スイッチングループ (スイッチングループ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

スイッチングループ (スイッチングループ) の読み方

日本語表記

スイッチングループ (スイッチングループ)

英語表記

switching group (スイッチンググループ)

スイッチングループ (スイッチングループ) の意味や用語解説

スイッチングループとは、ネットワーク機器であるスイッチにおいて、複数の物理ポートをひとまとめにし、論理的に一つのグループとして扱う技術である。この技術は、通常「ポートチャネル」や「リンクアグリゲーション」といった名称で実装され、Cisco社製品では「EtherChannel」と呼ばれることもあるが、基本的な目的と機能は共通している。その主な目的は、通信帯域の拡張と、ネットワークの冗長性（耐障害性）の向上にある。 現代のネットワークでは、高速で安定した通信が不可欠である。特に、サーバーとスイッチ間や、複数のスイッチ同士を結ぶ幹線部分（アップリンク）では、大量のデータが継続的にやり取りされるため、一つの物理ポートが提供する通信帯域だけでは、すぐに性能の限界に達し、ネットワーク全体のボトルネックとなる可能性がある。例えば、1Gbpsのイーサネットポート一本では、サーバーが生成するすべてのトラフィックを処理しきれない場合がある。スイッチングループを導入することで、複数の1Gbpsポート（例えば4本）を論理的に束ね、あたかも4Gbpsの単一の高速リンクであるかのように扱うことが可能となる。これにより、ネットワークの通信容量を大幅に増強し、データ転送の効率を向上させることができる。 また、単一の物理ポートやケーブルに障害が発生した場合の信頼性の問題も、スイッチングループが解決する重要な課題である。もし、高速リンクを一本のケーブルだけで構成していた場合、そのケーブルが断線したり、接続するポートが故障したりすると、その経路を通るすべての通信が途絶え、サービスが停止してしまう。これは「単一障害点（Single Point of Failure）」と呼ばれ、システム全体の可用性を低下させる大きな要因となる。スイッチングループは、複数の物理ポートを束ねることで、この単一障害点を排除する。束ねられたリンクの中のどれか一本に障害が発生しても、残りの健全なリンクが自動的に通信を引き継ぐことで、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑え、サービスを継続させることが可能となる。この仕組みは「フェイルオーバー」と呼ばれ、ネットワークの高可用性を実現するために不可欠な機能である。 具体的な動作原理として、スイッチングループでは「ロードバランシング」と「フェイルオーバー」の二つの主要な機能が協調して動作する。ロードバランシングとは、束ねられた複数の物理リンクに、データトラフィックを分散して流す仕組みである。単にラウンドロビンでパケットを順番に送るのではなく、送信元と宛先のMACアドレス、IPアドレス、あるいはTCP/UDPポート番号といった、パケットのヘッダー情報に基づいて、どの物理リンクを使用するかをインテリジェントに決定する。これにより、同じ通信セッション（例えば、あるPCとあるサーバー間の通信）のパケットが常に同じ物理リンクを通るように制御され、パケットの順序が入れ替わることで発生する通信エラーや再送処理を防ぎ、効率的かつ安定した通信を維持する。例えば、異なるデバイスからの通信は異なる物理リンクに振り分けられることで、各リンクの利用率を均等化し、全体の通信性能を最大限に引き出す。 フェイルオーバーは、束ねられた物理リンクのいずれかに障害が発生した際に発動する。スイッチは物理リンクの状態を常に監視しており、リンクの切断やポートの故障を検知すると、直ちにそのリンクをグループから除外し、残りの健全なリンクだけで通信を継続するよう、トラフィックの転送経路を自動的に再構成する。この切り替えは非常に高速に行われるため、ユーザーは通信が一時的に途絶えたことにほとんど気づくことなく、ネットワークサービスを継続して利用できる。これにより、単一の機器故障やケーブル断線がシステム全体の停止につながるリスクを大幅に軽減できる。 スイッチングループを設定する際には、主にLACP（Link Aggregation Control Protocol）やPAgP（Port Aggregation Protocol）といったプロトコルが利用される。LACPはIEEE 802.3adとして標準化されたプロトコルであり、異なるベンダーのスイッチ間でも相互運用が可能である。一方、PAgPはCisco社独自のプロトコルである。これらのプロトコルは、スイッチ間でリンクアグリゲーションの情報を自動的に交換し、グループの確立や状態の監視、障害時のリカバリなどを自律的に行う。手動でグループを構成する設定も可能だが、設定ミスによる予期せぬ挙動やトラブルを防ぐため、通常はこれらのプロトコルを利用して動的にグループを形成することが推奨される。 設定上の注意点として、スイッチングループを構成するすべての物理ポートは、同じ通信速度（例：1Gbps）、同じデュプレックスモード（例：全二重）、そして同じVLAN設定を持つ必要がある。もしこれらの設定が一致しない場合、グループが正しく形成されなかったり、通信障害を引き起こしたりする可能性がある。また、VLAN（Virtual LAN）との組み合わせも一般的である。例えば、サーバーが複数のVLANに所属する場合、サーバーとスイッチ間のスイッチングループは、複数のVLANのトラフィックを一つの論理リンク上で転送できるように、トランクポートとして構成される。これにより、サーバー側のネットワークインターフェースカード（NIC）やスイッチのポート数を節約しつつ、論理的なネットワーク分離を維持することが可能となる。 スイッチングループは、データセンター内のサーバーファームとコアスイッチ間、あるいは複数のフロアを接続するアクセススイッチとディストリビューションスイッチ間、さらには異なるラック内のスイッチ同士の接続など、特に高速かつ安定した通信が求められるあらゆる場面で広く利用されている。これにより、ネットワーク全体のパフォーマンスと信頼性を飛躍的に向上させ、現代の複雑で要求の高いITインフラを支える基盤技術の一つとなっている。