スパイウェア (スパイウェア) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
スパイウェア (スパイウェア) の読み方
日本語表記
スパイウェア (スパイウェア)
英語表記
Spyware (スパイウェア)
スパイウェア (スパイウェア) の意味や用語解説
スパイウェアとは、ユーザーの許可なく、またはユーザーが気づかないうちにコンピューターやモバイルデバイスに侵入し、個人情報や行動履歴などの情報を秘密裏に収集し、外部の攻撃者へ送信する悪意のあるソフトウェア(マルウェア)の一種である。その名の通り「スパイ」のように振る舞い、ユーザーの行動を監視し続ける特徴を持つ。ユーザーのプライバシーを侵害し、重大な情報漏洩や金銭的被害を引き起こす可能性があるため、その存在と対策はITを利用する上で非常に重要となる。 スパイウェアの侵入経路は多岐にわたる。最も一般的なのは、フリーソフトやシェアウェアといった無料で提供されるソフトウェアに「バンドル」と呼ばれる形でこっそり同梱されているケースである。ユーザーが正規のソフトウェアをインストールする際、利用規約をよく読まなかったり、デフォルト設定のままインストールを進めたりすることで、意図せずスパイウェアも同時にインストールされてしまう。また、悪意のあるウェブサイトを閲覧した際に、ウェブブラウザやOSの「脆弱性」を悪用して自動的にダウンロードされる「ドライブバイダウンロード」によって感染することもある。フィッシング詐欺メールの添付ファイルや、偽のセキュリティ警告、ソフトウェア更新プログラムを装ったダウンロードリンクなども、スパイウェアの主要な感染源となる。さらに、USBメモリなどの外部メディアを介して感染が広がるケースや、ネットワーク上の共有フォルダから感染する可能性も存在する。 スパイウェアには、その機能によっていくつかの種類がある。最も典型的なのは「情報窃取型」スパイウェアで、銀行口座情報、クレジットカード情報、SNSのログイン情報、電子メールアドレス、パスワードといった機密性の高い個人情報を収集する。この種のスパイウェアは、キーボードからの入力内容をすべて記録する「キーロガー」機能を搭載していることが多く、ユーザーが入力したパスワードやメッセージがそのまま攻撃者に送信される。さらに、定期的に画面のスクリーンショットを撮影したり、ウェブカメラやマイクを密かに起動して映像や音声を記録する機能を持つものもある。これらの情報は、不正アクセス、金銭の詐取、身元詐称などに悪用される。 「アドウェア型」も広義のスパイウェアに含まれることがある。これは、ユーザーの閲覧履歴や検索履歴、興味関心に関する情報を収集し、その情報に基づいてパーソナライズされた広告を強制的に表示することを主な目的とするソフトウェアである。広告表示自体は直接的な損害ではないものの、情報の無断収集という点でプライバシー侵害のリスクを伴う。 「システム監視型」スパイウェアは、デバイスの利用状況、起動したアプリケーション、アクセスしたウェブサイト、ファイルの操作履歴などを継続的に記録・監視する。これは、企業が従業員の業務状況を監視する目的で合法的に導入されるケースもあるが、悪意を持ってインストールされた場合は、個人のプライバシーを著しく侵害する行為となる。 さらに高度なものとして、「リモートアクセス型(RAT: Remote Access Trojan)」と呼ばれるスパイウェアも存在する。これは、感染したデバイスを遠隔地の攻撃者が自由に操作できるようにするもので、ファイルの閲覧、編集、削除、プログラムの起動、設定変更など、あたかも自身のデバイスであるかのように操作が可能になる。これにより、デバイス内のあらゆる情報が窃取されるだけでなく、感染したデバイスがさらなる攻撃の踏み台にされたり、他のシステムへの侵入に悪用されたりする危険性がある。 スパイウェアがもたらす被害は深刻である。最も直接的なのは、個人情報が盗まれることによるプライバシー侵害である。氏名、住所、電話番号、メールアドレス、銀行口座情報などが漏洩し、不正利用や詐欺の被害に遭う可能性がある。企業においては、研究開発データ、顧客情報、営業秘密などの機密情報が外部に流出し、企業の競争力低下や信用失墜に直結する。また、スパイウェアはバックグラウンドで常に動作し続けるため、CPUやメモリ、ネットワーク帯域を消費し、PCの動作が遅くなったり、フリーズしたり、インターネット接続が不安定になるなどのパフォーマンス低下を引き起こす。さらに、一部のスパイウェアは、セキュリティソフトを無効化したり、ファイアウォールの設定を変更したりして、自身の検出や除去を困難にするように設計されている。 スパイウェアから身を守るためには、いくつかの対策を講じる必要がある。まず、信頼できるセキュリティソフト(アンチウイルスソフト、アンチスパイウェアソフト)を導入し、常に「定義ファイル」を最新の状態に保つことが不可欠である。定期的なシステムスキャンも効果的である。次に、OSやウェブブラウザ、その他のアプリケーションの「脆弱性」を悪用されることを防ぐため、提供元からのセキュリティパッチやアップデートは速やかに適用する。不審な送信元からのメールに添付されたファイルや、怪しいウェブサイトのリンクは安易に開かないよう細心の注意を払う。フリーソフトやシェアウェアをダウンロードする際は、必ず公式の配布元や信頼できるサイトからのみ入手し、インストール時には利用規約をよく読み、不必要な機能や追加ソフトウェア(バンドルソフト)が含まれていないかを確認する。さらに、ファイアウォールを適切に設定し、不審な通信をブロックすることで、スパイウェアが外部と情報をやり取りするのを防ぐことができる。パスワードを強固なものにし、複数のサービスで使い回さない、可能であれば「多要素認証」を利用するといった基本的なセキュリティ習慣も非常に重要である。これらの対策を複合的に実施することで、スパイウェアによるリスクを最小限に抑えることが可能となる。