構造体 (コウゾウタイ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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構造体 (コウゾウタイ) の読み方

日本語表記

こうぞうたい (コウゾウタイ)

英語表記

struct (ストラクト)

構造体 (コウゾウタイ) の意味や用語解説

構造体は、プログラミングにおいて使用されるデータ型の一種である。その最大の特徴は、文字列型、整数型、浮動小数点数型といった、種類が異なる複数のデータを一つにまとめて、プログラマが独自の新しいデータ型を定義できる点にある。現実世界の「モノ」や「概念」は、多くの場合、単一のデータではなく、複数の属性情報の組み合わせで表現される。例えば、「書籍」という情報をプログラムで扱いたい場合、書名(文字列)、著者名(文字列)、価格(整数)、出版年(整数)など、様々な種類のデータが必要となる。これらのデータをそれぞれ独立した変数として管理すると、変数が増えるにつれて、どの変数がどの書籍の情報なのかが分かりにくくなり、プログラムが複雑化し、管理が困難になる。構造体は、このような関連性の高いデータを一つのグループとして束ねるための仕組みである。先の例で言えば、「書籍」という名前の構造体を定義し、その内部に書名、著者名、価格、出版年といった要素(メンバーやフィールドと呼ばれる)を含めることができる。これにより、「書籍」という一つのまとまりとしてデータを扱えるようになり、プログラムの構造が整理され、可読性や保守性が大幅に向上する。 構造体は、特にC言語やC++、Go、Rustといった多くのプログラミング言語で基本的な機能としてサポートされている。構造体を定義するには、一般的に`struct`というキーワードを用い、新しい型名と、その型が内包するメンバーのリストを記述する。一度定義された構造体は、整数型(int)や文字列型(string)など、言語に組み込まれている基本的なデータ型と同様に、変数を宣言するための「型」として使用できる。このようにして宣言され、メモリ上に確保された構造体の実体をインスタンスと呼ぶ。構造体のインスタンスが持つ個々のメンバーにアクセスするには、通常、ドット演算子(.)が用いられる。例えば、`book1`という書籍構造体のインスタンスがある場合、`book1.title`と記述すれば書名に、`book1.price`と記述すれば価格にアクセスし、値を参照したり代入したりすることが可能である。メモリ上では、構造体の各メンバーは、定義された順序に従って連続した領域に配置されるのが一般的である。これにより、関連するデータが物理的に近い場所に集まるため、CPUのキャッシュ効率が向上し、データアクセスが高速になるという利点も生まれる。 構造体と配列は、複数のデータを扱うという点で似ているが、明確な違いが存在する。配列は、整数型のみ、あるいは文字列型のみといった「同じデータ型」の要素を複数集めたものである。一方で、構造体は前述の通り「異なるデータ型」の要素を自由に組み合わせることができる。この特性の違いから、同じ性質のデータの集合には配列を、異なる性質を持つが一つの概念を構成するデータの集合には構造体を用いるという使い分けがされる。また、構造体はオブジェクト指向プログラミングにおける「クラス」の基礎となる概念でもある。クラスは、構造体のようにデータをまとめる機能に加え、そのデータを操作するための手続き(関数)、すなわちメソッドを併せ持つことができる。これにより、データとその振る舞いを一体化させることが可能となる。 構造体の実用的な活用例は多岐にわたる。最も重要なのは、関連データを一つの単位としてカプセル化し、プログラムの構造を論理的で分かりやすくすることである。また、関数とのデータの受け渡しにおいても非常に有用である。複数の値を関数に渡したり、関数から返したりしたい場合、それぞれの値を個別の引数や戻り値として扱うとコードが煩雑になる。しかし、それらの値を一つの構造体にまとめて受け渡しすることで、関数のインターフェースを簡潔に保つことができる。さらに、連結リストや木構造といった、より高度で複雑なデータ構造を実装する際の基本的な構成要素(ノード)として、構造体は不可欠な役割を果たす。このように、構造体は、個々のデータを意味のある情報単位へと昇華させ、プログラム全体の設計をより堅牢で効率的なものにするための、極めて重要で基本的な仕組みなのである。

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