仮想回線(カソウカイセン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
仮想回線(カソウカイセン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
仮想回線 (カソウカイセン)
英語表記
virtual circuit (バーチャルサーキット)
用語解説
仮想回線とは、物理的な回線を共有しながら、あたかも専用回線のように利用できる通信技術のことである。異なる複数の利用者間で物理的な回線を共有し、それぞれの利用者に独立した通信路を提供する。
仮想回線は、通信事業者から提供されるサービスとして利用されることが多く、専用回線に比べてコストを抑えながら、一定の品質を確保できるというメリットがある。特に、広範囲な拠点間を接続する場合や、一時的に帯域を増やしたい場合などに有効である。
仮想回線を実現する技術はいくつか存在する。代表的なものとして、フレームリレー、ATM、IP-VPNなどがある。
フレームリレーは、パケットを固定長ではなく可変長のフレームとして扱い、高速なデータ転送を実現する技術である。エラー制御や再送制御を簡略化することで、高速化を図っている。ただし、品質保証の機能は弱く、データのエラーや損失が発生する可能性がある。
ATM(Asynchronous Transfer Mode)は、固定長のセルと呼ばれる単位でデータを転送する技術である。フレームリレーよりも高度な品質保証機能を持ち、音声や動画などのリアルタイム性の高いデータ伝送に適している。
IP-VPN(IP Virtual Private Network)は、IPネットワーク上で仮想的な専用線を構築する技術である。インターネットVPNと広帯域VPNの2種類が存在する。インターネットVPNは、インターネット回線を暗号化などの技術を用いて安全に利用するもので、コストを抑えやすい。広帯域VPNは、通信事業者の閉域網を利用し、より高品質な通信を提供する。MPLS(Multi-Protocol Label Switching)などの技術が用いられることが多い。MPLSは、IPパケットにラベルを付与し、そのラベルに基づいて高速なルーティングを行う技術である。
仮想回線を利用するメリットは、コスト削減、柔軟な帯域制御、セキュリティ向上などが挙げられる。専用回線を敷設するよりもコストを抑えることができ、必要な帯域を柔軟に増減できる。また、暗号化技術などを用いることで、セキュリティを向上させることができる。
一方、デメリットとしては、物理回線を共有するため、他の利用者のトラフィックの影響を受ける可能性があること、通信事業者のサービスに依存するため、障害発生時の影響が大きいことなどが挙げられる。
仮想回線を選択する際には、必要な帯域、品質、セキュリティレベル、コストなどを考慮し、最適な技術を選択する必要がある。また、通信事業者のサービス内容を十分に比較検討することも重要である。
近年のネットワーク技術の進展により、仮想回線の種類や機能も多様化している。SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)のように、複数の回線を束ねて利用し、アプリケーションごとに最適な回線を選択する技術も登場している。SD-WANは、仮想回線を含む様々な回線を効率的に利用し、企業のネットワークを最適化するためのソリューションとして注目されている。
仮想回線は、現代のネットワークインフラにおいて不可欠な技術の一つであり、システムエンジニアを目指す上で理解しておくべき重要な概念である。