終端抵抗 (シュウタンテイコウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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終端抵抗 (シュウタンテイコウ) の読み方

日本語表記

終端抵抗 (シュウタンテイコウ)

英語表記

Termination resistor (ターミネーションレジスタ)

終端抵抗 (シュウタンテイコウ) の意味や用語解説

終端抵抗とは、主に電気信号を伝送するケーブルや配線の末端に接続される抵抗器である。その主要な目的は、信号の反射を防ぎ、通信品質を安定させることにある。デジタルデータ通信や高速なアナログ信号伝送において、信号の整合性を保つ上で極めて重要な役割を担っている。システムエンジニアにとって、特に物理層のトラブルシューティングやネットワーク設計において、終端抵抗の概念は不可欠な知識となる。 電気信号は、ケーブル内をほぼ光速に近い速度で伝播する。しかし、信号がケーブルの終端に到達した際、そのケーブルが物理的に終端されている、あるいは別の機器に接続されている場合、信号はそこでインピーダンス(交流に対する抵抗値のようなもの)の変化に遭遇する。ケーブルの特性インピーダンスと異なるインピーダンスに遭遇すると、信号の一部が吸収されず、元の経路を逆方向に跳ね返ってしまう現象が発生する。これが「信号の反射」である。もしケーブルの終端が開放状態(オープン)であれば、信号はほぼ完全に反射する。逆に短絡状態(ショート)であれば、信号は位相が反転して反射する。これらの反射波は、ケーブル内を往復し、次に送信される信号と衝突したり、受信側で元の信号と重なり合ったりすることで、信号の波形を歪ませる原因となる。 信号の波形が歪むと、デジタル信号であれば「0」と「1」の区別が曖昧になり、データの誤認識やエラーを引き起こす。例えば、反射波が元の信号に重なることで、信号の電圧レベルが一時的に高くなりすぎる「オーバーシュート」や、低くなりすぎる「アンダーシュート」が発生する。また、反射波が複数回ケーブル内を往復することで、信号の立ち上がりや立ち下がりの部分に複数の小さな波が発生する「リンギング」と呼ばれる現象も起こる。これらの現象は、受信側が正確な信号をサンプリングするタイミングを狂わせ、ビットエラー率の増加やデータ破損、ひいては通信の不安定化やシステムダウンに繋がる可能性がある。特に高速な通信システムでは、信号の伝送時間が短くなるため、反射波が元の信号に与える影響が顕著になり、その重要性は増大する。 そこで終端抵抗が用いられる。終端抵抗は、ケーブルの「特性インピーダンス」とほぼ等しい抵抗値を持ち、ケーブルの物理的な終端に接続される。これにより、ケーブルの特性インピーダンスと終端抵抗のインピーダンスが整合され、信号が終端に到達した際にエネルギーが効率良く消費される。信号エネルギーが抵抗によって熱として消費されることで、反射波の発生を極めて効果的に抑制する。あたかも信号が抵抗によって吸収され、それ以上進むことができなくなるような状態を作り出すと言える。このインピーダンス整合によって、信号の波形はクリアに保たれ、リンギングやオーバーシュート、アンダーシュートといった波形の歪みが大幅に低減される。結果として、受信側は安定した正確な信号を受け取ることができ、システムの信頼性と性能が向上する。 終端抵抗は、主にバス型トポロジーを持つ通信システムで利用されることが多い。バス型通信では、一本の共通ケーブルに複数のデバイスが接続されるため、ケーブルの物理的な両端で信号の反射が発生しやすい。代表的な例としては、SCSI(Small Computer System Interface)、CAN(Controller Area Network)バス、RS-485などのシリアル通信バスが挙げられる。これらのシステムでは、バスの物理的な両端に指定された値の終端抵抗を接続することがプロトコルや規格によって義務付けられている場合が多い。例えば、SCSIバスでは一般的に90Ωから132Ωの抵抗が、CANバスでは120Ωの抵抗が使用される。適切な終端抵抗が接続されていない場合、これらのバスシステムは正常に動作しないか、動作しても極めて不安定になる。 終端抵抗の選定においては、使用するケーブルや通信プロトコルの特性インピーダンスに合致した値を選ぶことが極めて重要である。抵抗値が適切でない場合、例えば抵抗値が高すぎる「未終端」の状態では反射が十分に抑制されず、抵抗値が低すぎる「過終端」の状態では信号レベルが低下しすぎたり、やはり反射が発生したりすることがある。いずれの場合も、信号品質の劣化や通信エラーの原因となるため、注意が必要だ。また、終端抵抗は単に抵抗値を合わせるだけでなく、場合によっては、信号の直流成分を考慮してコンデンサと組み合わせたRC終端や、より複雑なアクティブ終端方式が採用されることもあるが、基本的な原理は信号反射の抑制にある。高速化が進む現代の通信システムにおいて、終端抵抗は信号の整合性を保ち、信頼性の高いデータ通信を実現するための基礎的かつ不可欠な要素であり、システム設計や実装段階でのその有無と適切な値の確認は、システムエンジニアの重要な業務の一つとなる。

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