シックプロビジョニング (シックプロビジョニング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
シックプロビジョニング (シックプロビジョニング) の読み方
日本語表記
シックプロビジョニング (シックプロビジョニング)
英語表記
Thick provisioning (シックプロビジョニング)
シックプロビジョニング (シックプロビジョニング) の意味や用語解説
シックプロビジョニングとは、ストレージ仮想化技術における物理ストレージの割り当て方式の一つだ。ストレージを利用する前に、あらかじめ必要な容量をすべて割り当てる方式を指す。 シックプロビジョニングの概要を説明しよう。ストレージシステムは、サーバやアプリケーションがデータを保存するための場所を提供する。仮想化技術を用いることで、物理的なストレージを抽象化し、柔軟に容量を割り当てることが可能になる。シックプロビジョニングはこの容量割り当ての際に、将来的に必要となるであろう容量を予測し、それを最初から割り当てるという考え方に基づいている。例えば、1TBのストレージが必要になると予測される仮想マシンに対し、最初から1TBの物理ストレージを割り当てる、といった具合だ。 シックプロビジョニングの主な目的は、パフォーマンスの安定性と可用性の確保だ。必要な容量があらかじめ割り当てられているため、データの書き込み時にストレージ容量が不足する心配がない。また、容量拡張のための作業が不要なため、システム運用中のパフォーマンス低下を最小限に抑えることができる。特に、データベースや基幹システムなど、高いパフォーマンスと可用性が求められる環境に適していると言えるだろう。 次に、シックプロビジョニングの詳細について解説する。シックプロビジョニングは、さらに「Eager Zeroed Thick」と「Lazy Zeroed Thick」の2種類に分類できる。 Eager Zeroed Thickは、割り当てられた領域全体に事前にゼロを書き込む方式だ。これにより、初めてデータが書き込まれる際にゼロ書き込み処理が発生しないため、パフォーマンスが安定する。一方で、初期割り当てに時間がかかるというデメリットもある。主に、非常に高いパフォーマンスが求められる環境や、セキュリティ要件が厳しい環境で使用されることが多い。ゼロ書き込みによって、以前に存在したデータを完全に消去することで、情報漏洩のリスクを低減できるためだ。 Lazy Zeroed Thickは、割り当てられた領域にデータが実際に書き込まれるまでゼロ書き込みを行わない方式だ。Eager Zeroed Thickと比較して、初期割り当てにかかる時間が短いというメリットがある。しかし、初めてデータが書き込まれる際にゼロ書き込み処理が発生するため、その時点でのパフォーマンスが低下する可能性がある。主に、初期割り当てのスピードを重視する場合や、それほど高いパフォーマンスが要求されない環境で使用される。 シックプロビジョニングのメリットとしては、まず、パフォーマンスの安定性が挙げられる。必要な容量が事前に割り当てられているため、データの書き込み時にストレージ容量不足によるパフォーマンス低下が発生しにくい。また、ストレージ管理の簡素化もメリットの一つだ。容量不足を考慮する必要がないため、ストレージ管理者の負担を軽減できる。さらに、可用性の向上にも貢献する。ストレージ容量不足によるシステム停止のリスクを低減できるため、システムの安定稼働に繋がる。 一方で、シックプロビジョニングにはデメリットも存在する。最も大きなデメリットは、ストレージ効率の悪さだ。実際には使用されない容量もあらかじめ割り当ててしまうため、物理ストレージの利用効率が低下する。例えば、1TBのストレージを割り当てたものの、実際には500GBしか使用しない場合、残りの500GBは無駄になってしまう。また、初期投資が高くなる傾向がある。将来的な容量を見越してストレージを購入する必要があるため、初期投資額が大きくなる可能性がある。 シックプロビジョニングと対照的な技術として、シンプロビジョニングがある。シンプロビジョニングは、必要な容量をオンデマンドで割り当てる方式だ。ストレージの利用効率を高めることができるが、容量不足によるパフォーマンス低下のリスクがある。どちらの方式を選択するかは、システムの要件やストレージの使用状況、コストなどを考慮して慎重に判断する必要がある。 まとめると、シックプロビジョニングは、パフォーマンスの安定性と可用性を重視するシステムに適したストレージ割り当て方式だ。Eager Zeroed ThickとLazy Zeroed Thickの2種類があり、それぞれ特徴が異なる。ストレージ効率の悪さや初期投資の高さといったデメリットもあるため、システム要件を十分に検討した上で、適切なストレージ割り当て方式を選択することが重要だ。ストレージ仮想化技術の理解を深める上で、シックプロビジョニングの概念は不可欠と言えるだろう。