ストアードプログラム方式 (ストアードプログラムホウシキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ストアードプログラム方式 (ストアードプログラムホウシキ) の読み方

日本語表記

ストアードプログラム方式 (ストアードプログラムホウシキ)

英語表記

stored program concept (ストアード プログラム コンセプト)

ストアードプログラム方式 (ストアードプログラムホウシキ) の意味や用語解説

ストアードプログラム方式は、現代のデジタルコンピュータが動作するための基本的な設計原則の一つである。この方式は、コンピュータが実行するプログラムと、そのプログラムが処理するデータを、ともに主記憶装置(メインメモリ)に格納してから実行するという考え方である。これにより、一つのハードウェア構成で多様な処理を実行できるという極めて高い汎用性と柔軟性をコンピュータにもたらした。この画期的な概念は、20世紀半ばに数学者ジョン・フォン・ノイマンによって提唱され、以降、今日に至るまでほとんど全てのコンピュータの基礎として機能している。 従来のコンピュータ、すなわち固定プログラム方式を採用していた初期のコンピュータは、特定の計算や処理を行うために、その都度ハードウェアの配線を物理的に変更する必要があった。例えば、ある数値を加算する処理を行うコンピュータが、次に数値を乗算する処理を行うためには、内部の回路を再配線したり、特定の機能を持つ部品を交換したりしなければならなかった。これは、まるで特定の機能を持つ家電製品がその目的のために特化した回路を持っているのと同様で、個々のタスク専用の「専用計算機」として機能していたと言える。処理の内容を変更するたびに、専門家が手作業で膨大な時間と労力をかけて回路を再構築する必要があり、極めて非効率的であった。 これに対し、ストアードプログラム方式は、プログラム自体もデータと同じように数値の集合として表現し、コンピュータの主記憶装置に格納できるとした点が革新的であった。主記憶装置には、プログラムを構成する個々の命令(例えば「数値を加算する」「データをメモリから読み出す」といった指示)と、その命令が処理するデータが、区別なくビット列として配置される。コンピュータの中核部である中央処理装置(CPU)は、主記憶装置から命令を一つずつ順序に従って読み出し(フェッチ)、その命令の内容を理解し(デコード)、そして実際にその処理を実行する(エグゼキュート)というサイクルを繰り返す。この一連の動作によって、CPUは記憶装置内のプログラムを高速に処理し、様々な複雑なタスクをこなす。 この方式の最大の利点は、コンピュータの機能変更が極めて容易になったことである。もはや物理的な配線をいじる必要はなく、単に記憶装置に格納されているプログラムの内容を書き換えるだけで済むようになった。これにより、コンピュータは加減乗除といった基本的な計算だけでなく、文書作成、画像編集、インターネットの閲覧、高度なシミュレーション、人工知能による推論など、現代社会が求めるありとあらゆる用途に対応できる「汎用計算機」へと劇的に進化した。 ストアードプログラム方式は、ソフトウェアという概念を確立し、ハードウェアとソフトウェアが明確に分離されることを可能にした。ハードウェアは汎用的な計算能力を提供し、ソフトウェアがそのハードウェア上で具体的な機能を実現するという分業体制が確立されたのである。これにより、ソフトウェアの開発と進化が独立して進む道が開かれ、情報技術産業の爆発的な発展を促した。また、プログラムの変更が容易になったことで、開発者はソフトウェアを迅速に改良し、新機能を追加したり、バグを修正したりすることが可能になり、製品の品質向上とリリースサイクルの短縮に貢献した。 この方式は、命令とデータが同じ記憶装置に格納され、同じ経路(バス)を通じてCPUとやり取りするという特徴を持つ。この構造は、ジョン・フォン・ノイマンの名を冠して「ノイマン型アーキテクチャ」と呼ばれ、今日のパーソナルコンピュータ、スマートフォン、サーバー、組み込みシステムといったあらゆるデジタル情報機器の基盤となっている。オペレーティングシステム(OS)や様々なアプリケーションソフトウェアがメモリにロードされ、CPUによって実行されるのは、このストアードプログラム方式という基本原理が働いているためである。プログラムの容易な変更可能性は、コンピュータが社会の多様な要求に適応し、進化を続けることを可能にし、現代の情報化社会を支える不可欠な要素となっている。

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