スレッド (スレッド) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スレッド (スレッド) の読み方

日本語表記

スレッド (スレッド)

英語表記

thread (スレッド)

スレッド (スレッド) の意味や用語解説

スレッドとは、オペレーティングシステム(OS)におけるプログラム処理の最小実行単位である。コンピュータ上でアプリケーションなどのプログラムを実行すると、OSはまずそのプログラムのためにメモリ空間やCPU時間といったリソースを割り当てる。このリソースが割り当てられたプログラムの実行単位を「プロセス」と呼ぶ。スレッドは、そのプロセスという大きな枠組みの中で、実際にCPUの命令を一つずつ実行していく一連の処理の流れを指すものである。一つのプロセスは、最低でも一つのスレッドを持っており、これをメインスレッドと呼ぶ。プログラムによっては、一つのプロセス内で複数のスレッドを生成し、同時に複数の処理を進行させることが可能である。このように複数のスレッドを利用する技術や状態をマルチスレッドと呼び、現代のソフトウェア開発において非常に重要な概念となっている。 プロセスとスレッドの最も大きな違いは、リソースの共有に関する点にある。プロセスはそれぞれが独立したメモリ空間を持つため、他のプロセスのデータに直接アクセスすることは基本的にできない。プロセス間で通信を行うには、OSが提供する特別な仕組みを利用する必要がある。一方、同じプロセス内で生成されたスレッド群は、そのプロセスのメモリ空間を共有する。具体的には、プログラムのコードやグローバル変数、ヒープ領域などが共有の対象となる。これにより、スレッド間のデータ共有や連携がプロセス間通信に比べて非常に高速かつ容易に行えるという利点がある。ただし、スレッドごとに独立して保持される情報も存在する。例えば、プログラムのどこまで実行したかを示すプログラムカウンタや、計算の途中経過を保存するレジスタ、ローカル変数を格納するスタック領域などは、各スレッドが個別に持つ。これにより、各スレッドは独立した処理の流れとして振る舞うことができる。 マルチスレッドを利用する主な目的は、処理の並列化と応答性の向上である。近年のCPUは複数のコアを持つマルチコアプロセッサが主流となっており、複数のスレッドを異なるコアに割り当てることで、複数の処理を物理的に同時に実行する「並列処理」が可能になる。これにより、動画のエンコードや大規模な科学技術計算など、時間のかかる処理を大幅に高速化できる。また、シングルコアのCPUであっても、OSがごく短い時間で実行するスレッドを次々と切り替えることで、あたかも複数の処理が同時に進んでいるかのように見せる「並行処理」が実現される。この並行処理は、アプリケーションの応答性を維持するために不可欠である。例えば、グラフィカルなユーザーインターフェースを持つアプリケーションにおいて、ファイルのダウンロードのような時間のかかる処理をメインスレッドで行うと、その間は画面が固まり、ユーザーの操作を一切受け付けなくなってしまう。しかし、ダウンロード処理を別のスレッド(バックグラウンドスレッド)に任せることで、メインスレッドはユーザーの操作に応答し続けることができ、快適な操作性を提供できる。 一方で、マルチスレッドプログラミングには特有の難しさと注意点が存在する。最も代表的な問題が「同期」の問題である。複数のスレッドが共有のメモリ空間にあるデータに同時にアクセスし、書き込みを行おうとすると、データの不整合が生じる可能性がある。これを競合状態(Race Condition)と呼ぶ。例えば、ある変数の値を一つのスレッドが読み込み、加算して書き戻すまでの間に、別のスレッドが同じ変数を書き換えてしまうと、期待した計算結果にならない。このような問題を防ぐため、共有リソースへのアクセスを一度に一つのスレッドに限定する「排他制御」という仕組みが必要となる。排他制御には、ミューテックスやセマフォといった同期プリミティブが用いられる。しかし、これらの排他制御を不用意に用いると、複数のスレッドが互いに相手が保持しているリソースの解放を待ち続け、全ての処理が停止してしまう「デッドロック」という状態に陥る危険性もある。さらに、スレッドの実行順序はOSのスケジューラに依存し、実行するたびに変わる可能性があるため、問題の再現性が低く、デバッグが非常に困難になるという側面も持つ。システムエンジニアは、スレッドの利点を最大限に活用しつつ、これらの潜在的な問題を正確に理解し、適切に制御する高度な技術力が求められる。

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