スレッド数 (スレッドスウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
スレッド数 (スレッドスウ) の読み方
日本語表記
スレッド数 (スレッドスウ)
英語表記
thread count (スレッドカウント)
スレッド数 (スレッドスウ) の意味や用語解説
スレッド数とは、コンピュータシステムにおける処理能力や並行性を測るための重要な指標である。この概念を理解するためには、まず「スレッド」そのものを把握する必要がある。スレッドとは、プログラムが実行する一連の命令の流れ、すなわち処理の最小単位を指す。コンピュータ上でアプリケーションを実行すると、「プロセス」という単位でメモリ空間やリソースが確保される。このプロセスは、実行の入れ物のようなものであり、その中で実際に処理を行うのがスレッドである。一つのプロセスは、少なくとも一つのスレッドを持ち、複数のスレッドを持つことも可能である。スレッド数は、このスレッドが同時にいくつ存在し、実行され得るかを示す数であり、ハードウェアの文脈とソフトウェアの文脈で異なる意味合いを持つが、いずれもシステムのパフォーマンスに深く関わっている。 ハードウェア、特にCPUにおけるスレッド数は、そのCPUが同時に処理できる命令系統の数を表す。現代のCPUは、複数の「コア」を持つマルチコアプロセッサが主流である。物理的な計算回路を持つコアが一つあれば、基本的には一つのスレッドを処理できる。しかし、多くの場合、CPUのスペックには「コア数」とともに「スレッド数」が併記されている。例えば「4コア8スレッド」という表記は、4つの物理的なコアを持ちながら、同時に8つのスレッドを処理できる能力があることを意味する。これは、一つの物理コアが複数のスレッドを並行して処理できるように見せかける技術、代表的なものにインテルのハイパースレッディング・テクノロジーがあるためである。この技術により、あるスレッドがメモリからのデータ読み込み待ちなどで一時的に停止している間に、同じコアが別のスレッドの処理を進めることができる。これにより、CPUの空き時間を有効活用し、全体的な処理能力を向上させることが可能となる。オペレーティングシステム(OS)は、この論理的なスレッド数をCPUの処理単位として認識し、各スレッドにタスクを割り振る。 一方、ソフトウェアにおけるスレッド数は、一つのプロセス(アプリケーション)内で同時に実行される処理の流れの数を指す。一つの処理しか実行できないプログラムを「シングルスレッド」、複数の処理を並行して実行できるプログラムを「マルチスレッド」と呼ぶ。マルチスレッド化は、システムの応答性やパフォーマンスを向上させるために不可欠な技術である。例えば、ワープロソフトで重い印刷処理を行っている間も、ユーザーが文字入力を続けられるのは、印刷処理用のスレッドとユーザーインターフェース用のスレッドが別々に動作しているためである。もしシングルスレッドであれば、印刷が終わるまでアプリケーション全体が操作不能になってしまう。また、マルチコアCPUの能力を最大限に引き出す上でもマルチスレッドは重要である。複数のスレッドを異なるCPUコアに割り当てることで、処理を完全に並列化し、計算量の多いタスクの処理時間を大幅に短縮できる。さらに、スレッドは親プロセスのメモリ空間を共有するため、新しいプロセスを生成するよりも、新しいスレッドを生成する方がリソース消費が少なく、スレッド間のデータ連携も高速に行えるという利点がある。 しかし、スレッド数は多ければ多いほど良いというわけではない。スレッド数を過剰に増やすと、かえってパフォーマンスが低下する可能性がある。その主な原因は「コンテキストスイッチ」のオーバーヘッドである。一つのCPUコアは、ある瞬間に一つのスレッドしか実行できないため、複数のスレッドを処理するには、実行するスレッドを高速に切り替える必要がある。この切り替え作業をコンテキストスイッチと呼ぶが、これにはCPUリソースを消費するコストが伴う。スレッド数が多すぎると、この切り替えが頻繁に発生し、実際の処理よりも切り替え作業に多くの時間が費やされてしまう。また、複数のスレッドがメモリやファイルといった共有リソースに同時にアクセスしようとすると、「リソース競合」が発生する。これを防ぐためにはロックなどの排他制御が必要となり、処理が複雑化するだけでなく、ロックの待ち時間によって性能が低下することもある。 したがって、システムやアプリケーションを設計する際には、処理の特性に応じて適切なスレッド数を設定することが極めて重要となる。計算処理が中心の「CPUバウンド」なタスクでは、スレッド数をCPUの論理コア数に合わせるのが一般的である。一方、ファイルI/Oやネットワーク通信など、CPU以外の応答待ちが多い「I/Oバウンド」なタスクでは、あるスレッドが待機している間に別のスレッドをCPUで実行できるため、論理コア数よりも多いスレッドを用意することでCPUの利用効率を高めることができる。Webサーバーのように多数のクライアントからのリクエストを同時に処理するシステムでは、「スレッドプール」という技術がよく用いられる。これは、あらかじめ一定数のスレッドを生成してプールしておき、リクエストに応じてスレッドを貸し出し、処理が終わればプールに戻す仕組みである。これにより、リクエストごとにスレッドを生成・破棄するコストを削減し、システム全体のスループットを安定させることができる。このようにスレッド数は、システムの性能を決定づける根幹的な要素であり、その挙動を深く理解することは、効率的で応答性の高いシステムを構築するために不可欠である。