ウイルス定義ファイル(ウイルスていぎファイル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ウイルス定義ファイル(ウイルスていぎファイル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ウイルス定義ファイル (ウイルスていぎファイル)

英語表記

virus definition file (ウイルス定義ファイル)

用語解説

ウイルス定義ファイルとは、コンピュータウイルスやマルウェアなどの悪意あるプログラムを特定し、検出するために、ウイルス対策ソフトウェアが利用するデータベースのことである。これは、既知の悪意あるプログラムが持つ特徴的な情報が記録されたデータファイルであり、ウイルス対策ソフトウェアはこの定義ファイルを基に、システム内のファイルやプログラムが悪性のものかどうかを判断する。コンピュータをサイバー攻撃から守るための防御機構の中核をなす要素の一つと言える。

ウイルス定義ファイルは、ウイルス対策ソフトウェアがコンピュータをスキャンする際の「悪意あるプログラムの指名手配書」のような役割を果たす。具体的には、ファイル内部に既知のウイルスの持つ固有のバイトパターン、特定の命令列、ファイルサイズ、ハッシュ値などの情報が網羅的に記録されている。ウイルス対策ソフトウェアは、コンピュータ内のファイルを一つ一つ調べ、その内容が定義ファイルに記録されたパターンと一致するかどうかを照合する。この照合プロセスを「シグネチャベースの検出」と呼ぶ。

シグネチャベースの検出は、非常に高い精度で既知のウイルスを検出できる利点がある。例えば、ある特定のウイルスが常に特定の文字列をファイル内に含む場合、その文字列パターンを定義ファイルに登録しておくことで、そのウイルスを容易に識別できるようになる。また、ファイルの「ハッシュ値」と呼ばれる、ファイルのデータから計算される一意の数値(ファイルの同一性を検証するために使われる)も、既知のウイルスを特定する上で有効な情報として定義ファイルに含まれることが多い。ハッシュ値が一致すれば、そのファイルは既知のウイルスそのものであると判断できる。

しかし、ウイルスの開発者も日々新しい手口を考案しており、既存の定義ファイルでは検出できない「新種ウイルス」が常に生まれている。そのため、ウイルス定義ファイルは常に最新の状態に保つことが極めて重要である。セキュリティベンダーは、世界中で日々発見される新しいウイルスやマルウェアを解析し、その特徴を抽出して新たな定義データを迅速に作成する。そして、この新しい定義データを定期的に、時には日に数回、ウイルス対策ソフトウェアの利用者に配布する。利用者は、自分のコンピュータのウイルス対策ソフトウェアを介してこれらの最新の定義ファイルを受け取り、更新することで、最新の脅威に対抗できるようになる。この更新が滞ると、たとえウイルス対策ソフトウェアがインストールされていても、新種のウイルスに対しては無防備な状態になってしまう危険性がある。

ウイルス定義ファイルは、セキュリティベンダーの専門家チームが、マルウェアの収集・分析ラボで得られた知見に基づいて作成している。膨大な数の検体(マルウェアのサンプル)を解析し、そこから共通する悪意ある特性やコードを特定し、データベースとして整理する作業は高度な専門知識を要する。そして、このデータは多くの場合、インターネットを介してユーザーのウイルス対策ソフトウェアに自動的にダウンロードされ、適用される仕組みになっている。

定義ファイルに基づく検出手法は非常に効果的である一方で、限界も存在する。一つは、まだ定義ファイルに登録されていない新種のウイルス(例えば、ゼロデイ攻撃のように、攻撃者が脆弱性を発見してからセキュリティベンダーが対策を講じるまでの間に実行される攻撃)は検出できない点である。もう一つは、「誤検知(False Positive)」の可能性である。これは、無害なファイルが、たまたまウイルスのパターンと似た特徴を持っていたために、悪意あるプログラムとして誤って検出されてしまう現象を指す。セキュリティベンダーは、誤検知を最小限に抑えつつ、最大限の検出率を維持するために、定義ファイルの精度向上に継続的に取り組んでいる。

したがって、ウイルス定義ファイルは、ウイルス対策ソフトウェアが「悪」を識別するための重要な知識源であり、コンピュータセキュリティの最前線で常に進化し続ける必要のある不可欠な要素である。その適切な管理と定期的な更新が、利用者の情報資産を守る上で極めて重要となる。

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