スパイン/リーフ型ネットワーク (スパイリーンフがたネットワーク) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
スパイン/リーフ型ネットワーク (スパイリーンフがたネットワーク) の読み方
日本語表記
スパイン・リーフ型ネットワーク (スパインリーフガタネットワーク)
英語表記
Spine-Leaf Network (スパインリーフネットワーク)
スパイン/リーフ型ネットワーク (スパイリーンフがたネットワーク) の意味や用語解説
スパイン/リーフ型ネットワークは、現代の大規模データセンターで広く採用されているネットワークアーキテクチャである。その名の通り、「スパイン(背骨)」の役割を担うスイッチ群と、「リーフ(葉)」の役割を担うスイッチ群の二階層で構成される点が最大の特徴だ。このシンプルな構造により、従来のネットワークアーキテクチャが抱えていた課題を解決し、高いパフォーマンス、拡張性、可用性を実現する。このアーキテクチャが普及した背景には、サーバー仮想化技術の進展やマイクロサービスアーキテクチャの採用がある。これにより、データセンター内部でサーバー同士が通信する、いわゆる「東西トラフィック(East-Westトラフィック)」が爆発的に増加した。スパイン/リーフ型ネットワークは、この大量の東西トラフィックを低遅延かつ高スループットで効率的に処理することに特化して設計されている。従来の3階層モデルが主にデータセンターと外部との通信である「南北トラフィック(North-Southトラフィック)」を想定していたのとは対照的である。 詳細な構造について解説する。まず、リーフスイッチはサーバー、ストレージ、ファイアウォールといったエンドポイントデバイスを直接収容する役割を持つ。これは従来の3階層モデルにおけるアクセススイッチに相当する。次に、スパインスイッチは、すべてのリーフスイッチを相互に接続するための中継役を担う。これはコアスイッチの役割に近いが、接続形態が大きく異なる。スパイン/リーフ型ネットワークでは、すべてのリーフスイッチが、すべてのスパインスイッチにアップリンク接続される。これをフルメッシュ接続と呼ぶ。重要なルールとして、リーフスイッチ同士、あるいはスパインスイッチ同士が直接ケーブルで接続されることはない。この規則的な接続形態により、どのリーフスイッチ配下のサーバーから、別のリーフスイッチ配下のサーバーへ通信する場合でも、必ず「リーフスイッチ → スパインスイッチ → リーフスイッチ」という経路をたどる。つまり、通信ホップ数が常に2ホップで固定される。これにより、通信経路が予測可能となり、ネットワーク全体の遅延を低く、かつ均一に保つことができる。 このアーキテクチャがもたらす最大のメリットは、高いスケーラビリティである。ネットワークを拡張する際、従来の3階層モデルでは設計が複雑化しやすかったが、スパイン/リーフ型では非常にシンプルだ。サーバーの収容ポートが不足した場合は、新たなリーフスイッチを追加し、そのリーフスイッチを既存のすべてのスパインスイッチに接続するだけで済む。ネットワーク全体の帯域が不足した場合は、スパインスイッチを追加し、すべてのリーフスイッチに接続することで、全体のスイッチング容量を増強できる。このように、必要に応じてスイッチを水平方向に追加していく「スケールアウト」が容易であり、ビジネスの成長に合わせた柔軟なネットワーク拡張が可能となる。 また、高い可用性と耐障害性も大きな利点である。すべてのリーフスイッチが複数のスパインスイッチに接続されているため、特定のスパインスイッチやケーブルに障害が発生しても、他の正常なスパインスイッチを経由して通信を継続できる。この際、ECMP(Equal-Cost Multi-Path)というルーティング技術が活用される。ECMPは、宛先までコストが等しい複数の経路が存在する場合、それらの経路にトラフィックを分散させる仕組みである。これにより、特定の経路に負荷が集中することを防ぎ、ネットワーク帯域を最大限に活用できる。従来のネットワークでループ防止のために用いられていたSTP(Spanning Tree Protocol)では、冗長経路の一部をブロックするため帯域を有効活用できなかったが、スパイン/リーフ型ではルーティングをベースとすることで、すべての物理リンクをアクティブな状態で利用できる。 さらに、VXLAN(Virtual eXtensible LAN)などのオーバーレイ技術との親和性が高いことも特徴だ。物理的なスパイン/リーフ型の配線(アンダーレイネットワーク)の上に、VXLANを用いて論理的なネットワーク(オーバーレイネットワーク)を構築することで、物理的な制約にとらわれず、大規模で柔軟な仮想L2ネットワークを構成できる。これにより、仮想サーバーの移動やマルチテナント環境の構築が容易になり、現代のクラウド基盤が求める俊敏性と柔軟性に応えることが可能となる。このように、スパイン/リーフ型ネットワークは、その構造の単純さ、高い性能、拡張性から、今日のデータセンターネットワークにおける標準的なアーキテクチャとなっている。