シングルスレッド (シングルスレッド) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シングルスレッド (シングルスレッド) の読み方

日本語表記

シングルスレッド (シングルスレッド)

英語表記

single-threaded (シングルスレッド)

シングルスレッド (シングルスレッド) の意味や用語解説

シングルスレッドとは、コンピュータプログラムの実行において、処理の流れがただ一つしか存在しない状態を指す。プログラムが起動すると、スレッドと呼ばれる実行単位が一つ生成され、このスレッドがプログラム内のすべての命令を順番に実行していく。これは、一度に一つのタスクしか実行せず、あるタスクが完了するまで次のタスクには移らないことを意味する。このシンプルさがシングルスレッドの大きな特徴である一方で、現代のマルチコアCPUの性能を十分に引き出せないという側面も持つ。 まず、スレッドとは、オペレーティングシステム(OS)が管理する、プログラムの実行単位の一つである。通常、一つのプログラムはプロセスと呼ばれる単位でOSに認識されるが、このプロセスの中に一つ以上のスレッドが存在する。スレッドは、プログラムの命令を実際に実行する役割を担い、CPUが処理する最小の実行経路と考えることができる。 シングルスレッドのプログラムでは、メインスレッドと呼ばれる一つのスレッドが生成され、プログラムの開始から終了まですべての処理を実行する。具体的な動作としては、プログラムコードに記述された命令を上から順に、一つずつ実行していく。もし途中でファイルからの読み込みやネットワーク通信といった時間のかかる処理(I/O処理)が発生した場合、その処理が完了するまで、他のすべての命令の実行が一時停止する。この状態を「ブロッキング」と呼び、プログラム全体の応答性を低下させる原因となることがある。例えば、ユーザーインターフェースを持つアプリケーションがシングルスレッドで動作し、バックグラウンドで重い計算やネットワーク通信を行っている間に、画面のボタンがクリックできなくなったり、画面表示が更新されなくなったりするのは、このブロッキングが原因である場合が多い。 シングルスレッドにはいくつかの利点がある。最も大きな利点は、そのシンプルさにある。複数のスレッドが同時に動作しないため、スレッド間の同期を取るための複雑な仕組みを考える必要がなく、プログラミングが容易になる。また、複数のスレッド間でデータが同時に書き換えられることによる「データ競合」といった問題や、「デッドロック」と呼ばれる複数のスレッドがお互いの資源を待ち続けて停止してしまうような問題も発生しないため、デバッグ(プログラムの誤りを見つけて修正する作業)も比較的簡単になる。さらに、複数のスレッドを管理するためのオーバーヘッド(余分な処理)が発生しないため、メモリやCPUリソースの消費が少なくなるというメリットもある。 一方で、シングルスレッドには顕著な欠点も存在する。現代のコンピュータに搭載されているCPUは、多くの場合、複数の処理コア(マルチコア)を持っている。シングルスレッドのプログラムは、これらの複数のコアのうち、一つのコアしか有効に活用できないため、CPUの並列処理能力を最大限に引き出すことができない。これにより、処理性能が頭打ちになりやすく、特に大規模なデータ処理や、同時に多くの要求を処理する必要があるサーバーアプリケーションなどには不向きである。先に述べたブロッキングの問題も、ユーザー体験を損なう大きな要因となる。一つの処理が長引くと、ユーザーはプログラムがフリーズしたかのように感じてしまう。 シングルスレッドが適しているのは、主に以下のようなケースである。処理内容が単純で、並行処理の必要性が低いアプリケーション。CPUへの負荷がそれほど高くない、または応答性が最重要ではないバッチ処理プログラム。リソース(特にメモリ)が非常に限られている組み込みシステムなど、複数のスレッドを生成・管理するコストを避けたい環境。一部のプログラミング言語やフレームワークでは、シングルスレッドモデルを基盤としつつも、非同期I/Oなどの仕組みを組み合わせて、ブロッキング問題を回避し、効率的に動作させる工夫がされている場合もあるが、これはシングルスレッドの基本的な動作原理を補完する高度な技術である。 まとめると、シングルスレッドはプログラミングのシンプルさやリソース効率の良さという利点を持つが、マルチコアCPUの性能を活かせず、応答性にも課題を抱える。そのため、開発するシステムの要件に応じて、その特性を理解し、適切に採用することが重要となる。

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