シフト演算 (シフトエンザン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シフト演算 (シフトエンザン) の読み方

日本語表記

シフト演算 (シフトエンザン)

英語表記

shift operation (シフトオペレーション)

シフト演算 (シフトエンザン) の意味や用語解説

シフト演算とは、コンピュータが内部で扱うデータの最小単位であるビットの並び(ビット列)を、指定された方向に指定された数だけずらす操作を指す。この操作は、整数の乗算や除算を高速に行ったり、ビット単位でデータを操作したりする際に非常に重要な役割を果たす。多くのプログラミング言語やCPUの命令セットに標準で備わっており、低レベルな処理において頻繁に利用される基本的な演算の一つである。 シフト演算には主に三つの種類が存在する。それぞれ、ビットをずらした際に空いた部分にどのようなビットを挿入するか、またははみ出したビットをどのように扱うかによってその振る舞いが異なる。具体的には、「論理シフト」「算術シフト」「循環シフト」の三つが代表的である。これらの違いを理解することは、コンピュータ内部での数値表現やデータ操作の基礎を理解する上で不可欠である。 まず、論理シフトについて説明する。論理シフトは、主に符号なし整数(非負の整数)や、符号の概念を持たないビットパターンを扱う際に用いられる。ビット列をずらす際、空いたビット位置には常に0が挿入される。右にずらした場合も左にずらした場合も同様に、空いた部分には0が挿入される。 論理左シフトでは、ビット列全体を左にNビットずらす。このとき、右端からN個の0が挿入され、左端からはみ出したN個のビットは失われる。例えば、ある値を1ビット左に論理シフトすると、その値は2倍になる。2ビット左にシフトすると4倍になる。これは、基数2の数値表現において、桁を左に一つずらすことが2倍することに相当するためである。 論理右シフトでは、ビット列全体を右にNビットずらす。このとき、左端からN個の0が挿入され、右端からはみ出したN個のビットは失われる。例えば、ある値を1ビット右に論理シフトすると、その値は2で割った商(小数点以下切り捨て)になる。2ビット右にシフトすると4で割った商になる。論理シフトは、特に特定のビット範囲を抽出したり、ビットマスクを生成したりするようなビット単位の操作に適している。 次に、算術シフトについて説明する。算術シフトは、主に符号付き整数を扱う際に用いられるシフト演算であり、数値の符号を保持するように設計されている。 算術左シフトは、論理左シフトと全く同じ動作をする。すなわち、ビット列全体を左にNビットずらし、右端からN個の0を挿入し、左端からはみ出したビットは失われる。この操作もまた、値を2のN乗倍することに相当する。しかし、符号付き整数においてはこの操作で値が大きくなりすぎると、符号ビットが反転し、予期せぬ結果(オーバーフロー)を招く可能性があるため、注意が必要である。 算術右シフトは、算術シフトの中でも特に重要な特徴を持つ。ビット列全体を右にNビットずらす際、空いた左端のビットには、元の最上位ビット(符号ビット)と同じ値が挿入される。つまり、元の値が正の数であれば0が挿入され、負の数であれば1が挿入される。これにより、シフト後も数値の符号が保持される。例えば、-10という負の数を1ビット算術右シフトすると、その値は-5となる。この動作は、符号付き整数を2のN乗で割る操作に相当する。右端からはみ出したビットは失われる。算術右シフトは、プログラミング言語によってその動作が処理系定義である場合があるため、使用する際には注意が必要である。 最後に、循環シフトについて説明する。循環シフトは、ビット列をずらす際に、はみ出したビットが失われるのではなく、反対側の端に循環して戻ってくるという特徴を持つ。ビットの並びが全体として円環状であるかのように扱われる。 左循環シフトでは、ビット列を左にNビットずらす際、左端からはみ出したN個のビットが、そのまま右端に挿入される。つまり、ビット列のデータが一切失われることなく、その並び順だけが変化する。 右循環シフトでは、ビット列を右にNビットずらす際、右端からはみ出したN個のビットが、そのまま左端に挿入される。こちらもビット列のデータは失われない。 循環シフトは、主に暗号化アルゴリズムやハッシュ関数など、ビットパターンを操作し、その情報を完全に保持しながら変換する必要がある場合に利用される。 これらのシフト演算は、CPUの専用命令として実装されていることが多く、加算や減算と同様に非常に高速に実行できる。そのため、特に2のべき乗での乗算や除算が必要な場合、通常の乗除算命令を使うよりもシフト演算を使った方がパフォーマンスが向上することが期待できる。また、特定のビットのオン・オフを切り替えたり、複数の情報を一つの整数値にまとめて格納(パック)したり、そこから特定の情報を取り出したり(アンパック)する際にも、シフト演算とビットごとの論理演算(AND, OR, XOR)が組み合わせて用いられる。 システムエンジニアを目指す上では、コンピュータが数値をどのように表現し、どのように操作しているかを理解することが重要であり、シフト演算はその基礎をなす重要な概念である。特に、異なるデータ型(符号付き/符号なし)間での変換や、低レベルでのハードウェア制御、あるいはパフォーマンスが要求されるアルゴリズムの実装などでは、シフト演算の正しい理解と適切な利用が求められることになる。

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