一重引用符(イチジュウインヨウフ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

一重引用符(イチジュウインヨウフ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

一重引用符 (イチジュウインヨウゴ)

英語表記

single quote (シングルクォート)

用語解説

一重引用符は、プログラミング言語やコマンドラインインターフェースにおいて、文字列を表現するために広く用いられる記号である。その形状は「'」(シングルクォート)であり、主にテキストデータやリテラル値を囲むことで、その内部が純粋な文字の並びであることをシステムに明示する役割を担う。この記号は、プログラムのソースコードやコマンドの引数において、内部に空白文字や、シェルが特殊な意味を持つと解釈する記号(例: $*(など)が含まれる場合に特に重要となる。一重引用符で囲むことにより、これらの特殊文字が意図しない解釈をされることを防ぎ、データがそのままの形で処理されることを保証する。ダブルクォーテーション(二重引用符、")と比較されることが多いが、両者は多くの言語や環境で異なる挙動を示すため、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることがシステム開発において不可欠である。

一重引用符は、様々なプログラミング言語やスクリプト環境で具体的な意味を持つ。

多くのプログラミング言語、例えばPython、JavaScript、Rubyでは、文字列リテラルを定義するために一重引用符が使われる。これらの言語では、一般的に一重引用符とダブルクォーテーションの間に機能的な違いはほとんどなく、どちらを使っても同じ文字列を表現できることが多い。これは、コードのスタイル統一や可読性を考慮して、プロジェクト内でどちらか一方に統一されることが一般的である。例えばPythonでは'hello'"hello"も同じ文字列「hello」として扱われる。JavaScriptでも同様に、'world'"world"は同じ「world」を意味する。

しかし、PHPのように、一重引用符とダブルクォーテーションで明確な挙動の違いを持つ言語も存在する。PHPでは、ダブルクォーテーションで囲まれた文字列内では、$プレフィックスを持つ変数がその値に展開されたり、\n(改行)のようなエスケープシーケンスが実際の制御文字に変換されたりする。対照的に、一重引用符で囲まれた文字列内では、$\nなどのほとんどの特殊文字は、その文字自体としてリテラルに扱われる。唯一の例外は、一重引用符自体を文字列内に含める場合のエスケープ('\'')と、エスケープ文字\がリテラルとして解釈されるケースである。この特性は、意図しない変数展開を防いだり、パフォーマンスのわずかな差を考慮したりする際に使い分けられる。

データベース言語であるSQLでも、文字列リテラルや日付・時刻リテラルを表現する際に一重引用符が必須である。例えば、SELECT name FROM users WHERE id = '123'というクエリでは、'123'という文字列値が正しくデータベースシステムに認識されるよう、一重引用符で囲む必要がある。SQLにおいて、もし文字列自体に一重引用符を含めたい場合は、その一重引用符を二つ重ねて''と記述することでエスケープする規則がある。

シェルスクリプト、特にBashのようなUNIX系シェル環境では、一重引用符は非常に強力な「強い引用(strong quoting)」機能を提供する。一重引用符で囲まれた文字列は、その内部にある全ての特殊文字(例: $変数展開`コマンド置換`\エスケープ、*ワイルドカードなど)が、シェルによって特別な意味を持たず、純粋なリテラル文字列として扱われる。これにより、文字列内に含まれる記号がシェルスクリプトの構文として解釈されることなく、そのままコマンドの引数として渡されることが保証される。例えば、echo '$PATH'と実行すると、環境変数PATHの値ではなく、文字列$PATHがそのまま出力される。これに対し、ダブルクォーテーションは「弱い引用(weak quoting)」と呼ばれ、変数展開やコマンド置換は行われるが、ワイルドカードなどの一部の特殊文字は無効化されるという違いがある。この特性を理解し、適切に使い分けることは、シェルスクリプトのセキュリティと正確性を高める上で極めて重要である。

ウェブ技術の領域では、HTMLの属性値を囲む際にも一重引用符が使われることがある。HTML5では属性値を囲む引用符は省略可能、またはダブルクォーテーションと一重引用符のどちらでも許容されるが、XHTMLでは常に引用符で囲むことが必須であり、コーディング規約によっては一重引用符を使用することもある。CSSでは、contentプロパティなどで表示する文字列を指定する際に一重引用符やダブルクォーテーションを用いる。

一重引用符を文字列自体に含めたい場合、各プログラミング言語や環境に応じて特定のエスケープ方法を用いる必要がある。前述のPHPやSQLのように、一重引用符を二つ重ねて''とする場合もあれば、多くの言語ではバックスラッシュを前置して\'とエスケープする場合もある。例えば、JavaScriptで'It\'s a string'のように記述する。このエスケープルールは言語によって異なるため、使用する言語の仕様を正確に把握することが不可欠である。

また、見た目が似ていても、文字コード上の異なる記号が存在することにも注意が必要である。プログラミングで一般的に使われる一重引用符は、通常ASCII文字セットに含まれる「ストレートクォート」(U+0027 APOSTROPHE)である。これに対し、活版印刷やワードプロセッサで用いられる「カーリークォート」(例: )は異なる文字コードを持つため、ソースコード中で誤って使用すると構文エラーの原因となることがある。初心者にとって、これらの記号の見た目の違いは微妙であるため、正確な記号を入力する習慣をつけることが推奨される。

結論として、一重引用符は、コードの安全な実行、意図しない解釈の防止、そして正確なデータ表現のために不可欠な記号である。その挙動は言語や環境によって多様であるため、常に公式ドキュメントを参照し、自身が扱うシステムにおける具体的な仕様を理解することが、質の高いソフトウェア開発を行う上で極めて重要となる。また、コードの可読性と保守性を保つため、プロジェクトやチーム内で一重引用符とダブルクォーテーションのどちらを使用するか、明確なコーディング規約を設けることが望ましい。

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