ストーリーポイント (ストーリーポイント) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ストーリーポイント (ストーリーポイント) の読み方

日本語表記

ストーリーポイント (ストーリーポイント)

英語表記

story points (ストーリーポイント)

ストーリーポイント (ストーリーポイント) の意味や用語解説

ストーリーポイントは、アジャイル開発において、ユーザーが求める機能やタスクの作業量を見積もるために用いられる単位である。これは時間(人日や人月など)ではなく、そのタスクを完了させるために必要な相対的な労力、複雑さ、リスク、不確実性などを総合的に考慮した数値である。チームメンバー全員が合意形成の過程を経て、各タスクにストーリーポイントを割り振ることで、共通の認識を持ち、開発計画の精度を高めることを目指す。 システム開発の現場では、タスクの正確な時間見積もりは非常に難しい課題として認識されている。開発者の経験やスキル、タスクの未知の要素、技術的な難易度、外部システムとの連携、予期せぬ問題の発生など、多くの要因が時間見積もりの精度を低下させる。例えば、ベテラン開発者が1日で完了できるタタスクでも、経験の浅い開発者には3日かかるかもしれない。また、新しい技術や複雑なロジックを要するタスクは、初期の見積もりよりも大幅に時間を要することが少なくない。このような時間見積もりの不確実性が、プロジェクトの遅延や計画の破綻に繋がるケースも多々ある。 ストーリーポイントは、このような時間見積もりの課題を解決するために導入された相対的な見積もり手法である。これは、ある基準となるタスクを「2ポイント」などと設定し、他のすべてのタスクをその基準と比較して「基準の半分くらいだから1ポイント」「基準の2倍くらい大変だから4ポイント」といった形で評価する。重要なのは、絶対的な時間ではなく、タスク間の相対的な難易度や労力の比較であるという点だ。この見積もりには、以下の要素が総合的に考慮される。まず、実際に手を動かす量やコードの記述量、テストの工数といった「作業量」。次に、ロジックの複雑さや技術的な難易度、既存システムとの依存関係など「複雑さ」。さらに、未知の技術の導入や外部連携における潜在的な問題など「リスク」。そして、要件が曖昧であったり、技術的な検証が必要であったり、予測できない問題が発生する可能性など「不確実性」である。 ストーリーポイントを割り振る際には、フィボナッチ数列(1, 2, 3, 5, 8, 13, 21...)のような数列が用いられることが多い。これは、タスクが大きくなればなるほど、見積もりの不確実性が増すため、ポイントの区切りを徐々に大きくすることで、見積もりの曖昧さを許容する意図がある。例えば、「4ポイント」という選択肢を設けず、「3」か「5」かを選ぶことで、チームはより深くタスクについて議論し、その難易度について明確な合意形成を促される。見積もりプロセスとしては、プランニングポーカーと呼ばれる手法が一般的である。これは、チームメンバーが各自でストーリーポイントを見積もり、同時にカードを提示する。意見の相違があった場合には、その理由を議論し、最終的に全員が納得するポイントに合意するまで話し合いを重ねる。このプロセスを通じて、チーム全体でタスクへの理解を深め、隠れた情報や異なる視点を共有することが可能になる。 ストーリーポイントは「ベロシティ」と組み合わせて活用される。ベロシティとは、チームが一定期間(通常は1スプリント)に完了できたストーリーポイントの合計値のことである。例えば、あるチームが1スプリントで30ポイント分のタスクを完了できた場合、そのチームのベロシティは30となる。過去数スプリントのベロシティの平均値を算出することで、チームの作業ペースを把握できる。このベロシティを基に、次のスプリントでどれくらいのストーリーポイントのタスクを引き受けるかを計画したり、プロダクト全体の残りのストーリーポイントからリリースまでの必要スプリント数を予測したりすることが可能になる。ベロシティは、チームの生産性を客観的に示す指標であり、スプリント計画やリリース計画をより現実的なものにする上で非常に重要な役割を果たす。 ストーリーポイントを活用する主な利点は、見積もり精度の向上、チーム内での共通認識の形成、そしてチームの自己組織化の促進である。相対的な見積もりは、時間見積もりよりも精度が高まる傾向があり、チーム全体で議論することで、タスクへの理解が深まり、認識のズレが減少する。また、チーム自身が作業量を見積もり、計画を立てることで、自律性と責任感が高まる。これにより、開発の早い段階で不確実な要素を特定し、リスクに対応する機会が生まれる。そして、時間ではなく「価値」を生み出すための作業の相対的な大きさに焦点を当てることで、ユーザーにとっての価値最大化に貢献できる。 ただし、ストーリーポイントを利用する上ではいくつかの注意点がある。最も重要なのは、ストーリーポイントを時間換算しないことである。ストーリーポイントはあくまで相対的な見積もりであり、時間換算しようとすると、時間見積もりの持つ問題点が再び発生してしまう。また、チームごとに基準やベロシティが異なるため、異なるチーム間でストーリーポイントやベロシティを比較しても意味がない。各チームは、自身のペースで成長し、改善していくべきである。あくまでストーリーポイントは不確実性を含む予測値であり、絶対的な確約ではないことを理解し、状況の変化に応じて柔軟に見直しを行う姿勢が求められる。

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