スパンボリューム (スパンボリューム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
スパンボリューム (スパンボリューム) の読み方
日本語表記
スパンボリューム (スパンボリューム)
英語表記
span volume (スパンボリューム)
スパンボリューム (スパンボリューム) の意味や用語解説
スパンボリュームは、複数の物理的なハードディスクやSSDを論理的に連結し、OSからはあたかも一つの巨大なディスク(ボリューム)であるかのように見せるための技術である。その主な目的は、ディスク容量の拡張にある。例えば、1TBのディスクが2台ある場合、スパンボリュームを構成することで、OS上には合計2TBの単一のドライブとして認識させることが可能になる。この技術は、個々のディスクの容量では不足する場合や、複数のディスクに散在する未使用領域を一つにまとめて有効活用したい場合に利用される。データの書き込みは非常に単純な仕組みで行われる。まず、構成されたディスクのうちの1台目にデータが書き込まれ、そのディスクの容量が一杯になると、自動的に次のディスクへと書き込みが継続される。このように、データを線形、つまり直列的に格納していくのが特徴である。この性質からリニアRAIDや、より広い概念であるJBOD(Just a Bunch Of Disks)の一種として扱われることもある。しかし、一般的にRAIDという言葉が想起させる耐障害性の向上やパフォーマンスの向上といった機能は持たない、純粋な容量結合技術である点を理解することが重要である。 スパンボリュームの最大の利点は、その柔軟性と容量効率にある。異なる容量や異なるメーカー、さらには異なる回転数やインターフェースのディスクであっても組み合わせて一つのボリュームを構成することができる。例えば、500GB、1TB、2TBの3台のディスクがあれば、それらを単純に合算した3.5TBのボリュームを作成できる。これは、パフォーマンス向上のためにディスク容量を揃えることが推奨されるストライプボリューム(RAID 0)とは大きく異なる点である。余っている小容量のディスクを無駄なく活用できるため、コストを抑えながら大容量の記憶領域を確保する手段として有効である。また、その構成は多くのオペレーティングシステムで標準機能としてサポートされており、比較的容易に実装することが可能である。 しかし、スパンボリュームには極めて重大な欠点が存在する。それは耐障害性が全くない、むしろ低下するという点である。スパンボリュームを構成するディスクのうち、たった1台でも物理的な故障や障害が発生した場合、ボリューム全体がアクセス不能となり、そこに保存されているすべてのデータが失われる可能性が非常に高い。これは、ファイルやフォルダの情報が複数の物理ディスクにまたがって記録されているため、一部のディスクが欠けるだけでファイルシステムの整合性が崩壊し、ボリューム全体が破損してしまうからである。構成するディスクの台数が増えれば増えるほど、いずれかのディスクが故障する確率は高まるため、結果として単一のディスクで運用するよりも故障リスクは増大する。したがって、スパンボリュームは重要なデータや、失われると困るデータの保存場所としては絶対に適していない。 パフォーマンスに関しても、スパンボリュームは向上を目的とした技術ではない。データは一度に一台のディスクに対してのみ読み書きされるため、ボリューム全体の読み書き速度は、その時点でアクセスしている単一ディスクの性能に依存する。複数のディスクに同時にアクセスして処理を分散させるストライプボリューム(RAID 0)のような速度向上は見込めない。むしろ、データの書き込みがディスクからディスクへと切り替わる境界点で、わずかながら性能低下が発生することもある。そのため、高速なアクセスが求められる用途には不向きである。 以上の特性から、スパンボリュームの利用シーンは限定される。例えば、消失しても問題のない一時的な作業領域として利用する場合や、大容量の動画ファイルを編集するための一時的な保管場所として使う場合などが考えられる。また、別途確実なバックアップ体制が構築されていることを大前提として、アーカイブデータなどの大容量データを格納するために使われることもある。しかし、どのような用途であれ、スパンボリュームを構成するディスクのいずれか一つが故障すればデータ全体が危険に晒されるというリスクを常に認識しておく必要がある。システムエンジニアとしては、このメリットとデメリットを正確に理解し、容量確保という目的とデータ保護の重要性を天秤にかけ、適切な場面でのみ選択すべき技術であると結論付けられる。