ステートフル (ステートフル) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ステートフル (ステートフル) の読み方
日本語表記
ステートフル (ステートフル)
英語表記
stateful (ステートフル)
ステートフル (ステートフル) の意味や用語解説
システムにおける「ステートフル」とは、複数のリクエストや処理の間で、システムが自身の状態、すなわち過去のやり取りや現在の状況に関する情報を記憶し、その情報に基づいて次の動作を決定する特性を持つことを指す。ここでいう「状態」とは、例えばユーザーがログイン中であるか、ショッピングカートに何が入っているか、以前どのような操作を行ったかといった情報のことである。ステートフルなシステムは、この状態情報を保持することで、ユーザーごとにパーソナライズされた、連続性のある体験を提供できる。 ステートフルなシステムが状態を維持する方法はいくつかある。一般的なウェブアプリケーションでは、ユーザーが最初にアクセスした際にセッションIDと呼ばれる一意の識別子を発行し、これをユーザーのブラウザ(クッキーなど)に保存する。以降のすべてのリクエストにはこのセッションIDが含まれ、サーバーはそのIDを使って、サーバー側で管理している該当ユーザーのセッション情報(ログイン状態、カートの内容など)を特定し、利用する。セッション情報は、サーバーのメモリ上やデータベース、あるいはファイルシステムなど、様々な方法で永続化される。 ステートフルであることの利点は大きい。ユーザーがログイン状態を維持し、何度もパスワードを入力する必要がない点や、複数のページにわたる複雑な入力フォームでも、以前の入力内容が失われない点が挙げられる。また、ショッピングサイトのカート機能のように、ユーザーの選択を一時的に保持し、最終的な購入処理までその情報を使うような、一連の継続的な処理を実現するにはステートフルな設計が不可欠となる。これにより、ユーザーはより自然で便利なサービスを利用できる。 しかし、ステートフルなシステムには課題も存在する。最大の課題の一つは「スケーラビリティ」である。複数のサーバーでシステムを運用する場合、あるユーザーのセッション情報が特定のサーバーに紐づいていると、そのユーザーからのリクエストは常に同じサーバーで処理される必要が生じる。このため、新しいサーバーを追加しても、既存のセッションの負荷分散が難しくなる。これを解決するためには、セッション情報を複数のサーバー間で共有する仕組み(分散セッション管理)を導入したり、特定のサーバーへのリクエストを固定する「スティッキーセッション」などの仕組みが必要になるが、これらはシステム全体の複雑性を増大させる。 次に、「信頼性」の課題がある。もしセッション情報を保持しているサーバーがダウンした場合、そのサーバーに紐づいていたユーザーのセッション情報が失われ、ユーザーはログインし直したり、カートの内容が消えたりする可能性がある。これを防ぐためには、セッション情報の冗長化や永続化(データベースへの保存など)が必要となり、これもまたシステム設計を複雑にする要因となる。 さらに、サーバーは個々のユーザーの状態を記憶し続けるため、そのためのリソース(メモリやストレージ)を消費する。ユーザー数が増えれば増えるほど、このリソース消費も増大し、サーバーの負荷を高めることになる。適切な状態管理を行わないと、パフォーマンスの低下を招く可能性もある。 これらの利点と課題を考慮し、システム設計者はアプリケーションの要件に応じてステートフルな設計を採用するか、あるいは各リクエストが独立して処理される「ステートレス」な設計を採用するか、あるいはその両方を組み合わせるかを慎重に検討する。特に、ユーザーの連続的な操作やパーソナライズが求められる場面で、ステートフルなシステムは強力なツールとなる。