仮想CPU(カソウシーピーユー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
仮想CPU(カソウシーピーユー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
仮想CPU (カソウシーピーユー)
英語表記
virtual CPU (バーチャルシーピーユー)
用語解説
仮想CPUとは、物理的なコンピュータのCPU(中央処理装置)を仮想化技術によって抽象化し、仮想マシン上で利用できるようにした論理的なCPUである。これは「Virtual CPU」の略であるvCPUとも呼ばれる。物理CPUはコンピュータの頭脳として計算処理を行うハードウェアだが、仮想CPUはその物理CPUの処理能力の一部を借りて、あたかも独立したCPUであるかのように振る舞う。複数の仮想CPUが単一の物理CPUコア上で動作することも可能であり、この技術はサーバーリソースの効率的な利用、システムの柔軟性向上、運用コストの削減に不可欠である。
詳細について説明する。コンピュータの仮想化において中心的な役割を果たすのがハイパーバイザと呼ばれるソフトウェアである。ハイパーバイザは、物理サーバーのハードウェアリソース、特にCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークなどを直接管理する。このハイパーバイザが物理CPUのコアを仮想的に分割し、複数の仮想マシン(ゲストOS)それぞれに仮想CPUとして割り当てる。ゲストOSは、自身に割り当てられた仮想CPUを、あたかも物理的なCPUが独立して存在するかのように認識し、その上でアプリケーションやシステム処理を実行する。
具体的には、ハイパーバイザは物理CPUの限られた処理時間を、各仮想マシンに割り当てられた仮想CPUに公平かつ効率的に分配する役割を担う。これをCPUスケジューリングと呼ぶ。例えば、複数の仮想マシンが同時に処理を要求した場合、ハイパーバイザは物理CPUのコアを非常に短い時間単位(タイムスライス)で切り替えながら、それぞれの仮想CPUに実行権を与える。これにより、各仮想マシンは物理CPUを独占しているかのように錯覚し、並行して動作することが可能となる。この切り替え処理は非常に高速に行われるため、ユーザーやアプリケーションから見れば、同時に複数の処理が実行されているように見える。
仮想CPUの割り当てには、いくつかの考慮事項がある。仮想マシンに割り当てる仮想CPUの数は、その仮想マシンが実行するワークロードの種類や必要なパフォーマンスレベルによって決定される。例えば、ウェブサーバーやデータベースサーバーのように高い並行処理能力を要求するアプリケーションでは、複数の仮想CPUを割り当てることが一般的である。これは、ゲストOSが複数のCPUコアを持つ物理マシン上で動作しているかのように認識し、スレッドやプロセスを並行して実行できる「対称型マルチプロセッシング(Symmetric Multi-Processing, SMP)」の機能を利用するためである。
しかし、仮想CPUを多く割り当てれば良いというわけではない。過剰に仮想CPUを割り当てると、物理CPUのコア数を超えてしまう「オーバーコミット」の状態になり、ハイパーバイザのスケジューリングが複雑化し、かえって性能が低下する可能性がある。これは、複数の仮想CPUが限られた物理CPUリソースを奪い合う「CPUコンテンション」と呼ばれる現象を引き起こすためである。そのため、仮想CPUの割り当ては、物理CPUリソースの総量、他の仮想マシンの負荷、そして個々の仮想マシンの具体的な要求を考慮して慎重に行う必要がある。ハイパーバイザは、各仮想CPUに対して物理CPUの利用時間の上限(制限)や下限(予約)、優先度などを設定する機能を提供しており、これらを適切に設定することで、仮想環境全体のCPUリソース利用を最適化できる。
また、仮想化技術の進化により、Intel VT-xやAMD-VといったCPUの仮想化支援機能が物理CPUに組み込まれるようになった。これらの機能は、ハイパーバイザが仮想CPUの処理を物理CPUで直接実行できるようにすることで、仮想化によるオーバーヘッドを大幅に削減し、仮想マシンのパフォーマンスを向上させる。これにより、仮想CPUは物理CPUに近い性能を発揮できるようになり、より要求の厳しいエンタープライズアプリケーションでも仮想化環境で安定して動作することが可能になっている。
このように、仮想CPUは物理CPUの能力を論理的に分割し、複数の仮想マシンで共有可能にする技術であり、ハイパーバイザによる厳密な管理とスケジューリングによって、仮想環境における効率的で柔軟なリソース利用を実現している。その適切な設計と運用は、仮想化されたITインフラストラクチャ全体のパフォーマンスと安定性を大きく左右する。