打ち切り誤差(うちきりごさ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

打ち切り誤差(うちきりごさ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

打ち切り誤差 (うちきりごさ)

英語表記

truncation error (トランケーションエラー)

用語解説

打ち切り誤差とは、数値計算において、無限級数や無限回の演算を有限の回数で打ち切ることによって生じる誤差のことである。

数値計算では、数学的な理論に基づいて計算を行うものの、コンピュータの計算能力や時間の制約から、無限に続く計算をどこかで打ち切らざるを得ない場合がある。例えば、ある関数の値を求めるために無限級数を用いる場合、無限個の項をすべて計算することは不可能であるため、ある項数で計算を打ち切って近似値を求める。この打ち切ったことによって、真の値との間にずれが生じる。これが打ち切り誤差である。

打ち切り誤差は、近似計算を行う上で避けられない誤差の一種であり、その大きさを適切に評価し、許容範囲内に抑える必要がある。打ち切り誤差の大きさは、打ち切る項数や計算方法によって大きく変動するため、計算の目的に応じて適切な方法を選択することが重要となる。

打ち切り誤差の具体的な例として、テイラー展開を用いた関数近似が挙げられる。テイラー展開は、ある関数を無限項の多項式で表現する方法であり、関数の値を近似的に求めるために利用される。しかし、実際に計算を行う際には、無限項をすべて計算することはできないため、ある程度の項数で打ち切って計算を行う。このとき、打ち切った項の影響によって、真の値との間に誤差が生じる。

また、数値積分においても打ち切り誤差が発生する。数値積分は、関数の積分値を数値的に求める方法であり、様々なアルゴリズムが存在する。例えば、台形公式やシンプソン公式は、積分区間を細かく分割し、それぞれの区間における関数値を近似的に計算することで積分値を求める。このとき、分割数を増やすほど近似精度は向上するが、無限に分割することはできないため、ある程度の分割数で計算を打ち切る。この打ち切りによって、真の積分値との間に誤差が生じる。

打ち切り誤差を小さくするためには、一般的に、より多くの項を計算したり、より細かい分割を行う必要がある。しかし、計算量を増やすことは計算時間や計算コストの増大につながるため、適切なバランスを見つけることが重要となる。

打ち切り誤差の評価方法としては、様々な手法が存在する。例えば、打ち切った項の大きさから誤差を推定したり、異なる打ち切り回数で計算を行い、その結果を比較することで誤差を評価したりする方法がある。また、誤差解析と呼ばれる手法を用いることで、理論的に誤差の大きさを評価することも可能である。

システム開発においては、打ち切り誤差がシステムの精度に影響を与える可能性があるため、注意が必要である。例えば、数値シミュレーションを行うシステムの場合、打ち切り誤差が大きいと、シミュレーション結果が現実と大きく異なる可能性がある。また、金融計算を行うシステムの場合、わずかな誤差が大きな損失につながる可能性もある。

したがって、システムエンジニアは、数値計算を行う際に、打ち切り誤差の存在を理解し、その影響を適切に評価し、許容範囲内に抑えるための対策を講じる必要がある。具体的には、適切な数値計算アルゴリズムを選択したり、十分な計算精度を確保したり、誤差評価を行うことで、システムの精度を向上させることができる。

さらに、システムの要件定義段階から、許容される誤差の範囲を明確にしておくことが重要となる。これにより、開発者は、システム設計において、適切な計算方法や精度を選択し、打ち切り誤差による影響を最小限に抑えることができる。

打ち切り誤差は、数値計算において常に考慮すべき重要な要素であり、その理解と適切な対策が、信頼性の高いシステム開発につながる。

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