スプリッタ (スプリッター) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スプリッタ (スプリッター) の読み方

日本語表記

スプリッタ (スプリッタ)

英語表記

splitter (スプリッター)

スプリッタ (スプリッター) の意味や用語解説

スプリッタは、通信回線やケーブル上で伝送される信号を、その性質や目的に応じて分離したり、一つの信号源から複数の終端装置へ分配したりする装置である。その基本的な機能は、信号の経路を適切に制御し、異なる種類の信号が互いに干渉することなく、または一つの信号を複数の宛先に効率的に届けることを可能にすることである。IT分野においてスプリッタという言葉が使われる場合、主にデジタル加入者線(DSL)や光ファイバー通信、そして一部のローカルエリアネットワーク(LAN)環境で使用される装置を指すことが多い。 最も身近な例として挙げられるのは、かつて広く普及したADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)サービスで使用されたDSLスプリッタである。ADSLは、既存の電話回線を利用して高速なインターネット接続を提供する技術であるが、この電話回線には、音声通話のためのアナログ音声信号と、インターネット接続のためのデジタルデータ信号が同時に流れる。ここで問題となるのが、これら二つの信号が使用する周波数帯域の違いである。音声信号は比較的低い周波数帯域を使用する一方、ADSLのデータ信号はそれよりも高い周波数帯域を使用する。DSLスプリッタの主要な役割は、この異なる周波数帯域の信号を物理的に分離し、それぞれの信号を適切な機器に導くことにある。具体的には、DSLスプリッタは電話回線から入力された信号を、電話機へ送るための低周波数帯域の音声信号と、ADSLモデムへ送るための高周波数帯域のデータ信号に分ける。これにより、ユーザーは電話を使用している最中でも、同時にインターネットに接続してデータ通信を行うことができ、互いの信号が干渉して通信品質が低下するのを防ぐことができる。DSLスプリッタには通常、ノイズを除去するためのフィルター機能が内蔵されており、データ信号が音声通話に悪影響を及ぼしたり、その逆が発生したりするのを抑制する。設置時には、通常、電話回線の壁のコンセントにDSLスプリッタを接続し、そこからさらに電話機とADSLモデムへそれぞれケーブルを接続する構成が一般的であった。一部のADSLモデム製品には、このスプリッタ機能がモデム本体に内蔵されているものも存在した。 現代の高速通信インフラの基盤である光ファイバーネットワークにおいても、光スプリッタは重要な役割を担う。光スプリッタは、一本の光ファイバーケーブルを伝送されてきた光信号を複数の光ファイバーケーブルに分岐させたり、逆に複数の光ファイバーからの光信号を一本の光ファイバーに合流させたりする装置である。特にPassive Optical Network(PON)と呼ばれる光アクセスネットワークの構築において不可欠なコンポーネントである。PONは、通信事業者の中央局から加入者宅までの間に、電気的な動力を必要としない受動的な光デバイス(光スプリッタなど)のみを用いて光信号を伝送するネットワーク構成である。光スプリッタは、中央局から送られてくる下り方向(ダウンストリーム)の光信号を複数の加入者宅へ分配し、また各加入者宅から送られてくる上り方向(アップストリーム)の光信号を一本に集約して中央局へ送り返す役割を果たす。これにより、一本の高価な光ファイバー回線を多数の加入者で共有することが可能になり、インフラ構築のコストを大幅に削減できる。光スプリッタには、光信号を何分割するかを示す分岐比率があり、「1:2」「1:4」「1:8」「1:32」のように多岐にわたる。ネットワーク設計者は、必要な加入者数やネットワークの構成に応じて適切な分岐比率のスプリッタを選択する。光信号の分岐に伴い、光パワーの減衰(損失)が必ず発生するため、ネットワークの設計においては、この減衰量を考慮し、適切な光パワーレベルが各加入者宅に届くように計画する必要がある。 また、イーサネット(LAN)環境において「スプリッタ」という言葉が使われることもあるが、これはDSLや光通信におけるスプリッタとは、その機能や使われ方が異なる場合が多い。一般的なイーサネットネットワークでは、複数の機器を接続するためにハブやスイッチングハブといったネットワーク機器を使用する。これらの機器は、電気信号を適切に処理・転送することで、多数のデバイス間での効率的なデータ通信を可能にする。これに対し、イーサネットスプリッタと呼ばれる装置は、主に一本のLANケーブルの内部にある複数の信号線(導線ペア)を、異なる目的のために分割して利用する目的で使用されることがある。例えば、カテゴリ5(CAT5)、カテゴリ5e(CAT5e)、カテゴリ6(CAT6)といった一般的なLANケーブルは通常8本の導線(4組のペア線)で構成されているが、100BASE-TXイーサネットでは、そのうちの4本(2ペア)しかデータ伝送に使用しない。このような場合、残りの未使用の4本(2ペア)を別の100BASE-TX回線やPower over Ethernet(PoE)といった電力供給に利用するために、ケーブルの両端で信号を分離・結合する目的でイーサネットスプリッタが使われることがある。これにより、物理的に一本のLANケーブルで二つの異なる100Mbpsのネットワーク回線を伝送したり、データと電力を同時に送ったりすることが可能になる。しかし、このような利用方法は、ネットワークの最大帯域幅が100Mbpsに制限される、配線が複雑になる、電磁干渉による通信品質の低下を招く可能性があるなどのデメリットを伴う。特に、より高速なギガビットイーサネット(1000BASE-T)では、LANケーブル内の8本全ての導線を使用してデータ伝送を行うため、この種のイーサネットスプリッタは使用できない。そのため、高い信頼性や性能が求められるネットワークにおいては、ハブやスイッチングハブを適切に利用することが推奨され、イーサネットスプリッタの使用は非常に限定的な状況に留まるのが一般的である。 これら以外にも、テレビ放送の同軸ケーブル信号を複数に分配する同軸ケーブルスプリッタや、HDMI信号を複数のディスプレイに分配するHDMIスプリッタなど、特定の用途に特化した様々なスプリッタが存在する。しかし、どの種類のスプリッタも、その基本的な概念は「信号の分離」または「信号の分配」という共通の原則に基づいている。

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