スティッキーセッション (スティッキーセッション) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スティッキーセッション (スティッキーセッション) の読み方

日本語表記

スティッキーセッション (スティッキーセッション)

英語表記

Sticky Session (スティッキーセッション)

スティッキーセッション (スティッキーセッション) の意味や用語解説

スティッキーセッションは、Webアプリケーションにおいて、複数のサーバーにリクエストを分散させるロードバランサーが導入されている環境下で、ユーザーのセッション情報を正しく維持するための仕組みである。多くのWebサービスでは、ユーザーが一度ログインしたり、ショッピングカートに商品を入れたりすると、その状態が複数のページ遷移をしても維持されることが期待される。この状態をセッションと呼び、スティッキーセッションはこのセッションが途切れることなく、一貫して保持されるようにするための重要な技術である。 Webアプリケーションは、多数のユーザーからのアクセスを処理するため、複数のサーバーを連携させて運用することが一般的である。このとき、ユーザーからのリクエストをそれぞれのサーバーに適切に振り分ける役割を担うのがロードバランサーである。ロードバランサーは、サーバー群全体の負荷を均等にするために、新しく来たリクエストを空いているサーバーや負荷の低いサーバーに送る。しかし、この仕組みにはセッション管理上の課題が存在する。 例えば、ユーザーがWebサイトにアクセスし、ログイン情報を入力してセ認証を完了したとする。このとき、そのユーザーのログイン情報は特定のサーバー(例えばサーバーA)のメモリ上やローカルのストレージにセッションデータとして保存される。ユーザーが次に別のページへ遷移する際、ロードバランサーがそのリクエストを別のサーバー(例えばサーバーB)に送ってしまうと、サーバーBはユーザーのログイン情報を持たないため、ユーザーはログイン状態ではないと判断されてしまう。これにより、ユーザーは再度ログインを求められたり、ショッピングカートに入れたはずの商品が消えたりといった、一貫性のない、不便なユーザー体験を強いられることになる。 この問題を解決するのがスティッキーセッションである。スティッキーセッションは、特定ユーザーからの最初のリクエストを処理したサーバーに対し、そのユーザーからの後続の全てのリクエストも一貫して転送するようにロードバランサーに指示する仕組みである。つまり、一度ユーザーがサーバーAに接続しセッションを確立したら、そのユーザーがWebサイトを閲覧し続けている間は、常にサーバーAにリクエストが送られるようになる。これにより、サーバーAに保存されているセッション情報が常に利用可能となり、ユーザーはログイン状態やカートの内容が途切れることなく、スムーズにサービスを利用できる。 スティッキーセッションを実現する方法はいくつか存在するが、最も一般的に用いられるのはHTTPクッキーを利用した方法である。ユーザーが初めてロードバランサー経由でサーバーにアクセスすると、ロードバランサーはリクエストを処理するサーバーを決定し、そのサーバーの識別子を含む特別なクッキーをユーザーのWebブラウザに発行する。このクッキーは、ユーザーのWebブラウザが次回以降のリクエストを送信する際に自動的に付与される。ロードバランサーはこのクッキーを読み取り、含まれているサーバー識別子に基づいて、前回と同じサーバーにリクエストを転送する。これにより、ユーザーのセッションは特定のサーバーに「くっつく(sticky)」ため、途切れることなく維持されるのである。 スティッキーセッションの導入は、ユーザーの利便性を大幅に向上させるメリットがある。ログイン状態の維持やショッピングカート、フォーム入力の一時保存など、セッション情報に依存する機能が安定して動作するため、ユーザーはストレスなくWebサービスを利用できる。また、アプリケーション開発者はセッション情報をサーバーローカルに保存できるため、セッション管理の実装が比較的容易になるという側面もある。 しかし、スティッキーセッションにはいくつかの注意点やデメリットも存在する。一つは、負荷分散の偏りである。特定のユーザーが多くのリクエストを生成したり、長時間セッションを維持したりする場合、そのユーザーが紐付けられているサーバーにのみ負荷が集中し、他のサーバーが遊んでしまう可能性がある。これにより、せっかく複数のサーバーで負荷分散しているにもかかわらず、リソースの利用効率が低下することがある。 もう一つの大きな問題は、サーバー障害時の可用性である。もしユーザーが紐付けられているサーバーがダウンしてしまった場合、そのサーバーに保存されていたセッション情報は失われてしまう。ユーザーは再度ログインを求められたり、操作が最初からやり直しになったりするため、サービス継続性が損なわれる可能性がある。これは、ロードバランサーが持つ高可用性という利点を一部打ち消す形となる。また、サーバーの追加や削除といったスケールアウト・スケールインを行う際にも、セッションの引き継ぎや再配分について考慮が必要になる場合がある。 これらの課題に対処するため、最近のWebアプリケーション開発では、サーバー自体をステートレス(状態を持たない)に設計し、セッション情報をデータベースや分散キャッシュ(例えばRedisなど)といった外部の共有ストレージに保存するアプローチが広く採用されている。この方法であれば、どのサーバーがリクエストを処理しても共有ストレージからセッション情報を取得できるため、スティッキーセッションに依存することなく、ロードバランサーは完全に自由にリクエストを分散できるようになり、真に高い可用性とスケーラビリティを実現できる。 しかし、共有ストレージの導入はシステムの複雑性を増すため、すべてのアプリケーションに適しているわけではない。スティッキーセッションは、その導入の容易さから、システム要件や規模に応じて依然として有効なセッション管理手法の一つであり、ロードバランシング環境下でのセッション管理を理解する上で重要な概念である。

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