シェアドアクセス (シェアドアクセス) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シェアドアクセス (シェアドアクセス) の読み方

日本語表記

共有アクセス (キョウユウアクセス)

英語表記

shared access (シェアードアクセス)

シェアドアクセス (シェアドアクセス) の意味や用語解説

シェアドアクセスは、複数のユーザーやデバイスが、限られた共通のITリソースを共有して利用する方式を指す概念である。現代のネットワークやコンピューティング環境において、この「共有」という考え方は非常に普遍的かつ基盤的な要素となっている。主な共有対象としては、インターネット回線のようなネットワーク帯域、サーバーの計算資源やメモリ、ストレージ容量などが挙げられる。これにより、リソースを効率的に活用し、導入や運用にかかるコストを削減できるという大きなメリットがある一方、複数の主体が同時にリソースにアクセスしようとすることで発生する競合や、それに伴う性能低下、公平性の確保といった課題も内在する。システム全体の効率と安定性を両立させるためには、このシェアドアクセス環境を適切に管理する仕組みが不可欠となる。 シェアドアクセスの具体的な実装は、共有するリソースの種類や目的によって多岐にわたる。最も身近な例の一つがネットワークにおけるシェアドアクセスである。初期の有線LAN、特にバス型トポロジやハブを用いて接続されたイーサネット環境では、複数のコンピュータが一本の物理的な伝送路(ケーブル)を共有していた。このような環境で複数の端末が同時にデータを送信しようとすると、信号が衝突し、データが破壊されてしまう可能性がある。この衝突を避けるために用いられたのが、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)というアクセス制御方式である。これは、まず各端末が回線上に他のデータが流れていないか(キャリアがあるか)を確認し、空いていると判断した場合にデータを送信する。もし送信中に別の端末も同時に送信を開始し、信号が衝突(Collision)した場合は、それを検知し、一旦送信を停止する。その後、ランダムな時間だけ待機してから再送を試みることで、回線への公平なアクセスとデータ送信の確実性を保っていた。現在のイーサネットでは、スイッチングハブの普及により、各端末が専用のポートを介して接続され、基本的に一対一の通信(全二重通信)が可能になったため、物理的な衝突は少なくなっているものの、シェアドアクセスという概念の基礎的な理解には依然として重要である。 無線LAN(Wi-Fi)環境もまた、電波という共有媒体を利用する典型的なシェアドアクセスである。有線LANとは異なり、無線環境では電波が飛び交うため、端末が互いの送信を常に検知できるとは限らない「隠れ端末問題」や、衝突を検知することが困難であるという特性がある。このため、無線LANではCSMA/CDの代わりに、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)という衝突回避の仕組みが採用されている。これは、データを送信する前に、まず回線が空いていることを確認し、さらに意図的に短い時間待機する。場合によっては、RTS/CTS(Request To Send / Clear To Send)という制御パケットを交換し、他の端末に送信の許可を求めることで、潜在的な衝突を未然に防ぎ、データ送信の優先権を確保しようと試みる。 携帯電話ネットワークにおいても、限られた電波資源を多数の加入者で共有するために、様々なシェアドアクセス技術が用いられている。例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)は、時間を細かく区切り、各ユーザーに異なる時間スロットを割り当てることで、一つの周波数帯を時分割で共有する方式である。FDMA(Frequency Division Multiple Access)は、利用可能な周波数帯域をさらに小さなチャネルに分割し、各ユーザーに異なるチャネルを割り当てることで、周波数帯域を共有する。CDMA(Code Division Multiple Access)は、各ユーザーのデータに固有の符号(コード)を乗算することで、同じ時間、同じ周波数帯域を共有しながらも、異なるユーザーの通信を識別・分離するユニークな方式である。さらに、LTEなどの最新の携帯電話ネットワークでは、TDMAとFDMAの特性を組み合わせたOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)などが採用され、より高効率なデータ通信を実現している。 これらのシェアドアクセス環境では、複数のアクセスが同時に発生した際に、リソースの管理と競合制御が重要となる。例えば、ネットワーク回線にデータが集中しすぎると、パケットの遅延や損失が発生し、通信品質が低下する。このような状況を適切に制御し、特定の通信(例えば音声通話やビデオ会議など)を優先的に処理することで、安定したサービス品質を保証する仕組みをQoS(Quality of Service)と呼ぶ。QoSは、シェアドアクセス環境における性能低下というデメリットを緩和するために不可欠な技術である。 シェアドアクセスのメリットは、前述のコスト効率やリソースの柔軟な利用に加えて、設備の導入や管理の簡素化が挙げられる。一台の高性能なサーバーを多数のユーザーで共有する方が、ユーザーごとに専用の低性能サーバーを用意するよりも、多くの場合、総コストを抑えられ、管理も集約できる。しかしデメリットとしては、アクセスが集中した場合の性能ボトルネック、共有リソースが単一障害点になるリスク、そして物理層に近い側面ではあるが、共有媒体ゆえのセキュリティ上の潜在的リスク(例えば、初期の共有イーサネットにおける意図しない情報傍受など)が考えられる。 現代のITシステムにおいて、シェアドアクセスの概念はさらに広範に適用されている。クラウドコンピューティング環境における「マルチテナント」モデルは、多数の顧客が同じ物理サーバーやストレージ、ネットワーク基盤を共有しながら、論理的に独立したサービスとして利用する典型的なシェアドアクセスである。また、サーバー仮想化技術も、一台の物理サーバーの計算資源を複数の仮想マシンで共有するシェアドアクセスの一種と言える。このように、シェアドアクセスは単なるネットワーク技術に留まらず、ITインフラ全体の設計思想として深く根付いており、その理解はシステムエンジニアを目指す上で極めて重要である。

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