シェアードナッシング (シェアードナッシング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

シェアードナッシング (シェアードナッシング) の読み方

日本語表記

シェアードナッシング (シェアードナッシング)

英語表記

Shared Nothing (シェアードナッシング)

シェアードナッシング (シェアードナッシング) の意味や用語解説

シェアードナッシングとは、大規模なコンピュータシステムを構築する際の設計思想の一つである。日本語では「共有物無し」と直訳され、その名の通り、システムを構成する複数のコンピュータ(ノード)が、CPU、メモリ、ディスクといった主要なリソースを一切共有しないアーキテクチャを指す。各ノードは完全に独立したコンピュータとして機能し、それぞれが自身のオペレーティングシステム、CPU、メモリ、ディスクを持つ。ノード間の連携が必要な場合は、高速なネットワークを介して相互に通信を行うことで実現される。このアーキテクチャの主な目的は、システムの拡張性(スケーラビリティ)と耐障害性(可用性)を飛躍的に向上させることにある。 シェアードナッシングアーキテクチャの核心は、処理やデータを各ノードに分散させる点にある。システム全体で処理すべき巨大なデータがある場合、それを複数の小さな部分に分割し、それぞれのノードに割り当てる。このデータの分割方法はパーティショニングやシャーディングと呼ばれる。各ノードは、自身に割り当てられたデータに対する処理のみを担当するため、多数のノードで処理を並列実行できる。これにより、システム全体の処理能力はノードの数に比例して向上させることが可能となる。この特徴は、特に大量のデータを扱うデータベースシステムや分散処理基盤において極めて重要である。 このアーキテクチャがもたらす最大の利点は、高いスケーラビリティ、特にスケールアウトの容易さである。スケールアウトとは、システムの処理能力を向上させるために、サーバーの台数を増やす方法を指す。シェアードナッシングでは、各ノードが独立しているため、性能が不足してきた場合に新しいノードをシステムに追加するだけで、比較的容易に全体の性能を向上させることができる。これは、一台のサーバーの性能を上げるスケールアップ(垂直スケーリング)に比べて、安価な汎用サーバーを多数利用できるため、コストパフォーマンスに優れるという利点もある。 もう一つの重要な利点は、高い可用性と耐障害性である。システム内の一つのノードに障害が発生しても、他のノードは影響を受けずに動作を継続できる。なぜなら、各ノードがリソースを共有していないため、障害が他のノードに波及することがないからである。これにより、システム全体が停止するリスクを大幅に低減し、単一障害点(SPOF: Single Point of Failure)を排除できる。障害が発生したノードが担当していた処理やデータは、他の正常なノードが引き継ぐような仕組みを組み込むことで、サービスを継続的に提供することが可能となる。 一方で、シェアードナッシングアーキテクチャにはいくつかの課題も存在する。まず、システムの設計と管理が複雑になる点が挙げられる。データをどのように各ノードに効率よく、かつ均等に分散させるかというパーティショニングの設計は非常に難しく、適切に行われないと特定のノードに負荷が集中するホットスポット問題を引き起こす可能性がある。また、ノード間の通信が頻繁に発生するため、ネットワークの性能がシステム全体のボトルネックになり得る。そのため、高速で信頼性の高いネットワークの設計が不可欠となる。多数のノードを運用管理するための仕組みも必要となり、運用の複雑さが増す傾向にある。さらに、複数のノードにまたがるデータの一貫性を保つことも課題となる。特に、複数のノードのデータを同時に更新するような分散トランザクションの管理は、単一のシステムに比べて格段に複雑になる。 シェアードナッシングアーキテクチャは、その特性から、特に大規模なデータを扱う現代の多くのシステムで採用されている。具体的な例としては、GoogleのSpannerやAmazon DynamoDBといったクラウドネイティブな分散データベースが挙げられる。これらのデータベースは、世界中の膨大なアクセスを処理するために、シェアードナッシングの思想に基づいて設計されている。また、ビッグデータ処理の分野で広く使われているApache HadoopやApache Sparkといった分散処理フレームワークも、このアーキテクチャを基盤としている。これらのフレームワークは、数千台のサーバークラスター上で巨大なデータセットを並列処理することを可能にする。その他、データウェアハウス製品であるTeradataやGreenplumなども、超並列処理(MPP)を実現するためにシェアードナッシングアーキテクチャを採用している代表的な例である。

シェアードナッシング (シェアードナッシング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説