シェーカーソート (シェーカーソート) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シェーカーソート (シェーカーソート) の読み方

日本語表記

シェーカーソート (シェーカーソート)

英語表記

Shaker sort (シェーカーソート)

シェーカーソート (シェーカーソート) の意味や用語解説

シェーカーソートは、配列の要素を大小の順に整列させるソートアルゴリズムの一つである。これはバブルソートの改良版として知られており、カクテルソートや双方向バブルソートとも呼ばれることがある。バブルソートが要素の比較と交換を一方向にのみ、例えば常に先頭から末尾へ向かって行うのに対し、シェーカーソートは配列の先頭から末尾へ、そして末尾から先頭へと、双方向に走査しながら要素を適切な位置に移動させる点が最大の特徴である。 この双方向の走査により、配列の片方の端に偏った位置にある要素、例えばほとんど整列済みの配列の末尾に極端に小さな値があるような場合でも、バブルソートよりも早くその要素を正しい位置に移動させることが可能になる。これにより、一部のケースではバブルソートよりも効率が向上するが、その基本的な計算量はO(n^2)であり、これはデータ量nが増えるにつれて処理時間が要素数の二乗に比例して急激に増加することを意味する。したがって、大規模なデータ集合のソートには不向きである。しかし、シェーカーソートは安定ソートであり、同じ値を持つ複数の要素が存在する場合でも、ソート前のそれらの相対的な順序がソート後も保持されるという特性を持つ。 シェーカーソートの動作原理は、まず配列の先頭(左端)から末尾(右端)に向かって走査を開始する。この走査では、隣接する二つの要素を比較し、もし前の要素が後ろの要素より大きい場合はそれらを交換する。このプロセスを配列の末尾まで続けることで、その時点での最大値が配列の最も右端(ただし、すでに整列済みと判断された範囲のすぐ左)に配置される。これはバブルソートの一回のパスと同じ動作である。 次に、方向を反転させ、配列の末尾から先頭に向かって走査を行う。ここでも同様に隣接する二つの要素を比較し、もし前の要素が後ろの要素より大きい場合はそれらを交換する。この走査により、その時点での最小値が配列の最も左端(ただし、すでに整列済みと判断された範囲のすぐ右)に配置される。 これらの双方向の走査を交互に繰り返す。各走査の終了時には、それぞれ最大値と最小値がそれぞれの端に固定されるため、次回の走査ではその固定された要素を比較対象から外すことができる。具体的には、左から右への走査では右端のソート済み部分を、右から左への走査では左端のソート済み部分をそれぞれ無視し、走査範囲を内側に向かって徐々に狭めていく。このプロセスは、ある走査パスで一度も要素の交換が発生しなくなるまで続けられる。一度も交換が発生しないということは、配列が完全にソート済みであることを意味するからである。 例えば、配列 [5, 1, 4, 2, 8] を昇順にソートする場合を考える。 1. **左から右への走査 (1回目)**: * (5, 1) を比較・交換 -> [1, 5, 4, 2, 8] * (5, 4) を比較・交換 -> [1, 4, 5, 2, 8] * (5, 2) を比較・交換 -> [1, 4, 2, 5, 8] * (5, 8) を比較・交換しない -> [1, 4, 2, 5, 8]。この時点で最大値 8 が配列の右端に固定される。走査範囲の右端は 8 の手前までとなる。 2. **右から左への走査 (1回目)**: * (5, 2) を比較・交換しない -> [1, 4, 2, 5, 8] * (4, 2) を比較・交換 -> [1, 2, 4, 5, 8] * (1, 2) を比較・交換しない -> [1, 2, 4, 5, 8]。この時点で最小値 1 が配列の左端に固定される。走査範囲の左端は 1 のすぐ右からとなる。 3. **左から右への走査 (2回目)**: * 走査範囲は [2, 4, 5] となる。 * (2, 4) を比較・交換しない -> [1, 2, 4, 5, 8] * (4, 5) を比較・交換しない -> [1, 2, 4, 5, 8]。この時点で 5 が右から2番目に固定される。 4. **右から左への走査 (2回目)**: * 走査範囲は [2, 4] となる。 * (2, 4) を比較・交換しない -> [1, 2, 4, 5, 8]。この時点で 2 が左から2番目に固定される。 5. この時点で配列は完全にソート済み [1, 2, 4, 5, 8] となっている。次回の走査で交換が発生しなければ、ソート完了と判断される。 シェーカーソートの計算量は、最悪の場合および平均の場合でO(n^2)となる。これは、配列の要素数nが増加すると、必要な比較と交換の回数がnの二乗に比例して増えることを意味する。例えば、1000個の要素をソートする場合、約100万回程度の基本操作(比較や交換)が必要になる可能性がある。しかし、配列が既にソート済みである最良の場合の計算量はO(n)となる。これは、一度の全走査で交換が発生しないことを確認するだけでソート完了と判断できるためである。また、配列がほぼソート済みである場合や、逆順にソートされているが極端な値が端にある場合には、バブルソートよりも高速に動作することがある。特に、配列の片方の端に極端に小さい値や大きい値がある場合に、シェーカーソートはこれをより効率的に移動させることができ、バブルソートよりも少ないパスでソートを完了できる可能性が高い。 シェーカーソートは安定ソートである。安定ソートとは、同じ値を持つ要素が複数存在する場合、ソート前のそれらの相対的な順序がソート後も保たれる性質を指す。シェーカーソートでは、隣接する要素を比較する際に「現在の要素が次の要素より厳密に大きい場合のみ交換する」という条件を用いるため、同じ値の要素が出現してもそれらの位置関係は変わらない。 実際のシステム開発の現場では、O(n log n)の計算量を持つクイックソートやマージソート、ヒープソートといったより効率的なアルゴリズムが大規模データ処理では一般的に用いられる。シェーカーソートが適用されるのは、非常に小規模なデータセットのソートや、ソートアルゴリズムの教育的な例として、あるいは特定の組み込みシステムなどメモリやCPUリソースが極めて限られた環境で、かつデータがほぼソート済みであることが期待できるような特殊な状況に限られることが多い。そのアルゴリズムのシンプルさと安定性という特性は理解に値するが、性能要求の高いシステムで主力として採用されることは稀である。

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