システム運用 (システムウ ンヨウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
システム運用 (システムウ ンヨウ) の読み方
日本語表記
システムうんよう (システムウンヨウ)
英語表記
system operation (システムオペレーション)
システム運用 (システムウ ンヨウ) の意味や用語解説
システム運用とは、構築された情報システムが、利用者の期待に応え、本来の機能を常に安定して提供し続けられるように維持管理する一連の活動全般を指す。システム開発が新しいシステムを企画し、設計・構築する「創る」工程であるのに対し、システム運用は完成したシステムが継続的に「動く」ことを支える工程と言える。企業や組織において、情報システムは業務の中核を担う基盤であり、その安定稼働はビジネスの継続性、信頼性、そして競争力を左右する極めて重要な要素である。そのため、システム運用は単にシステムが動いていることを確認するだけでなく、将来の利用状況や変化を見越した計画的な管理も含まれる。 システム運用の具体的な業務内容は多岐にわたる。まず、システムの健全性を保つ上で最も基本的な活動の一つが「監視」である。サーバーのCPU使用率、メモリ使用量、ディスクの空き容量、ネットワークのトラフィック、アプリケーションの応答時間、データベースの接続状況など、システムの様々なメトリックを常時監視し、異常の兆候を早期に発見することが求められる。監視ツールを活用して自動的に検知・通知する仕組みが一般的だ。 次に、監視によって異常が検知された場合や、利用者からの報告があった場合に実施されるのが「障害対応」である。発生した問題の原因を特定し、迅速に復旧させ、システムを正常な状態に戻す。障害の緊急度や影響範囲に応じて対応プロセスが定義されており、再発防止策の検討と実施も重要な要素となる。例えば、過去の障害事例を分析し、システムや運用手順の改善に繋げることも障害対応の一環である。 データ保護も運用の要である。「バックアップ」は、システムに保存されている重要なデータを定期的に複製し、別の場所に保管する作業である。災害や機器の故障、誤操作などによってデータが失われた場合でも、バックアップデータからシステムを「リカバリ」できるよう、事前に手順を確立しておく必要がある。バックアップの頻度や保存期間、リカバリ時間の目標値(RTO)やデータ損失許容目標値(RPO)を定め、それに沿って運用される。 システムのセキュリティを維持するためには、「パッチ適用」や「バージョンアップ」が欠かせない。OSやミドルウェア、アプリケーションに発見されたセキュリティ脆弱性を修正するパッチを適用したり、機能改善や不具合修正のために新しいバージョンへ更新したりする作業である。これらの作業はシステムの停止を伴う場合があるため、計画的に、かつ影響範囲を最小限に抑えながら実施される。 システムのパフォーマンスを最適に保つことも運用の重要な役割である。「性能管理」では、システムの応答時間や処理能力を定期的に測定し、ボトルネックとなっている箇所を特定する。必要に応じてサーバーの増強やデータベースのチューニング、アプリケーションの改善提案などを行い、システムが常に高い性能を発揮できるよう維持する。また、将来的なデータ量やアクセス数の増加を見越して、必要なリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク帯域など)を事前に計画・確保する「キャパシティプランニング」も含まれる。 システムを構成する要素を正確に把握し、管理する「構成管理」も重要である。ハードウェアの仕様、ソフトウェアのバージョン、ネットワーク設定、各リソースの依存関係など、システムのあらゆる構成情報を一元的に管理し、変更履歴を追跡できるようにする。これにより、トラブル発生時の原因特定が迅速化したり、変更による予期せぬ影響を防止したりすることができる。 定期的に実行されるバッチ処理やデータ連携処理などを適切に管理する「ジョブ管理」も運用の範疇である。決められた順序とタイミングで処理が正確に実行されているかを確認し、エラーが発生した場合は対応する。 また、システムを安全に利用するための「セキュリティ管理」は、情報漏洩や不正アクセスからシステムとデータを守るために不可欠である。アクセス権限の管理、ファイアウォールの設定、侵入検知システムの運用、セキュリティログの監視・分析、定期的な脆弱性診断などが含まれる。 システム運用においては、これらの多様な業務を効率的かつ確実に実施するため、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)のような運用管理のベストプラクティスをまとめたフレームワークが活用されることが多い。ITILは、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、サービスレベル管理など、運用における様々なプロセスを標準化し、高品質なITサービス提供を支援する。 近年では、人手による作業を削減し、ヒューマンエラーを防止するために「運用自動化」が進められている。監視ツールの自動通知機能だけでなく、障害発生時の自動復旧スクリプト、パッチの自動適用、バックアップの自動実行、デプロイ(配備)作業の自動化など、様々な領域で自動化技術が導入されている。これにより、運用チームはより戦略的かつ高度な業務に注力できるようになる。 システムエンジニアを目指す者にとって、システム運用の知識は極めて重要である。開発したシステムが実際に稼働し続ける上でどのような課題が発生しうるのか、どのような手間がかかるのかを理解することで、開発段階から運用しやすい、保守性の高いシステムを設計・構築できるようになる。運用の視点を取り入れることで、システムのライフサイクル全体を見通した、より実践的なスキルを身につけることができるのだ。安定稼働を支え、ビジネスを継続させるシステム運用は、現代のIT社会において不可欠な活動であり続けている。