上に構築される。トランスポート層は、個々のデータパケットの送受信における信頼性(順序保証、エラー訂正、フロー制御など)を担当するが、アプリケーション間の「対話全体」の管理までは行わない。セッション層は、トランスポート層が確立した「点から点への接続」を利用して、より高レベルな「アプリケーション間の論理的な会話」を管理することで、アプリケーションが自身の機能に集中できるようにする。一方、上位層であるプレゼンテーション層は、データの表現形式の変換(例:異なる文字コード間の変換)や、データの暗号化・復号化といった、データの内容そのものに関する処理を担当する。セッション層は、プレゼンテーション層が扱うデータを、対話の流れのどこでどのようにやり取りするかを制御する役割を担う。 現代の多くのインターネットプロトコルスタック(特にTCP/IPモデル)においては、OSI参照モデルのセッション層の機能が、明確な形で独立した層として実装されていることは少ない。その機能の多くは、アプリケーション層のプロトコル(例えば、HTTPにおけるCookieやセッションIDを用いた状態管理)や、トランスポート層(TCPにおける接続管理)に統合されているのが一般的である。しかし、リモートプロシージャコール (RPC) のような、複数の要求と応答が連続する複雑な対話を必要とするシステムでは、セッション層の概念が明確に存在し、その機能を活用している。また、かつてはNetBIOS (Network Basic Input/Output System) やADSP (AppleTalk Data Stream Protocol) など、セッション層に直接対応するプロトコルが存在したが、これらは今日の主流のインターネット環境ではあまり使われなくなった。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、セッション層は直接的にプログラミングや設定で意識する機会が少ないかもしれない。しかし、Webアプリケーションにおけるユーザーセッションの維持や、分散システムにおけるプロセス間通信など、多くの重要な機能の背後には、セッション層の概念が深く関わっていることを理解することは、ネットワーク通信全体の仕組みを深く理解する上で非常に重要である。セッション層は、アプリケーションがネットワーク上で円滑に対話を行うための「舞台監督」のような役割を果たし、通信の開始から終了までを一貫して管理することで、アプリケーションの信頼性と効率性を支えている。

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