時分割多重化 (ジブンカツデジューモクカ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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時分割多重化 (ジブンカツデジューモクカ) の読み方

日本語表記

時分割多重化 (ジブンカツデジュウデカ)

英語表記

TDM (ティーディーエム)

時分割多重化 (ジブンカツデジューモクカ) の意味や用語解説

「時分割多重化」とは、複数のデジタル信号を一つの通信路で同時に送受信するための技術の一つである。英語ではTime Division Multiplexingと呼ばれ、その頭文字をとってTDMと略されることもある。この技術の基本的な考え方は、高速な通信路の時間を細かく分割し、それぞれの短い時間区間(時間スロット)に異なる送信元からのデータを割り当てることで、あたかも複数の通信が並行して行われているかのように見せる点にある。これにより、限られた通信資源を効率的に利用し、多くのユーザーやデバイスが同時に通信を行うことを可能にする。 詳細に入る。時分割多重化の原理は、送信側と受信側が厳密に同期した時間に基づいてデータの送受信を行う点にある。まず、一つの通信路が提供できる総伝送能力(帯域幅)を、複数の利用者で共有することになる。この共有方法が時間による分割である。具体的には、送信装置が複数の入力データストリームを受け取り、それぞれを極めて短い時間の区間に区切って、順番に一つの通信路へと送り出す。この短い時間区間を「時間スロット」と呼ぶ。例えば、通信路が1秒間に100のデータを送れる能力を持っている場合、利用者Aのデータを最初の0.01秒、利用者Bのデータを次の0.01秒、利用者Cのデータをその次の0.01秒といった具合に割り当てていく。この一連の割り当てが完了すると、再び利用者Aのデータへと戻り、同じサイクルを繰り返す。受信側では、送信側と同じタイミングで各時間スロットを監視し、決められた時間スロットに到着したデータを、あらかじめ割り当てられた利用者へと振り分けることで、元のデータストリームを復元する。この送信側と受信側の時間軸の同期が、時分割多重化の動作において極めて重要となる。同期がずれると、データが誤った受信者へ送られたり、データの一部が失われたりする可能性があるため、送信装置と受信装置間で正確な同期信号の交換や、内部クロックによる厳密な時間管理が不可欠である。 時分割多重化には、大きく分けて同期式TDMと非同期式TDM(統計多重化)の二種類が存在する。同期式TDMでは、各ユーザーやチャネルに固定された時間スロットが常に割り当てられる。たとえ特定のユーザーが送信するデータがない場合でも、そのユーザーに割り当てられた時間スロットは空のまま送信され、他のユーザーがその時間スロットを一時的に利用することはできない。この方式の利点は、各ユーザーに対して一定の帯域幅が保証されるため、伝送遅延が予測しやすく、音声通話などのリアルタイム性が要求されるアプリケーションに適している点である。過去の固定電話網(PSTN)のデジタル回線(T1/E1回線など)や、第2世代携帯電話(2G)のGSM方式などで広く採用されてきた。 一方、非同期式TDM、または統計多重化は、同期式TDMの課題である空きスロットの無駄を解消するために考案された。この方式では、時間スロットが固定的に割り当てられるのではなく、データを送信したいユーザーが現れた際に動的に時間スロットが割り当てられる。具体的には、送信したいデータがあるユーザーだけが利用可能な時間スロットを奪い合う形になる。データが存在しないユーザーにはスロットが割り当てられないため、回線の利用効率が大幅に向上する。ただし、複数のユーザーが同時に大量のデータを送信しようとすると、利用可能な時間スロットが不足し、データが一時的にバッファに蓄積されたり、遅延が増大したりする可能性がある。このような特性から、非同期式TDMは、データ通信量の変動が大きいインターネット(IPネットワーク)などで広く利用されており、イーサネットやATM(Asynchronous Transfer Mode)などの技術の基盤となっている。一般的に、パケット交換と呼ばれる技術は、この統計多重化の考え方に基づいて実装されていることが多い。 時分割多重化の利点としては、まず回線効率の向上が挙げられる。専用の回線を多数引くよりも、一本の高速回線を多重化して利用する方が経済的であり、設備コストも削減できる。また、デジタル信号処理に基づいており、比較的ノイズに強く、データの品質を維持しやすいという特性も持つ。同期式TDMの場合は、各通信が独立した時間スロットで分離されるため、相互干渉が少なく、安定した通信が期待できる。欠点としては、同期式TDMの場合、利用されていない時間スロットが無駄になることが挙げられる。これは、回線が提供する総帯域幅を十分に使い切れない可能性を意味する。また、非同期式TDMの場合は、トラフィックの混雑時にデータの遅延やパケット損失が発生するリスクがあるため、Quality of Service (QoS) の設計が重要となる。 現代の通信システムでは、純粋な同期式TDMがそのまま使われる場面は減少傾向にあるが、その概念は様々な形で応用されている。例えば、光ファイバーを用いた加入者系ネットワークであるPON(Passive Optical Network)の一部では、上り方向(ユーザーから局へ)の通信において、ユーザーごとに送信タイミングをずらすことで、衝突を回避し、光ファイバーを共有する時分割多重アクセス(TDMA)が採用されている。これはTDMの一種とみなすことができる。また、無線通信における多重化技術の一部としても、TDMの原理が応用されており、複数のユーザーが同じ周波数帯域を時間を区切って利用する方式が存在する。 時分割多重化は、現代のデジタル通信において非常に基本的な概念であり、その原理や応用は、システムエンジニアが通信システムの設計やトラブルシューティングを行う上で不可欠な知識となる。限られた通信資源をいかに効率良く、かつ安定して利用するかという課題に対する、一つの重要な解決策として、その価値は今もなお大きい。

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