ストレージサーバ (ストレージサーバ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ストレージサーバ (ストレージサーバ) の読み方
日本語表記
ストレージサーバ (ストレージサーバ)
英語表記
storage server (ストレージサーバー)
ストレージサーバ (ストレージサーバ) の意味や用語解説
ストレージサーバとは、大量のデータを安全かつ効率的に保存し、ネットワークを通じて複数のコンピュータからアクセスできるように設計された、データ保存に特化したサーバである。通常のコンピュータやサーバも内部にデータを保存するストレージを持つが、ストレージサーバは、単にデータを保存するだけでなく、データの集中管理、共有、保護、そして高度な可用性を実現することを主目的として構築される。 企業や組織では、日々膨大な量のデータが生成され、多くのユーザーやアプリケーションがこれらのデータを共有し、利用する必要がある。例えば、顧客情報、業務文書、データベース、仮想マシンイメージ、Webコンテンツなど、その種類は多岐にわたる。もしこれらのデータが個々のコンピュータに分散して保存されていると、データの一貫性を保つのが難しくなったり、バックアップ作業が煩雑になったり、セキュリティ管理が複雑になったりする。ストレージサーバは、このような課題を解決し、複数のコンピュータが一つの共有データプールにアクセスできる環境を提供する。 ストレージサーバには、主に二つの種類がある。一つは「NAS(Network Attached Storage)」、もう一つは「SAN(Storage Area Network)」である。 NASは、ファイル単位でデータを共有する方式のストレージサーバを指す。これは、OSとファイル共有のためのソフトウェアを搭載した専用のコンピュータであり、一般的にTCP/IPネットワークに直接接続される。ユーザーやアプリケーションは、SMB/CIFS(Windows環境)やNFS(Unix/Linux環境)といった標準的なファイル共有プロトコルを用いて、ネットワーク経由でNAS上のファイルやフォルダにアクセスし、データの読み書きを行う。NASは設定が比較的容易で、中小企業でのファイルサーバ、部署内のデータ共有、バックアップデータの一元管理、メディアファイルの保存といった用途で広く利用されている。 一方、SANは、ブロック単位でデータを共有する方式のストレージシステムである。NASが「共有フォルダ」を提供するイメージであるのに対し、SANは「共有ディスク」を提供するイメージに近い。SANは、多くの場合、専用の高速ネットワークであるFibre Channel(FC)や、既存のイーサネット上でFCプロトコルを利用するFibre Channel over Ethernet(FCoE)、あるいはSCSIプロトコルをイーサネット上で利用するiSCSIといった技術を用いて、サーバとストレージデバイスを接続する。SANに接続されたサーバからは、ストレージサーバが提供する記憶領域が、あたかも自身のローカルディスクであるかのように認識される。これにより、OSはブロック単位でストレージに直接アクセスできるため、NASよりも高いデータ転送性能と低いレイテンシ(遅延)を実現できる。大規模なデータベースシステムや、仮想化環境における仮想マシンのディスクイメージの保存など、高いパフォーマンスと信頼性が要求されるシステムで主に利用される。 ストレージサーバの内部では、多くの場合、「RAID(Redundant Array of Independent Disks)」と呼ばれる技術が利用されている。RAIDは、複数の物理ディスクを組み合わせて一つの論理ディスクとして扱い、データを複数のディスクに分散して書き込んだり、パリティ情報と呼ばれる誤り訂正符号を付加したりすることで、データ保護と性能向上を図る。例えば、RAID 5やRAID 6では、一部のディスクが故障しても残りのディスクとパリティ情報からデータを復元できるため、システム停止を伴うことなくディスク交換が可能となる。これにより、データの冗長性(多重化)と可用性(継続して利用できること)が向上し、システム全体の信頼性が高まる。 さらに、ストレージサーバは、データの効率的な管理と保護のための様々な高度な機能を備えていることが多い。例えば、ストレージ領域を実際に使用された分だけ割り当てる「シンプロビジョニング」により、物理容量を効率的に利用できる。また、「スナップショット」機能により、ある時点のストレージの状態を記録し、後でその状態に容易に復旧させることが可能になる。データ重複排除やデータ圧縮機能は、ストレージ容量の消費を抑え、コスト削減に貢献する。遠隔地へのデータレプリケーション(複製)機能は、災害時における事業継続計画(BCP)の重要な要素となる。 システムエンジニアとしてストレージサーバを扱う際には、これらの種類と特性を理解し、システムの要件に合致する最適なストレージソリューションを選定する必要がある。例えば、必要なデータ容量、データへのアクセス頻度、求められる読み書き速度(IOPS)、データの重要度、予算などを考慮し、NASとSANのどちらが適切か、どのようなRAIDレベルを適用するか、といった設計判断を行う。また、導入後も、ストレージの空き容量、性能、RAIDの状態、ネットワークの状態などを継続的に監視し、必要に応じて容量拡張や性能チューニング、バックアップとリストアテストなどの運用保守作業を適切に実施することが、安定したITインフラを維持するために不可欠となる。ストレージサーバは、現代のITシステムにおいて、データの安全性を確保し、ビジネスを支える基盤となる重要な要素である。