シールド付きより対線 (シールドツキヨリツイセン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
シールド付きより対線 (シールドツキヨリツイセン) の読み方
日本語表記
シールド付きツイストペアケーブル (シールドツキツイストペアケーブル)
英語表記
shielded twisted pair (シールドツイストペア)
シールド付きより対線 (シールドツキヨリツイセン) の意味や用語解説
シールド付きより対線は、主にデータ通信ネットワークで用いられるケーブルの一種で、外部からの電磁ノイズや内部での信号干渉を抑制し、安定した高速通信を実現するために設計された構造を持つ。一般的に、コンピュータネットワークのLANケーブルとして利用されるツイストペアケーブル(より対線)に、金属製の遮蔽層(シールド)を追加したものである。高いノイズ耐性と通信品質が求められる、特に厳しい環境下で利用されることが多い。 このケーブルの特性を理解するためには、「より対線」と「シールド」それぞれの役割を把握することが重要だ。まず「より対線」とは、互いに絶縁された2本の銅線を一組として、一定の間隔でねじり合わせた構造を持つケーブルのことである。このねじり合わせ(ツイスト)には、ノイズを打ち消し合う効果がある。具体的には、2本の線に同じ強度で逆相の信号(差動信号)を流すことで、外部から侵入するノイズは両方の線に同じように影響を与えるため、受信側でそれらの信号の差を取ることでノイズ成分を相殺できる。これにより、信号の劣化を抑え、安定したデータ伝送が可能となる。また、線同士をねじることで、ケーブル内部での信号の漏洩(クロストーク)も低減できる。 シールド付きより対線は、このより対線の構造に加え、さらに金属製の遮蔽層を施している点が大きな特徴である。このシールドの主な目的は、外部からの電磁波ノイズ(EMI: ElectroMagnetic Interference)や無線周波数ノイズ(RFI: Radio Frequency Interference)がケーブル内部に侵入するのを防ぐことにある。例えば、モーター、蛍光灯、電源ケーブル、電子レンジなどから発生する電磁ノイズは、ケーブル内のデータ信号を歪ませ、通信エラーを引き起こす可能性があるが、シールドはこのノイズを物理的に遮断する役割を果たす。シールドは一般的に、ケーブル全体を覆うフォイル(アルミ箔)やブレイド(編組線)、あるいはこれらを組み合わせた多重構造となっている。中には、個々のより対線ペアそれぞれをフォイルで覆い、さらにケーブル全体をシールドで覆うといった、より高度な遮蔽構造を持つものも存在する。この構造は、外部ノイズの遮断だけでなく、ケーブル内部で発生する信号漏洩、特に複数のより対線ペア間での干渉(エイリアンクロストーク)を抑制する効果も持つ。 シールド付きより対線は、その堅牢なノイズ対策構造により、極めて高いノイズ耐性を誇る。これにより、電磁ノイズが多い工場、病院、データセンターなどの環境でも、安定した高速データ通信を実現できる。また、シールドが信号の漏洩を防ぐため、セキュリティ面でも優位性があり、重要なデータが外部に傍受されるリスクを低減する。特に、ギガビットイーサネット以上の高速通信や、長距離伝送が必要な場合に、その性能が最大限に発揮される。 一方で、高い性能を持つシールド付きより対線には、いくつかの考慮事項がある。まず、シールドを持たない非シールドより対線(UTPケーブル)と比較して、製造コストが高くなるため、ケーブル自体の価格も高価になる傾向がある。また、シールド層がある分、ケーブルが太く、硬くなるため、配線の取り回しがUTPケーブルよりも難しくなる場合がある。 最も重要な注意点の一つは、シールドの効果を最大限に引き出すためには、ケーブルの両端、または少なくとも一端を適切に接地(アース)する必要があることだ。接地が不適切だと、シールドがアンテナのようにノイズを拾い、かえって通信品質を悪化させる「グランドループ」と呼ばれる現象を引き起こす可能性がある。そのため、シールド付きより対線を使用するネットワークシステムでは、ケーブルだけでなく、コネクタ、パッチパネル、そしてネットワーク機器に至るまで、全てがシールドに対応し、適切な接地が施されている必要がある。このシステム全体の設計と構築には、UTPケーブルシステムよりも専門的な知識と手間が求められる。 これらの特性から、シールド付きより対線は、主に以下のような環境で採用される。大規模なデータセンターやサーバー室で、高速かつ安定した基幹ネットワークを構築する場合。工場や医療施設のように、モーターや医療機器などからの電磁ノイズが多発する場所。空港や軍事施設など、高いセキュリティと信頼性が求められる重要な情報伝送路。そして、長距離のケーブル配線で、信号の劣化やノイズの影響を最小限に抑えたい場合などにその真価を発揮する。