シンクロナスDRAM (シンクロナスディーラム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シンクロナスDRAM (シンクロナスディーラム) の読み方

日本語表記

同期式DRAM (ドウキシキディーラム)

英語表記

Synchronous DRAM (シンクロナスディーラム)

シンクロナスDRAM (シンクロナスディーラム) の意味や用語解説

シンクロナスDRAM(Synchronous DRAM、略称SDRAM)は、コンピュータのメインメモリとして広く利用される半導体メモリの一種である。従来のDRAMが非同期(アシンクロナス)動作であったのに対し、SDRAMはシステムバスのクロック信号に同期して動作する点が最大の特徴である。これにより、CPUとメモリ間のデータ転送効率が大幅に向上し、システム全体の性能向上に貢献した。 従来のDRAMは、CPUやメモリコントローラからの要求に応じて、データの読み書きを行うたびに、内部のタイミング調整のために待ち時間が発生していた。具体的には、メモリのアドレス指定からデータ出力まで、CASレイテンシ(列アドレスストローブ待ち時間)やRASレイテンシ(行アドレスストローブ待ち時間)、プリチャージ時間など、複数のステップで構成される一連の処理が完了するまで待つ必要があった。これらの待ち時間はCPUの動作速度に比べて長く、高速化するCPUの処理能力に対してメモリがデータ供給のボトルネックとなり、システム全体の性能を低下させる主要因となっていた。CPUが1秒間に何十億回もの命令を実行できる時代になっても、メモリがデータを提供するために数百ナノ秒かかるようでは、CPUは多くの時間を遊ばせてしまうことになる。 この問題を解決するために登場したのがシンクロナスDRAMである。SDRAMは、CPUやメモリコントローラから供給されるシステムクロック信号に完全に同期して動作する。これにより、メモリコントローラはメモリの動作タイミングを正確に予測できるようになり、制御が非常に単純化された。SDRAMの内部では、データ転送がパイプライン処理の概念を取り入れて行われる。これは、複数の処理ステップを並行して実行することで、全体のスループットを向上させる技術である。たとえば、最初のデータ要求が処理されている間に、次のデータ要求の準備を開始するといった具合である。 SDRAMの具体的な動作原理を見てみよう。まず、メモリコントローラがSDRAMに対して、読み出しまたは書き込みのコマンドとアドレス情報をクロックに同期して発行する。SDRAMは、このコマンドとアドレスを受け取ると、内部で指定されたメモリセルにアクセスを開始する。従来のDRAMであれば、ここでアクセス完了まで待機する必要があったが、SDRAMではクロックに同期した一定の周期でデータが出力されるようになる。この連続したデータ出力のメカニズムをバースト転送と呼ぶ。一度アドレスが指定されれば、その後はクロック信号に合わせて次々と連続したデータを高速で出力できるため、大量のデータを一度に転送する際に非常に効率的である。 SDRAMがパイプライン処理とバースト転送を実現できた背景には、内部構造の進化がある。SDRAMは、複数の独立した「バンク」と呼ばれるメモリ領域を持つことが一般的である。これにより、あるバンクからデータを読み出している間に、別のバンクでプリチャージ(次のアクセス準備)を行うといった並列処理が可能になる。この並列処理能力が、従来のDRAMが抱えていた待ち時間の問題を大幅に軽減し、実効的なデータ転送速度の向上に寄与した。メモリコントローラは、これらのバンクを効率的に管理することで、高いデータ転送帯域幅を実現できるようになった。 SDRAMの登場は、PCの性能向上に大きな影響を与えた。それまでのDRAMがボトルネックとなっていたメモリサブシステムの性能を飛躍的に高め、CPUの高速化の恩恵を十分に享受できるようになったのである。SDRAMの登場後も、メモリ技術は進化を続けた。SDRAMの基本アーキテクチャを受け継ぎながら、さらにデータ転送速度を向上させたのがDDR SDRAM(Double Data Rate SDRAM)である。DDR SDRAMは、クロック信号の立ち上がりと立ち下がりの両方のエッジでデータを転送することで、同じクロック周波数でも実質的に2倍のデータ転送速度を実現した。このため、元のSDRAMはDDR SDRAMと区別するためにSDR SDRAM(Single Data Rate SDRAM)と呼ばれるようになった。その後もDDR2、DDR3、DDR4、DDR5と進化を続け、現代のコンピュータシステムに不可欠な高速メモリ技術の基盤となっている。シンクロナスDRAMの登場は、メモリの歴史における重要なマイルストーンであり、現代の高性能コンピュータシステムの礎を築いた技術の一つと言える。

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