シングルモード光ファイバー (シングルモードこうファイバー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シングルモード光ファイバー (シングルモードこうファイバー) の読み方

日本語表記

シングルモード光ファイバー (シングルモードこうファイバー)

英語表記

single-mode optical fiber (シングルモードファイバー)

シングルモード光ファイバー (シングルモードこうファイバー) の意味や用語解説

シングルモード光ファイバーは、光信号を伝送するための光ファイバーの一種である。その最大の特徴は、非常に細いコアを持つことにより、光が伝播する経路(モード)を基本的に一つに限定している点にある。この特性により、光信号の劣化を最小限に抑えながら、非常に長距離にわたって高速なデータ伝送が可能となる。主に、通信事業者の基幹ネットワークや、データセンター間の長距離接続、広域イーサネットなど、高速かつ長距離の通信が求められる場面で広く利用されている。 詳細に入ると、シングルモード光ファイバーの構造は、光が実際に伝わる「コア」、そのコアを覆い光をコア内部に閉じ込める「クラッド」、そしてこれらを保護する「被覆」(ジャケット)の三層から構成される。シングルモード光ファイバーのコア径は非常に小さく、通常9〜10マイクロメートル程度である。これは人間の髪の毛の直径(約70マイクロメートル)と比較してもはるかに細い。この極めて細いコアが、光の伝播モードを一つに制限する鍵となる。 光はコア内部で全反射を繰り返しながら伝播するが、コアが十分に細い場合、光の波としての性質から、特定の波長においては一本の経路、すなわち一つのモードしか伝播できない現象が起こる。この単一モード伝播により、光信号が複数の経路を通ることで到達時間にばらつきが生じる「モード分散」が原理的に発生しない。モード分散は、特に長距離伝送において信号波形を大きく歪ませ、通信品質を低下させる主要因であるため、これを回避できることはシングルモード光ファイバーの最大の利点となる。 モード分散がないため、シングルモード光ファイバーは数キロメートルから数十、数百キロメートルといった極めて長い距離でも、高速かつ安定したデータ伝送を実現できる。これは、大容量のデータを都市間や国境を越えて伝送する基幹通信網にとって不可欠な特性である。伝送可能なデータレートも非常に高く、ギガビットイーサネットからテラビット級の超高速通信まで対応可能である。また、一般的に、マルチモード光ファイバーがLEDのような比較的安価な光源を使用するのに対し、シングルモード光ファイバーでは、より波長幅が狭く、指向性の高いレーザーダイオードが光源として用いられる。レーザー光は、信号の伝送距離を伸ばす上で有利であり、同時に光ファイバー自体の低損失性も相まって、さらに長距離伝送性能を高める。 一方で、シングルモード光ファイバーにはいくつかの課題も存在する。まず、ファイバー自体の製造コストや、高精度なレーザー光源、対応する送受信機(トランシーバー)が高価である点が挙げられる。また、コア径が非常に細いため、コネクターの接続や融着接続(スプライシング)といった施工作業においては、高い精度と熟練した技術が求められる。わずかな位置ずれが大きな接続損失につながるため、専用の精密な工具や測定器が必要となることも、導入コストや運用コストの一部となる。 しかし、これらの課題を上回る長距離・大容量伝送能力の優位性から、シングルモード光ファイバーは現代のデジタルインフラにおいて、不可欠な役割を担っている。特に、インターネットのトラフィック増大に伴い、データセンター間の接続距離が伸び、伝送容量の要求が高まる中で、その重要性はますます増している。光ファイバーを敷設する際には、その用途と伝送距離、必要な帯域幅を考慮し、シングルモードとマルチモードのどちらが適切かを慎重に選択する必要があるが、長距離かつ広帯域が必須となるシステム設計においては、シングルモード光ファイバーが最も有力な選択肢となる。

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